ダンジョン散歩
どうも、作者です。八十二話です。
「――全然たどり着かぬ!」
クランが、かなりやつれた顔でそんなことを言う。実際、今俺たちがどこにいるかすらわからないが、少なくとも二層の階段にたどり着いていないのは間違いない。
俺たちが攻略し始めてから、もうどれだけ歩いたかわからない。どれくらい経ったかもわからない。少なくとも半日は歩いた気がする。
「うーん、これは」
アメイが立ち止まり、ヒビキさんに目配せする。ヒビキさんもそれに対してうなずく。どうやら二人の中で意見が一致したらしい。
「迷路の真ん中ですが、もう少し歩いたらキャンプにします。簡易的なものになりますが」
どうやら、今日はキャンプになるらしい。一日目は、一層の攻略すらできなかった。まさか、一日目からこんなに順調にいかないとは。
俺たちは、ヒビキさんが指定した場所でキャンプの準備を始める。もうそれなりにやっているので手慣れたものだが、いつもより狭い。
クランもげっそりとした顔をしているが、それでもてきぱきと準備を進めている。退屈なことが相変わらず嫌いらしい。
「まぁ、気が滅入るのは分かるけどな。ずっと同じ景色だし……」
「そうだね……いつ魔獣と遭遇するかもわからないし」
エフィとそんなことを話しあうが、俺とクラン、エフィはそれなりにげっそりとした顔をしているが、あっちの三人は、慣れた感じで普通の顔をしている。
「俺もうんざりはしてる……流石にここまで複雑な迷路は初めてだ」
アメイの言う通り、この迷路はかなり複雑だ。正直もう俺もクランも現在地が一切分からなくなっている。何度も分かれ道に遭遇しては、曲がり、そして行き止まりに当たる。その繰り返しだった。
「何より……マッピングが意味をなさねぇ」
「どういうことじゃ?」
「恐らくですが、ダンジョンの構造自体が変わっています」
ダンジョンの構造自体が……? ヒビキさんが言った通りなら、確かにマッピングが意味をなさないだろう。だが、いくら何でもそんなに頻繁に変わるものなのか。それこそ、マッピングが意味をなさないほどというのは相当頻繁に変わってるはずだ。
「確か、百年ダンジョンは安定していて構造って滅多に変わらないんじゃなかったか?」
そんなことを未来さんが言っていた。このまま行くと、未来さんが話を食い違うことに……
「よく知っていますね。実際、百年ダンジョンがそんな簡単に構造が変わることはまずありません。私もいくつか攻略していますが、やはり攻略中に変わるということは基本なかったですね……ただし、”ギミック”なら別です」
”ギミック”……つまり、ダンジョンがシステムとして構造そのものを変えてる場合か。確かにそれなら納得できるが。
それにしても、さらっとハイカさんは百年ダンジョンをいくつか攻略してるって言ったな。ハイカさんは、Sランクに上がったくらいから完全ソロだったらしいし、一人で攻略したんだろうか。
「ダンジョンってそんなこともするのか」
「ダンジョンはよく、生きているといわれています。つまり、私たちは侵略者です。それを止めようとするために、ダンジョンは成長すればするほど冒険者に攻略させないギミックを増やすんですよ。父は良く私たちは”病原菌”みたいなもの、なんて言っていましたが」
なるほど、”病原菌”という例えは分かりやすい。つまり、俺たちが病気になったら、体の機能でその病原菌を対処するように、ダンジョンも同じことをするのか。
「実際、私たちは未だに一層を抜けられてませんからね。有効ではあります」
説得力が違うな。実際俺たちが未だに一層の突破ができていない時点ダンジョンのシステムとしてはかなり有効な。
何より、アメイとヒビキさんが実践しているように、冒険者は基本的にマッピングして進んでいるため、そのマッピングを意味を無意味にするのはある意味冒険者殺しだ。
「ですが……こういうギミックには規則性があるものです」
ヒビキさんが冷静に言う。確かに、今日一日、ヒビキさんだけは疲れた顔をせず、冷静にマッピングしていた。ヒビキさんは早い段階でそれに気づいていたのか。
ハイカさんもそれにうなずいていた。規則性さえ見つけられれば、この一層も攻略できるだろう。
「規則性……見つけたんですか?」
「まだ途中ですが……推測は立っています」
ヒビキさんはどうやらある程度推測が立っているようで、それならまぁ、何とかなるかもしれない。
「監視は交代制でいいか?」
「はい、ただ、一人ではなく、二人でやるようにお願いします」
いつもは魔獣が来た時の監視は一人なのだが、今回は二人らしいが……といっても、
「まぁ、いつもと変わらんのう」
大体クランが起きているため、監視の交代制はいつも、クラン+一人なので特に問題はなかった。まぁ、常にアタッカーがいる状態で監視できるため、かなりいいだろう。
――次の日(なのかは正直分からないが)、特に魔獣とは遭遇しなかったため、特に問題なくキャンプの片づけをする。
俺たちは体を軽くするために脱いでいた装備を着て、ダンジョン攻略に戻る。ということで、今日もヒビキさんについていきながら歩く。
「それにしても、ダンジョンのこの迷路の構造変化が防衛機構だって言ってたが、それだったら魔獣の数が少ない気がするな」
防衛機構だというのは理解したが、それだったら魔獣がもっといた方が冒険者を倒すのには有効的だろう。それなのに、あまり魔獣に遭遇しない。昨日も歩いた時間に対して遭遇した魔獣の回数はかなり少なかった。
おかげで虚無のようなひたすら歩く時間が多かったので、それはそれで辛かったのだが。
「基本下の層にかけて魔獣が多くなるのがダンジョンの性質……というのもありますが、恐らく魔獣たちもこの迷路をさまよっているのが原因でしょうね」
ヒビキさんに聞くと、そんな返答が帰ってきた。なるほど、この広大なダンジョンを魔獣も人間もさまよっているからか。ということは、魔獣も俺たちと同じように迷っているのか。
「アメイ、規則性とやらは見つけたか?」
「うん? いや、俺じゃなくてヒビキに聞いてくれ、俺も何となく気づいてきたけど、あっちは多分もう確証がある」
クランの聴覚を通してそんな会話が聞こえてくる。どうやら、
「ヒビキさんは、規則性分かったのか?」
「はい、ここまでマッピングしてわかってきました。恐らくアメイさんも気づいていますね」
ちょうど、クランたちが会話していたことをヒビキさんはあっさりと言ってのける。もしかして、俺たちが気づいていないだけで、何かアメイの動きに変化があったのか?
「ふふ、簡単な話、実は今、同じところをぐるぐるしています」
え……? そうなのか。全然わからない。正直、歩いている感じは全く別のところを歩いているようにしか感じない。いや、同じところを歩いている感じもするが。
「これなら、そろそろ中心地に行くルートも確立できると思います」
どういう原理かわからないが、そろそろ抜けられるのは間違いなさそうである。
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