迷う迷う
どうも、作者です。八十一話です。
「――迷路を攻略するにあたって、陣形を変えます」
迷路を進む前、俺たちはヒビキさんの言葉に従って陣形を変える。俺が最後衛に、そしてクラン、アメイの後ろにいる陣形に変わった。これは万が一はぐれた場合に被害を最小限に抑えるためだとか。
簡単に言えば、俺とクランは脳内である程度位置を共有できるし、後衛にヒビキさん、前衛にアメイがいることで索敵もできる。ということでこの形で進むことになった。
何よりこの迷路ではどの位置で敵と遭遇するかわからない以上、後ろからも敵が来る可能性も考慮してるんだとか。
ということで、言われた通りの陣形に変わって迷路を進んでいく。正直俺としてはどういう判断基準で前に進んでいるかわからない。
(とにかく、中心に向かうように動いているようじゃのう)
なるほど、そう言われるとわかりやすい。中心地の位置自体は分かっているので、分かれ道があった場合、下へと進む階段がある中心地に向かうように進んでいるのか。
とはいえ、基本円形なせいでどう進んでもぐるぐるしているので方向感覚がぐちゃぐちゃになりそうなものだが、よくアメイは迷わないな。
「それにしても、これどれくらい時間がかかるんだ?」
「答えを知っていれば、一時間ほどで着くそうですよ」
俺のひとりごとを聞いていたのは、数歩ごとにマッピングを進めていたヒビキさんだった。
「それって、ダンジョンの調査書に載っていたんですか?」
「ええ、このダンジョンは過去に三度ほど調査がなされているようですか、そのうちの一回は約三時間ほどで一階層を突破したようです。それも一階層の調査をしながらですから、私達みたいに下に向かうことを考えた場合は、一時間ほどでしょうね」
つまり、最適解を引き続けた場合はそれぐらいで着くというわけだ。だがしかし、
「で、でももう一時間ぐらい歩いてないですか?」
そう聞いたのは、同じ後衛組のエフィだ。エフィの言う通り、そろそろ一時間ぐらい歩いている気がする。
「そうですね……」
「――おーい、引き返すぞ!」
そう言ったのは、十五メートルほど前にいるアメイ。どうやら行き止まりに当たったらしい。
そう言われながらヒビキさんはエフィのいる位置まで歩き、俺たちも一応それに着いて行く。そして、一瞬止まったかと思うと、もう引き返していた前衛組についていく。
どうやら行き止まりまでの道まで正確にマッピングしているらしい。
「さて、エフィさんの言った通り、もう一時間歩いています。それもそのはずで、調査のうちの一回は、一層攻略にかかった時間は、測定不能だったそうです。厳密には攻略できずに一層時点で一週間分の食料が尽きることになったために引き返すことになったそうです。ちなみに、もう一つの調査班も三日以上かかったそうですよ」
それを聞いたエフィは一瞬固まって、置いていかれるとすぐに気づいてすぐに歩き始める。まぁ、今のは中々の衝撃情報である。
一週間、その間に二層にたどり着くことすらできなかったとは、この迷路の複雑さが分かる。恐ろしいことこの上ない。
だが、本当に一週間も迷えるのか? 一時間ほどで攻略できるダンジョンにそれだけかかることはあるのか?
「スケルトン六!」
俺たちはアメイの言葉と共に武器を構える。とはいえ、スケルトンだ。ダンジョン産のものは、強さが変わるとはいえ、スケルトン程度では、ハイカさんとクランなら簡単に処理できるだろう。
「「!」」
俺は後ろにいたアメイを引っ張り盾を構える。盾に軽く何かがぶつかった感触があった。
『撃て』
『魔弾』
もう一人、それにすぐに気づいた人がいた。それはハイカさん、もう片方の壁から襲い掛かろうとしたその”腕”に『魔弾』を飛ばす。
しかし、その”腕”は分かっていたかのように避ける。だが、避けたところでヒビキさんが手に持っていた細めの短剣で攻撃。その”腕”は一瞬で土塊に変わる。
「あ、ありがとうございます」
「大丈夫なら何よりだ」
ただ、俺の盾にぶつかった奴はまだ生きているのでとりあえず、壁に挟み込んでみるが……うん、まだ動いているな。やっぱり俺の攻撃力じゃ一発じゃ倒せないか。しかし、同じ要領で三回ほど壁にぶつけると土塊に変わった。ヒビキさんが一発、俺が三発……悲しくなってきた。
よく見たら他にも何匹かいたようだが、こちら側に来ていた”腕”はすべてヒビキさんが処理してくれたようだ。
「前衛組も終わったようですね」
俺たちがそんなことをしているうちに前衛もスケルトンと”腕”を処理したようだ。流石である。
「大丈夫ですか?」
「はい、問題なく」
ハイカさん達が駆け寄ってきてこっちの様子を見るが、全員無事である。
「すみません、何もできず……」
「いや、今のは急だったから仕方ないだろ」
俺はエフィをフォローするが、エフィは少し落ち込んでいる。
「別に今、多少足引っ張ったくらいでは何にもならんわい。これから取り返すがよい」
「もう、分かってるよ!」
やはり、幼馴染の発破は効くらしい、クランには少し強く出れるのがこういう時は役に立つな。とはいえ、クランの言う通りだ。別に足を引っ張ってるわけではないが、これからいくらでも取り返していけばいい。
さて、それはともかくして今のは……
「マドハンドじゃな」
クランの言った通り、このダンジョンで初めて出会う魔獣。マドハンドだ。名前の通りの土の腕でできた魔獣だ。
「あんまり強くなかったな、俺でも簡単に処理できたし」
「ですが、唐突に出てくるのは厄介ですね」
アメイとハイカさんがそんな風に評価する。実際、さっき唐突に現れたのは厄介だったし、ハイカさんの魔法を避けるだけの力はある。
「その上数がおるのが厄介じゃのう、囲われるとやりづらいわ」
「ですが、今まで遭遇しなかったのを見るに、彼ら単体で出ることはないでしょう」
確かに、あんな唐突に出たのに、今まで一度も遭遇しなかったしな。それを考えるに他の魔獣とセットで出てくると考えた方がいいだろう。
「詠唱がしづらいです……」
「そうだな、壁から急に出てくるから、詠唱中に来られるとダメージを食らいかねんな」
エフィの言った言葉に賛同する。エフィが詠唱体勢に入ったら俺のほうでも注意を向けた方がいいだろう。
「さーて、やっぱり魔獣も出るのか」
「一層は、スケルトンとマドハンドしか出ないようですが、油断はせず、しかしこわばりすぎずに行きましょうか」
そうだな……魔獣に集中していればより迷うことになりそうだ。どんどん迷っていく状態にならないようにしたいんだが……。
――しかし、俺たちはここから、一日以上歩くことになる。迷って迷って、ダンジョンの洗礼を浴びることになった。
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