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三月羅針譚~盾持ちと吸血鬼~  作者: FOXtale
悠久忘れぬ■■の景色
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新拠点

どうも、作者です。七十八話です。

「――クラン」


俺はクランに呼びかける。どのダンジョンに挑むかどうかの話をするために。


「わかっておるわ」


といっても、俺とこいつは感覚共有をしているため、俺が未来さんに会ったことも、会話内容も知っているため、まぁ言う必要はないな。


だが、クランはわしの言った通り、といった具合に中々悪い笑みをこちらに向けてくる。はぁ、結局こいつの意見が通ることになったな。別にいいんだが。


さて、どこに挑むか決めたのなら、ここからは本腰入れて準備していかなくちゃな。



――なんて言い始めて早二週間、やることは特に変わらず、変わったことがあったとすれば。


「アイカ、家具類はこんなものか?」


「……うん! これで全部だね!」


今、引っ越し作業をしていることぐらいである。やはり準備といっても、やることといえば、ダンジョンの情報を集めたり、座学を増やしたりなんかのこまごまとしたものだけで、特段変わったことがあったわけでもなかった。


アイカを含めた七人で引っ越し作業を終え、全員で会議室兼リビングに集まっていた。


「じゃあ、新居とお姉ちゃんたちの仕事ひと段落パーティー! かんぱーい!」


アイカの声と共に俺たちは各々グラスを掲げ、酒やフルーツジュースを飲む。料理もいろいろと置いてあり、ほとんどは俺とアメイ、ハイカさんの三人で作ったものだ。


ハイカさんも仕事がひと段落したせいか、少し気が抜けている。まぁ、ちょうどいい休みになったのならいいだろう。


「新拠点、いい感じですね」


「ああ、やっぱり広い空間はいいな」


俺たち七人を入れても、それでもかなりの余裕がある。これなら、たくさん人を集めてパーティくらいできそうだ。まぁ、する予定はないが。


部屋の方も、そこそこ広く、体を休めるには十分だし、本棚を置くくらいはできそうである。クランとは、部屋数に余裕があったので別々の部屋になった。正直、別部屋になったところでプライバシーは一切ないが。


「エフィ的には部屋、狭くないか?」


俺はエフィに話しかける。これでも魔王なのだ。元々の部屋はかなり広かったはずだ。それを考えると俺的には十分でも、エフィ的には狭かったりしないだろうか。


(わしも姫なんじゃなが)


(お前は別に平気だろ。俺と二人で狭い部屋に一か月以上住んでたし)


(それはそうじゃの)


流石にあの宿屋の方が個人部屋よりは広かったがそれでも二人だとかなり狭かったのだ。そこに二人で寝泊まりしていたのだから、関係ないだろう。


「ぜ、全然大丈夫です! むしろ狭い方が落ち着きますし……考え事するにはちょうどいいです」


「それならいいが……冒険者業は慣れてきたか?」


何となく、会話がないのは落ち着かないのでそんなことを聞く。


「はい、皆さんとちゃんと連携できるようになったのは楽しいですし……ハイカさんの訓練の方が数倍かこ……なんでもないです」


本人がいることに気づいて、そこで止めたエフィ。別にハイカさんは気にしないと思うし、それは一緒に訓練している俺たちからすれば完全同意であるが。


どうやら肝心のハイカさんは聞いていなかったようである。


「俺たちもエフィがいてくれて助かってるよ、やっぱり魔法があると違うな」


やはり殲滅力の面では圧倒的である。ハイカさんも魔法を使っての殲滅はできるらしいが、やはりエフィの魔法は桁違いである。


「! そ、それなら良かったです」


エフィは嬉しそうである。事実を述べただけだが、それで喜んでくれるなら良かった。


(そやつ、褒められてないからのう)


まぁ、そうなんだろうが。やはり、エフィは才能があるし、相応の努力もしてるし、もっと褒めて自信をつけさせた方がいいと思う。クランなんて、褒めなくてもこんなに自信満々なのに。


(どういうことじゃ貴様!)


クランは机越しに通信を送りながら、睨んでくる。俺は事実を述べただけだ。別にお前が自信しかないタイプだとは言っていない。むしろ、クランも才能があるタイプではある。


「ダンジョンでも頑張りますね」


「ああ、頼んだ」


エフィは気合を込めた顔でうなずく。まぁ、気合があるのはいいことだし、なんだか微笑ましい。タイプは違うが、エフィを見てると弟を思い出して頭を撫でそうになってしまう。


「あの、イズミさん……?」


撫でてた。うん、こういうのは癖だな。


「す、すまん……弟に似てて」


「い、いえ、何だか……こういうのは安心しますね……へへ」


何だか申し訳ないことをした。が、思ったより喜んでいるようなのでいいのだが、一応三百歳の魔王なんだよな? 止めると少し残念そうな顔をするのでやめるにやめられない。


「あ、エフィさんずるい! 私も撫でてて!」


何故かアイカまで来てしまった。どういうわけか、俺の両手は二人を撫でるのでいっぱいいっぱいになってしまった。しかも、ハイカさんからのうらやまし気な顔で睨まれながら。


クランとアメイは酒でこっちをまったく気にしてない。


「……なんだか、微笑ましいですね」


ヒビキさんはそんな言葉で済ませるが俺としては気まずいな……まぁいいんだが。


「さて、宴もたけなわとなったわけですが……ダンジョン探索について少し話しておきましょうか」


ハイカさんは視線がアイカに向いたままダンジョン探索について話し始める。それを聞いた瞬間、酒に集中していたクランが耳を傾ける。


「攻略するダンジョンは百年ダンジョン『ケーラ』、一応明確に名前がついてるダンジョンになっています」


確かに、俺たちが前攻略したダンジョンは名前がついていなかったな。やはり、長く存続するダンジョンだと名前がついたりするのか。


「私の仕事がひと段落したので、攻略開始は今から一週間後を予定しています。これは、物資調達と、バレンさんが作った装備の試し、そして私を含めたパーティ連携に慣れるための時間を考慮して、一週間後としました」


そう言って、ヒビキさんとハイカさんで作ってくれた予定を教えてくれる。なるほど、残り一週間か……クランとしては待ちきれないという感じだが、俺としては必要な時間だと思う。ハイカさんとは修業はしていたが、パーティとしての連携はまだできてなかったしな。


それに、装備に関しても、流石に四人分は多かったのか、そこそこ時間がかかっている。とはいえ、ダンジョンには間に合うそうだし、問題ないだろう。


「さて、この予定で問題はないですか?」


俺たちは気を引き締め、この期間を少しでも無駄にしないよう、神妙にうなずいた。まぁ、アメイは酔っぱらっていて聞いていなかったが。

読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。

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