ダンジョンの選択肢
どうも、作者です。七十六話です。
「――それで、ダンジョンについてですが、候補を三つまで絞りました」
ヒビキさんがそう言うと、アイカが自信満々に、三枚の紙を差し出してくる。俺はダンジョンについて書かれたその調査書に目を通す。
ダンジョンは、それぞれ難易度的には易しめ、丁度いい、高めという感じだ。
ダンジョンの難易度は、適正人数と適正Lvが書かれている。
「適正人数と適正Lvってどっちが重要なんだ?」
「どっちが、って感じじゃなくて。えっと、相関関係ってやつなんだよ」
「基本的には、適正Lvの冒険者がそれだけ適正人数の数必要、という形ですね」
つまり、適正Lv.50、適正人数四人であれば、Lv.50の冒険者が四人必要というわけか。
「ちなみに、純粋な行動支援職はこの中に含まれないんだよね」
つまりアメイは含まれないのか。なにかそれは悲しいな。となると、俺達は大体平均するとLv.50ぐらいだから、それが五人となる。
「となると、真ん中のやつでもちょっと難しいのか」
丁度いいと評した真ん中のものでも、適正Lv.55、適正人数六人だ。難易度的にはかなり高いのではないだろうか?
「うーん、そんなことはないと思うよ。泉さん達みんな強いし」
そうか、ハイカさんやヒビキさんをLv.50の枠にとどめるには強すぎるか。ハイカさんとかプラス20ぐらいありそうだ。となると、やっぱりちょうどいい感じになるのか。
「なら、この三つの中から相談して決めていこうか」
「別に、相談して決める必要はありませんよ。だって、団長と副団長はここにいるでしょう」
……そうか、俺が団長だった。団長権限で決めてしまってもいいということか。それに、副団長はクランだ。確かに、俺たちで決めることはできるだろう。だが、それだと他の皆の意見が無視されてしまうが大丈夫だろうか。
それに、今のところ団長らしいことは何もしていないのだが。
「団長の決定に従うのはパーティとしては当たり前のことですから。何より、私たちが満場一致であなたを団長、クランさんを副団長と決めたのですから、それでいいんです」
そういうことなら、腹を括るか。ま、こういう時に舵を取るのが団長の役割か。
(とりあえず、易しめの難易度はなしじゃな)
だろうな。クランの場合は、簡単なところは選ばないのは何となくわかっていたので、二択となる。
「正直、俺としては難しいのはどうかと思うが……というか、この百年ダンジョンってなんだ?」
適正Lv.70、適正人数四人のダンジョンだ。普通に難しそうである。そのダンジョンの備考欄には”百年ダンジョン”と書かれている。
「百年ダンジョンは、名前の通り、百年間攻略されていないダンジョンです。ダンジョンは時間経過で成長していくので、それだけ攻略されていないダンジョンは難易度が上がっていくんです」
つまり、このダンジョンは百年以上攻略されていないという訳だ。だが、百年以上も攻略されてなくても、ダンジョン暴走って発生しないんだな。
(あれは、中々起こるものではないわ。むしろ、最初のダンジョンでそんなものが起こったわしらの運が悪いわ)
そうなのか……そんな偶然、簡単に起こるものでもないのに、俺たちってつくづく運が悪いというかなんというか。
「とはいえ、百年ダンジョン自体はそう珍しいものではありませんよ。場合によって、中から取れる報酬が大きいために攻略されないパターンもあるので」
そういえば、この世界のダンジョンはある意味で金鉱脈のような役割があるのだし、そんな感じになってしまうんだろう。
「ちなみに、今回の場合は?」
「えっとね、さっきヒビキさんが言ったのの逆だね! 上の階層であまり報酬が取れないから不人気なんだよ! でも、ダンジョン調査は定期的にしてて、かなり安定してるのは分かってるから、早急に攻略する必要がなくて、結果的に誰も攻略しないんだよね」
なるほど、逆を言えば、奥深くにはいいものが眠っている可能性はあるのか。そういう意味ではかなりギャンブル的なところもあるな。何があるかわからないのは少し怖い感じもする。
それに難易度が高いわけだし、やはり俺的にはちょうどいい難易度のものを選びたいわけだが……
(わしは、やはり断然高い難易度じゃ! 報酬も何かありそうで”ろまん”があるではないか!)
ロマンか……まぁ、それも重要かもしれない。せっかくの六人でのダンジョン探索だし、そういうものを求めるのも重要かもしれない。
さて、このままだと平行線だな。こういう時、俺がこいつに譲るわけだが、今回は他の人も巻き込むからな。もう少し考えた方がいいだろう。
「まぁ、今すぐ判断する必要はないし、もう少し考えてから出すよ」
「それがいいですね、まだ時間はありますし、ハイカさんにも相談するのもいいでしょう」
そうか、ハイカさんに相談するのもありだな。あの人なら納得できる答えを出してくれるだろう。
「とりあえず、ダンジョン選択はここまでだ。もう一つの用事やるとしますか」
「はーい!」
俺たちは資料館から出る。俺達が向かうのは、いわゆる不動産屋だ。そう、俺達の家を買うためである。
「不動産屋か、なんか緊張するな」
あっちの世界では一人暮らしのために行ったことがあるが、あの時は母がついてきてくれたしな。
まぁ、それで言うと、今回もアイカとヒビキさんがいるが。
「それで、具体的な条件などはどうしますか?」
一応そこは、エフィとアメイを含めて四人で話し合っておいた。具体的な条件は四つ。一つ、個別部屋と倉庫があること。まぁ、これは妥当である。正直、俺とクランは同じ部屋でいいのだが(五感を共有しているせいでプライベートなどないに等しいため)、他は困るだろうしな。
二つ、大きなリビングのようなものがあること、どっちかというと会議室のようなものだな。まぁ、皆で食事をするときなんかにも必要なので、これも妥当である。
三つ目、ギルドからそれなりに近いこと。これはハイカさんへの配慮が大きい。ハイカさんは冒険業をしない日はギルドの仕事を手伝うそうなので、遠すぎると不便であるだろうということでそうなった(アメイだけ遠くても問題ないだろとは言っていたが)。
そして、四つ目、小さめでもいいので植物を育てる部屋があること。要はクランの趣味部屋である。元々は庭ぐらいのものを、クランは想定していたが、そもそもダンジョン攻略で長い期間空けることもあるので、流石に大きいと管理が難しいということでこういう要望になった。
「なるほど、三つ目までなら簡単ですが、四つ目の植物用の部屋に関しては日当たりが良くないといけないですね」
まぁ、まとめると、駅近の日当たりがいいシェアハウスである。駅じゃなくてギルドだが。
「う~ん、それぐらいなら簡単に見つかると思うよ! お姉ちゃんの名前出せば、舐められることもないしね!」
アイカの口から舐められるとか聞くと、ちょっと変な気分だが、まぁ普段から粗暴な冒険者の相手してるし、これぐらいは使うか。
だが、そう言い切ってくれると頼もしい、アイカに任せれば案外すぐ見つかりそうだ。
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