熊肉鍋とこれから
どうも、作者です。七十三話です。
「――なんでここでやんの?」
俺たちは熊肉が入った鍋を囲って、アメイの言葉を聞いていた。しかし、誰も気に留めていない。
ただ、アメイの言うことももっともで、ここはアメイの家である。そんなに広くない家に、パーティメンバー六人と、アイカがいるのでかなり狭い。
ちなみに、ギルマスは死にそうな顔をしながら仕事に戻っていた。合掌。
「すみません、熊肉の下処理をここでやったので、そのまま流れで」
唐突だったのでギルドの調理室は使えないし、かといって俺たちの宿は、流石に仮宿だから熊肉の下処理をする場所はない。となると、アメイの家しかなかった。
「くっそ、許可出したの俺だし、ヒビキのせいとも言いづれぇ」
そう、俺たちがハイカさんの修業をしていた間、ヒビキさんがあの魔獣、ギガンソという魔獣の熊肉を下処理してくれたのだ。
その後は、痛む体に鞭打って俺とアメイ、ハイカさんの三人で調理した。ハイカさんも料理が上手いのは意外だったが、一人で冒険者業していたらしいし、そこで培われたんだろうか。
「まぁいいじゃーん! 早く食べようよ!」
そう言ってうずうずしているアイカ。その姿にため息をつきながらアメイも席につく。
「それじゃ、いただきまーす!」
「「「「「いただきます」」」」」
「い、いただきまーす」
俺たちは、そう言いながらそろって鍋から肉を取っていく俺たち。
「あ、美味しい!」
うん、本当にうまい。エフィの顔がいつも三割り増しぐらいで輝くのもうなずける。しかし、本当に脂がのってて舌でとける。あの凶暴な熊から出た肉とは思えない。うん、うまい。
「あぁ~、体にしみる~、誰かにしごかれた体にしみるぜ~!」
「そうじゃのう! がっはっは!」
アメイとクランがそんなことを言いながら肉を食ってるが、どうなっても知らんぞ。
「あら、まだ余裕ありそうですね」
「「マジ勘弁してください」」
ほら、俺は知らんぞ……いや、クランがしごかれると俺にもフィードバックが来るから勘弁してくれ。
俺たちはしばらく、たまに何か喋りながらひたすら食事をとっていた。
「――それにしても、確かに七人だと狭いね、この家」
それはそうだろう。元々アメイが一人で寝泊まりするのに使っていた家である。一人暮らしの家がそんなに大きいわけがない。
「確かに話し合いの場として使い続けるのは不向きですね」
ヒビキさんの言う通り、話し合いをするには少し窮屈になるな。アイカを救うために五人で集まったときでさえ手狭だったのだ。
「なんでこれからも俺の家使うの前提なの?」
「わしら宿暮らしじゃし」
俺たちは今泊まってる宿もどこも狭いし、そもそも全員で一つの宿に押し掛けるわけには行かない。かといって、ギルドも、ただの一パーティが当たり前に使っていい場所ではない。
「それなら、家、買いますか。我々”黄金羅針”の共有の家」
ハイカさんはさらっとすごいことを言ってのける。つまり俺たちの拠点か。
「それって……簡単に買えるんですか?」
アメイの言うことはもっともだ。家を買うというのは、そんな簡単にできることではないだろうか。
「いや、別に買うのは簡単だぜ。基本ギルドが管理してるからな、届け出と仲介業者に金さえ払えば、簡単に買える。金の問題は置いといてな」
確かにアメイもこの家は持ち家なわけだし、案外簡単なのか。
「まぁ、買うのはいい提案だと思いますよ、この街を拠点にするなら、装備や道具を置く倉庫にもなりますし」
なるほど、実際俺の盾は今、使わないときはバレンさんの工房やらアメイの家に置かせてもらってるし、確かに保管場所になるし、宿暮らしからも脱せるか。
「それだったら私もいつでも遊びに行けるね!」
確かに、今まで集まるときはギルドに行ってたからな、ちょうどいいかもしれない。
「それなら庭が欲しいぞ!」
クランがそんな提案をする。
「流石に庭は厳しいですね……というか何で庭なんですか?」
「こいつの趣味は土いじりなんだよ」
しょんぼりしているクランの代わりに俺が補足する。こいつは花やら木やらを育てるのが好きである。
「そういえば、クランさんは吸血鬼のお姫さまでしたね」
ヒビキさんはそれだけで、クランが土いじりが趣味なのが分かったらしい。
「それが何の関係があるんだ?」
まぁ、あんまり詳しくないとそういう反応になるよな。
「吸血鬼の王……ブラッドリードの領地には『庭園』っていう、人間が住んでいる場所があるんですよ」
エフィがそう言う。クランの友人であるだけはある。というか、やはり吸血鬼の話というのはあまりこちら側には伝聞が伝わっていないんだな。
クランが土いじりが趣味なのは、『庭園』に入り浸り人間たちに混ざって農作業をしたり、剪定の仕事をしていたからである。
「なるほどな、名前の通り『庭園』なのか」
「確か、吸血鬼の土地に人が住まう場所というのは聞いたことがありますね」
「まぁ、それも含めて家探しますか」
まぁ、ダンジョン街は広いし、要望を満たせる場所も探せばあるかもな。
「家探しもそうですが……そろそろ準備しなければなりませんね」
そうか、そろそろ二週間……準備を始めないとか。
「おお、ついにやるのじゃな!」
クランが浮足立つ。つまり、ダンジョン攻略の準備だ。
「となると、やるのは、装備の更新と、消耗品の買い足しだな」
そうか、ヒビキさんやエフィはまだちゃんとした装備を持ってなかったな。二人とも後衛で気づかなかったが。それに俺たちの装備のメンテナンスも必要か。
「それもありますが……一番最初に決めなければいけないのは」
「どのダンジョンを攻略するか!」
ハイカさんの言葉を途中からアイカが奪い取ってしまった。ハイカさんは特に怒るでもなく、アイカの言葉に優しくうなずく。
そうか、どのダンジョンに挑むかを決めないと、予定が組めない。特に消耗品は攻略日数によって量を決めなければいけないので、重要な部分だ。
「うーん、じゃがどのダンジョンを攻略するかという部分は難しいのう。無数にありすぎるわ」
「私が情報集めるよ! それで検討しよう!」
どうやらアイカもダンジョン攻略の準備を手伝ってくれるらしい。まぁ情報集めは人手が多い方がいいからな。
「えーと、ダンジョン攻略に必要なのは」
「まずやれるのは攻略情報集め、それと装備の新調、あとは連携のチェックや基本隊形なんかですね。物資調達は最後になるでしょう」
「やることが多いですね……仕事もありますし……」
確かに、これだと全員で一つ一つ潰していくと大変だな。となると、
「分担した方が良さそうか、少なくとも情報収集班と、装備関連で分けた方がいい」
「そうですね、ならそれを軸にしていきましょうか」
俺たちは今後の方針を決め、動いていくことにした。
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