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三月羅針譚~盾持ちと吸血鬼~  作者: FOXtale
悠久忘れぬ■■の景色
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熊はどの世界でも

どうも、作者です。七十話です。

クランは、その巨体を誇る魔獣のどてっぱらに槌を叩きつける。しかし、その一撃ではノックアウトせず、反撃してきた。クランに代わって俺がそれを受け止める。


「このクソデカベアが!」


目の前にいるのは三メートルを超えるでかい熊だ。Aランクの魔獣、ギガンソ。今日はこの熊の討伐依頼だ。特徴は、でかい、強い、そして重い。盾でその魔獣の拳を受け止めると、その重さがよく分かる。


しかもこの巨体でそこそこ早いのだ。俺だったら、速度で勝てるが、クランだと絶対に捕まる。あっちの世界で熊に会ったことがなかったが、現代の日本の熊もあんなに怖いんだろうか。まぁ、どうもこの熊、嗅覚が弱いという弱点があるらしいが、言うほど弱点になっていない気がする。


この世界、対抗手段があるだけマシに思えてきた。というか、なんでこの世界にも熊がいて、その上強いんだ。


「俺いつまでこいつらの相手してりゃいいのー!」


「もう少し引き付けてください」


アメイが周りの魔獣たちを引き付けている。アメイは魔獣を引き付けるにおいを発するポーションを片手に、全力で走っている。


アメイを追いかけているのはD、Eくらいの魔獣たちだ。この熊を討伐するのがメインの依頼なのだが、そうなると他の魔獣たちがとにかく邪魔だった。


前だったらこの数を処理するのに時間がかかっていた。しかし、今は違う。


「エフィさん、今です」


「は、はい!」


『大地に沈む石脈よ、我が声に応えよ。獣が立つ大地はここにあり、しかして彼らを滅ぼすものなりて。ここに獣どもをその石槍によって貫け』


長い詠唱、それだけ魔力が空間に充満しているのが感じる。大地に震動が生まれ、そして現るは、


剛石乱槍(アーススキュワー)


その一言と共に、アメイを追いかけていた魔獣たちは大地から飛び出た石の槍によって、後方の魔獣から順番に串刺しになっていく。だが、一つ問題があるとすれば、


「なんでこっちに来ているんじゃ!」


何故か側面からアメイが突っ込んでくる。つまりこのまま行くと、俺たちも巻き込まれる。


「は!? 本当だ! いや、俺じゃない、ヒビキの指示だ!」


俺とクランはそろってヒビキさんの方を振り返ると、ヒビキさんは、いつもの笑みを崩していない、待て待て!


後ろから魔獣に追われている以上、アメイは減速できない、かといって曲がるにはもう遅い。俺は咄嗟にエフィの方に向くが、エフィの目はぐるぐるしていた!


「ごめんなさい! 僕ももう制御できません!」


だよな、俺はクランを抱えて後ろに下がろうとするが、よくよく考えたら前にも熊が、熊か!


「泉さん達はそのままで」


……やっぱりそういうことか、俺は下から生えてくる土の槍に警戒しつつ、熊の動向を見守る。まぁ、問題はないだろうが。


土の槍は熊だけを串刺しにした。結果を言えばこれはヒビキさんの作戦だ。他の魔獣どころか、熊を含めて一網打尽になるように、アメイを利用して魔獣たちを誘導していた。


串刺しになって未だに生きている巨大な熊に呆れそうだが、それを許さないクランは、脳天に対してでかい一撃を振り上げる。流石に耐えられなかったようで、熊は沈黙した。



――俺たちは、倒した魔獣たちの剥ぎ取りをしていた。ただ、ほとんど串刺しにしてしまったので、あんまりはぎ取れないが。


それにしても、俺もずいぶんと剥ぎ取りが上手くなったものだ。最初のほうなんか、アメイやらエフィにその剥ぎ方は効率が悪いだなんだのとよく怒られてたものだ。だが、一番上達しているのはエフィだった。


それに、レベルもずいぶんと上がった。レベル差が俺たちと大きすぎたために、基本格上と戦ったせいでパワーレベリング状態になっていたのが原因だが。


だが、そのおかげであのすさまじい威力の、魔法を使えるようになったのでこっちとしては非常に助かるが。


やはり俺以上に勉強熱心だ。単純に学ぶのを楽しめるタイプなんだろう。というか、俺は別に勉強熱心なわけではないが。


「うまくなったな、剥ぎ取り」


「そ、そうですか……ありがとうございます」


この感じだが、結構喜んでいる。何というか、俺は別にエフィと会ってから一か月も経っていないが、どうしてもクランの記憶のせいで、エフィに対して弟のような感情を持ってしまう。


何だったらこいつはクランより年上なので、三百歳は越えているんだが、まぁクランへの扱いも似たようなものだから別にいいんだが。


それでも、たまに気安すぎるのではないかと邪推してしまうが、それをエフィに直接聞くのも気まずいので、結局聞けずじまいだが。


「? どうしたんですか?」


「いや、なんでもない」


はぁ、いつかそう言う話もできるくらいに仲良くなればいいんだが。今の俺の気軽さは、ある種の紛い物だしな。


(うーん、お前の姉や弟に会ったら、わしも今のお前とエフィみたいになったかのう)


なってそうだな。それでお前の場合は普通に仲良くなりそうだ。自分で言うのもなんだが、どっちも能天気だからな。そこらへんはこいつにそっくりだ。


クランから抗議の感情が飛んでくるが、無視してはぎ取りを続ける。それにしても、熊……やっぱりでかいな。熊と言えば、熊の手やら、毛皮やら、余すことなく使えるイメージだが、こいつは使えるんだろうか。


昔、姉が持って帰ってきた熊肉を料理したことがあるが、料理がなかなか大変だったんだよな。というか、下処理がなぁ。


「なんじゃ、お前こやつの料理ができるのか!」


「ほう……それは気になりますね。実際、ギガンソの肉はおいしく食べられますよ。工程は大変ですが」


「そういえば、こいつ食えるんだったな。結構出回らないんだよ、魔獣食。特にこいつは結構な高級品だぜ」


クランの言葉に一番に乗ってきたのは、ヒビキさんだった。ヒビキさん、こう見えて案外料理が好きだよな。やはり文化の一種だからだろうか。というか、ギガンソも食えるのか。魔獣食って案外普通なのか?


そういえば、資料館の魔獣の資料にも一々食えるかどうかが書いてあったな。


「ヒビキさん、食うの好きだよな。やっぱりこれも文化だからか?」


俺の質問にヒビキさんは、少し懐かしそうな顔をする。


「まぁ、それもあります。ですが、これに関しては昔の友人……いえ、”親友”と言わなければ彼女に怒られてしまいますね。その”親友”のせいですよ」


親友。その言葉は少し意外だった。彼女は、そういう関係性をつくらなそうだなと勝手に思っていたからだ。


だが、やはりそう言える友人がいる……いや、いたのだろう。彼女がそう言ったとき、いつでも会える友人を言うような表情には見えなかった。きっと、その親友はもういないのだろう。


それでも、その言葉には一切の悲しみは混じっていなかった。どれだけ、楽しい思い出があったのだろう。


「ヒビキ様……じゃなかった。ヒビキ殿にも”親友”がいたんじゃのう!」


さっきヒビキさんが”親友”と言ったときに、クランが意外そうな感情を出していたのでもしやと思ったが、やはりそうなのか。


「ええ、こういった話は『文化紀行記』には載せていませんからね……冒険者だった話も書いてないでしょう?」


そう言えば、その話もクランたちは知らなかったな。じゃあ、これからもいろいろと知らない話は聞けそうだな。


「とりあえず、熊肉の下処理して料理して……食べながらヒビキの話聞くっすかね!」


「その前に、私以外はハイカさんの修業がありますので、私がやっておきましょう」


……まぁ、そうだな。今日も頑張りますか。クランからは、逃げたい感情が来て、エフィとアメイは天を仰いでいた。今日の地獄は、ここからである。

読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。

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