強者とは
どうも、作者です。五十一話です。
奇襲してきた冒険者たちを返り討ちにした後、クランは治癒魔法を使って治療する。一応、起きて襲い掛かってもいいように縛ったが、結局気絶しっぱなしだった。
「こいつらどうするんだ?」
「とりあえず、ギルドに連れていきましょう。ペナルティなんかはギルドの方々が出してくれるでしょう」
やっぱりそうなるな。となると、酒は……。
「クランは酒買って帰ってくれるか?」
クランが買って帰ればいいだろう。クランもそれに乗り気だし。何かあれば、思考共有で互いのことを伝えられるだろう。それに、クランはさっさと酒飲みたそうだし。
「帰り際に酒飲むなよ」
「せぬわ……多分」
そこははっきり言ってほしいが。まぁ飲んでいたら、痛覚共有ペナルティで折檻である。そしてヒビキさんは……。
「私はイズミさんに着いて行くのがいいでしょうね」
俺もそれにうなずく。俺だけだと状況説明に手間取りそうだ。それに、流石に二人運ぶと俺の両手がふさがる。そう言う意味でもいてくれると助かる。
ということで、俺とヒビキさんはギルドまで二人を運ぶ。俺が両手で抱えるスタイルだ。二人は流石に重いが、それでも重量軽減が効いているので米俵を両手で抱えているようなものだ。
幸い、ここからギルドまではそう遠くない。ちょっとの辛抱だ。
「――イズミさん、重くはないですか?」
「ああ、問題ない」
どっちかというと、周りの人間の視線が痛い。人間を二人担いだ巨漢(自分)と、木でできた枷をはめられた人間を引っ張る女性だ。しかも呪文を唱えられないように口枷までされている。普通に恐ろしい状況なのは間違いない。
とはいえ、ギルド方面に向かっていると気づくと、大半の人は興味を失う。いつも思うが、ここの人たちは荒事に慣れすぎじゃないか?
「それにしても、思ったより恨みは深かったらしいな」
ハイカさんと付き合いがあるだけの俺たちすら襲うとは、どれだけ屈辱的だったんだろう。思考誘導があったとはいえ、俺たちまで襲う必要はなかったはずだ。
「まぁ、ハイカさんは見た目だけなら普通の受付嬢ですからね」
それもそうだ。何だったら身長が低めだから場合によっては少女にさえ見える。実際に話すと違うとわかるが……そういえば、ハイカさんって何歳なんだろう? 確かアイカが十七歳だったはずだし、二十代後半くらいか? アメイと年齢的に近そうだし。
「実際は相当強いみたいだしな……ヒビキさんから見て、ハイカさんはどのくらい強いんだ?」
ヒビキさんは歴戦の戦士たちを見てきたと言っていた。なら、そのヒビキさんから見て、ハイカさんはどれくらい強いんだろうか?
「私が知る限りでは、相当の上澄みと見ていいと思います」
「それは……冒険者としてか?」
上澄みと言っても、どのラインかは分からない。まぁ、どの道恐ろしく強いのは間違いないが。
「......いえ。”人”として、です。ハイカさんがどうして、ここにいるかわからない程度には」
「”人”としての強さってつまり?」
「そうですね……イズミさんは、冒険者と衛兵職の関係は知っていますか?」
俺は、うなずく。確か、魔獣と合わせて三すくみになっているやつだ。冒険者は魔獣に強く、魔獣は衛兵職に強く、衛兵職は冒険者に強い、という奴だ。
「では、どうして、冒険者職が衛兵職に弱いと言われているかは?」
「それは……知らない」
確かに、何となくそういう認識であったが、確かに言われてみるとわからない。
「理由としては簡単で、衛兵職は、魔獣に対して有効なステータスが伸びにくい代わりに、身体性能と単純な技能が伸びやすいです。魔法使いの場合は覚える魔法の違いが大きいですが」
なるほど、人相手には、ステータスより純粋な肉体性能が必要なわけだ。俺の盾の重みが魔獣には友好的でなくても、人相手には有効なのと同じ理論だな。というか、普通に考えたらそれが当たり前のはずなんだが。
そして、魔法使いは覚える魔法の差。確かに、冒険者職の魔法は人間相手にはあまり効かないみたいだし、衛兵職の魔法は人間相手に有効な魔法が多い、という感じか。
逆にステータスが伸びないので魔獣に勝つのは難しい……案外よくできているな。
「ただ、それだけだと指標として分かりにくいですので、よく言われるのはLv.30の衛兵職相手に、冒険者が対等に渡り合うなら、Lv.50は必要と言われています」
Lv.20差は必要なのか……。そりゃ冒険者に強いとか言われるわけだ……。
「ちなみに同じ冒険者同士なら、同レベルで十分ですよ。そこからは単純な技量差ですが」
あとは、スキルか。スキル次第では覆しようもありそうだ。まてよ。
「受付嬢って……衛兵職なわけ」
「ないですねぇ。所謂事務職、戦闘系職業ではないです」
うん、少しだけハイカさんのやばさが分かった。つまり、ほとんどステータスにも、身体性能には一切の職業バフがかかっていない状態だ。あの人、今は受付嬢のはずなのになんであんなに強いんだ?
「ハイカさんの怖ろしさが少しわかったところで、では、本来勝ち目がない戦闘に勝つにはどうするか」
どうやればいいか。さっき言ったように、スキルで覆す方法はあるだろう。だが、あの時、ハイカさんが何か特殊なことをしていたようには見えなかった。なら、ステータスも低い、肉体も恐らくあまり高くないであろうハイカさんがどうやって一瞬で冒険者が下せたのか。
「……技?」
「正解です。あの時ハイカさんはほとんど技量だけで冒険者を下しました。厳密には、相手の攻撃の勢いを動きだけでいなしていましたね」
あの時、そんなことがおきていたのか。
「とにかく、ハイカさんが恐ろしいのはその技術です。もしかしたら、相手が衛兵職だろうが、冒険者職だろうがLv.30ぐらいは倒せるかもしれません」
「受付嬢が……?」
「受付嬢が」
……あの人、思っていた以上にやばくないか? 受付嬢でそれなら、冒険者職になったらどうなるんだ?
「何で受付嬢なんてやってるんだ?」
「さぁ、それは私もわかりかねます。少なくとも、あの人が異常に強いのは間違いありません。それに、あの動き、少し心当たりはありますが……それは、言うのはダメですね」
まぁ、話してくれるとは言っていたし、詮索しすぎるのは良くないな。
「冒険者だとSランクはあるんだろうか?」
「少なくとも、最低はそこですね」
ん?
「冒険者ってSランクで終わりじゃないのか?」
よくあるギルドの設定だと、大体Sランクが一番上なので、そこで打ち止めだと思っていたが。
「もう一つ上があります。とはいえ、基本はSランクが一番上と思って構いません。基本”彼ら”は例外みたいなものですので」
「例外?」
「”SSランク”、冒険者、いえ、人類の到達点の一種。名実ともに最強の冒険者たちです」
SSランク、最強か。やっぱりそう言うすごい人っているんだな。
「確か、今いる冒険者は六名だったはずです」
六名。この街だけでも、いったいどれほどの冒険者がいるかわからない。それが世界中となると、数万、いやそれで収まらないかもしれない。その中でたった六名。それはいったいどれほどの強さなのだろうか。
「”人”としての上澄み、そう言った理由が分かった」
ヒビキさんは”最低Sランク”と言った。なら、ヒビキさん的には、SSランクはあってもおかしくないと、言外に言っていたのだろう。
さて、そろそろギルドなわけだが……何やら騒がしいな。
「あれは……?」
ギルド前、騒がしいのはそこ、人だかりができている。この感じ、
「今度はギルドの前で喧嘩ですか……」
これは、思ってたより深刻か?
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