裏道の影
どうも、作者です。五十話です。
俺たちは裏道に入る。どうも尾行されているようで、それを対処するために裏道まで入ることになった。というか、さらっと裏道まで入るとヒビキさんは言っていたが、この案、割かし脳筋なのでは?
まぁ、大通りで厄介ごとを起こされるよりはましだが。
さて、敵の数はさっきまで三人いた。しかし今、尾けているのは二人。一人回り込んでいると考えるのが自然か。そう考えると襲う気満々だな。
「話すならこの辺りで良さそうですね」
その言葉は、一種の合図。つまり、相手が襲うにはちょうど良く、こっちが対応するにもちょうどいいタイミング。
クランは無防備にも背中をさらしている。そして、俺とヒビキさんは話し始めてクランの方を見ていない。きっと隙だらけに見えているだろう。
(ほれ、来たわい)
尾行していた冒険者は、予想通りクランの背中を狙う。まぁ、普通なら一撃入ってもおかしくないんだが。
俺は盾を背中から取る。
『『交換』』
「な!?」
俺はクランを狙ったその一撃を盾で受け止める。そのまま盾で振り払うが……あ、やべ。
「ぐべ!?」
狭い空間で九十キロの盾を振ったらどうなるか、当然壁にぶつかる。その間に人がいればどうなるか、当然潰される。ぎりぎり盾を引っ込めたので即死しなくて済んだ。うん、良かった。
(クラン、後で頼む)
(仕方ないのう)
さて、後でクランが治療する。なら容赦なくやれるな、よし。
「くそ! てめぇ!」
仲間がやられて焦ったのか、もう一人の男が突っ込んでくる。だが隙だらけである。さっきの奴もそうだが、動きがあまりに単調すぎないか?
「ふん!」
相手は俺しか見えていなかったようで、クランの一撃をもろに食らう。相手は声を上げることなくノックアウト。
さて、さっきの感じだともう一人いそうだが。
ヒビキさんは地面に手を当てている。何かしているのか? 何だろう? さっきから微妙に地面が揺れている?
「そこですか……クランさん、右の通り、その角辺りに植物魔法を。相手は魔法使いの服装しています」
クランは言われるがまま、植物魔法を使う。壁からそれなりの蔓が現れる。
それにしても、魔法使いの姿ということは、倒した二人が押さえ込んでいる間に魔法を撃つ算段だったな。やっぱり、それなりの算段があったのだろうか。
「お、こいつか」
クランは何か感じたようで、手で引っ張る。俺にもそれが伝わってきて、捕まえたところまで感じた。
やっぱり便利だな、植物魔法。一家に一台あったらいいやつだ。
「さて、これで全員ですね」
「思ったよりあっさりじゃったのう」
そうだな。しかし、別に弱いという感じはしなかった。動きこそ単調だったが、レベルは俺たちと同じぐらいだったのではないだろうか。
「イズミさん、倒れた人たちを連れてきてくれませんか?」
「わかった」
俺はヒビキさんの言われるまま気絶した冒険者二人と、蔓で拘束された冒険者を裏道に集める。これ俺たちが悪者みたいだな。
ちなみに、唯一起きている冒険者は、クランの蔓でぐるぐる巻きになっていて喋ることすらできない。これなら気絶してた方がましではないだろうか。
というか、運んでいる最中に気づいたが……
「こやつ、昨日受付嬢にいちゃもんつけてたやつではないか?」
そう、昨日ハイカさんにやられていた相手だ。何で尾行してきたんだろうと思っていたが……。
「まさか、ハイカさんへの報復か?」
「そう考えるのが自然でしょうね」
ヒビキさんが肯定してくれる。どうも俺たちがハイカさんとの付き合いが深いのは知れ渡っているようだし、まぁハイカさんの所に好んでいくのは今のところ俺たちだけだしな。
そして、そんな俺たちを見て、ハイカさんよりは倒しやすそうだと踏んだんだろう。結果的に返り討ちにしてしまったようだが。
「にしても、こいつら短絡的すぎないか?」
まぁ、ハイカさんへのいら立ちを鬱憤を俺たちにぶつけるのはまぁ分かる。だが、それにしたって計画性がなさすぎるだろう。
「冒険者なんてそんなもんじゃろ」
いや、確かにそこら中で喧嘩しまくっているが。
「いえ、イズミさんの言い分は正しいかもしれません」
先ほどまで倒れた冒険者を観察していたヒビキさんは、俺の意見を肯定した。ヒビキさんは何かに気づいたらしい。
「この方たち、少々目がおかしいですね……恐らく薬の類でしょうか? クランさん、拘束している冒険者の目と口だけ解くことは可能ですか?」
クランは言われた通りに拘束していた冒険者の顔部分の蔓を解く。すると、その瞬間から冒険者は口汚くこちらを罵る。
「くそが! 離しやがれぇ!」
「貴様ぁ! ヒビキ様に唾をつけるでないわぁ!」
「ぐぎゃ!」
クランが蔓の縛りを強くする。やりすぎだ、バカ。
「いた!」
俺は軽くチョップをする、相手と同レベルのことしちゃいけません。
「さて、解放しても構いませんが、質問に答えていただけますか?」
「いや……そのま……えに、蔓」
ヒビキさんはクランに目配せをして、仕方なさそうにクランは蔓の拘束を弱める。
「ぷはぁ! 何だって答えるので許してくださぁい!」
さすがに堪えたのか、冒険者は、涙目でそう答える。ヒビキさんはそれに優しい笑顔でうなずく。今の状況だとちょっと怖い。俺もそっち側だが。
「何か、薬のようなものを飲まされた記憶は? いえ、何か、忘れているような感覚でも構いません」
「薬……? いや、んなもんは……あ、そうえいば、三日前に酒飲みまくってそろいもそろって記憶失ったけな……?」
なるほど、酒の飲みすぎで全員の頭が逝ったと、酒って恐ろしいな。
(そんなわけなかろう!)
それはそうか。それだったら、クランもアメイも頭がおかしいやつになる……なってないよな?
(なっとらんわ!)
だな。じゃあ何か別の要因があるはず。
「でしたら、どうして全員記憶を失うまで酒を飲んだのですか?」
「確か、結構割のいい依頼で……細かい内容覚えてないけど、その割に簡単で……あぁ、そうだその依頼こなしたら、気前よく酒奢ってくれたんだよ」
うん、明らかにそれだな。人から奢られた酒、しかも簡単で割のいい仕事のお礼。怪しさ満点である。しかも時期的に、受付嬢にいちゃもんをつけたタイミングとも合致する。
「これは……思ったより根が深い問題かのう?」
「ふむ、ギルドに報告する必要性はありそうですね」
ヒビキさんの言う通りだな。これは、裏に何かあるのは間違いないだろう。さて……何で酒買いに行っただけでこうなるんだ?
「――隊長、洗脳冒険者三名、確保されました」
所詮はチンピラか。しかし、実力を測るにはちょうど良かった。”ギルドの怪物”と、そして、それと懇意にしている”眷属”……対処するのは骨が折れそうだ。だが、こちらの目的の達成には問題ないだろう。
あいつらを対処せずとも、支障はない。とはいえ、あの”スピアヘッド”が戻るまでには終わらせねば。さて、
「計画は変更、”怪物処理”による弾圧から、”怪物の無効化”による交渉に変更、第二プランでいく」
「「了解」」
さて、『シゲン』の攻略、思ったより骨は折れそうだ。だが、女神の命、達成せねばならない。
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