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三月羅針譚~盾持ちと吸血鬼~  作者: FOXtale
二章 ■■にあつまれ
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怪物と言われても

どうも、作者です。四十九話です。

「――ハイカさん、クエストの処理、お願いします」


俺たちは、結局その日はクエスト処理を別の受付の人にやってもらって解散した。今日もちょっと気まずくて依頼は別の人に頼んだのだが。


エフィが別に大丈夫だろと言っていたので、依頼処理はハイカさんに任せることにした。まぁ、人がいないぶん早いしな。


「承りました……私のこと、聞きましたね?」


そう言うハイカさんの雰囲気は怖い。普段の穏やかな雰囲気は消え、その眼光は、とても直視できるような鋭さではなかった。いや、まぁこれは……。


「な、何のことじゃか」


クランはしらばっくれるが、まぁバレバレである。こいつ演技下手だな。


「別に大丈夫ですよ。昨日皆さんがあの場にいたのは分かっていましたから」


さっきの怖ろしさは消え、いつも通りのハイカさんに戻る。やっぱりこっちも演技だったな。こっちは演技が上手いな。まぁ本人はしてるつもりないんだろうが。


「それならそうと早く言うんじゃ!」


「すいません、ちょっとからかいました。どうも私、無表情なせいか、ちょっと睨むとすぐ怖がられるんですよね」


わかる。俺もちょっと見えづらいからって目を細めるだけで怖いって言われるんだよな。俺はついついうなずく。


「お前も共感するんじゃないわ!」


「それで、なんで隠してたんですか?」


いや、別に言うことではなかったかもしれないが。俺たちもそのせいで妙に避けられていたようだし。こっちから他の冒険者と交流しないせいで言われるまで気づかなかったけど。


「まぁ、単純に、自分が”怪物”なんて言われているのは言いたくないですよ。それに、怪物と言われておきながら、妹の一人も救えない……それを妹を救ってくれた人に言うのは恥ずかしかったんですよ」


それは……何とも言えないな。確かに、あの時、俺たちはアイカを助けられた。しかし、あの場にハイカさんがいたら、あの時の俺たちなんかよりスマートに救えたんじゃないだろうか。


ハイカさんは上位の冒険者にさえかなり恐れられている。その強さはかなりのものだろう。それこそ、Aランク冒険者、それこそSランク冒険者くらいの実力はあるかもしれない。


「それに、お二人は私のこと知ったとて、別に態度変えないでしょう?」


「「まぁ、別に/じゃのう」」


今更ハイカさんが強い人物だからと知ったところであまり変わらない。俺たちに色々と世話焼いてくれたのは事実だしな。


「そういうことです。お二人の場合、他人の噂話より、自分たちの経験を重視するタイプでしょうから。最初は意図して言いませんでしたが、途中あたりから純粋に忘れてましたね」


そう言われると納得せざるを得ない。


「ですが……私が何故冒険者をやらないかなどは聞かなくていいんですか?」


確かに気になりはする。だが、それを無理やり聞き出したりするのは違うと思う。それはクランも同意見だ。


「ハイカさんが話してくれるなら、ですね」


「そうですね……ギルドマスターが帰ってきたら話しましょうか。そっちの方がスムーズですので」


どうやら、話してくれるらしい。だが、ソテルさんが戻ってきたら、か。いつになるだろうか。まぁ、急ぐ話でもないだろう。


「では、またお越しください……あ、とんかつ、美味しかったです」


「それは良かった」


ふむ、作った甲斐はあった。



月が出るにはまだまだ時間がかかる夕方前。俺たちは、アメイの家に来ていた。


場所は、『シゲン』の外壁付近。ギルドから遠いため、あまり人気がない場所らしい。だから、”俺でも家が買える”とアメイは言っていたが。


「――とりあえず、魔獣の基礎知識はこんなもんだ」


扉を開けると、アメイがエフィに対してそう解説を締めくくっていたところだった。


「理解できました……あ、ありがとうございます」


そう言いながら、魔獣討伐と座学の疲れが一気に来たのか。充電が切れたかのように机に突っ伏す。クエスト開始から数えると朝から夕方までぶっ通しだから仕方ないか。


「おや、お二方帰ってきましたか」


ヒビキさんもいる。何と今日は、エフィに対して二人が座学をしていた。


エフィが言い出したことだ。元々冒険者となるために知識を蓄えていたクランと違い、エフィは冒険者業に疎かった。そのため、ちゃんと勉強をしたいと、経験豊富なヒビキさんとアメイにお願いしたのだ。


それでいうと、俺も受けるべきだったのだが、あの時はそんなこと考えてなかったな。


「おお、二人とも、ハイカとは普通に話せたか?」


「うむ、ちょっと驚かされたがのう」


その言葉を聞いて、アメイはハイカさんが俺たちをからかったことを理解したのか声を上げて笑う。


「はっはっは! あの人急にボケる時あるからな! いっつも無表情なせいでガチなのか、嘘なのかわかりにくいんだよ!」


クランは、本当にそうだと全力でうなずいている。もう表情筋の硬いものの宿命なんだろうか。


「ああ、喉カラカラだわ。酒、酒っと……ない!」


そう言いながら、部屋の奥まで酒を取りに行くアメイ。まぁ、無かったようだが。


「なんじゃと!」


……。アメイの酒をたかる気満々だったクランも驚いている。はぁ、娯楽は重要だが。


「なら買ってくるわ!」


「頼んだ!」


クランは一瞬で立ち直ったかと思うと、アメイとの意味不明な連携を見せ、そのまま酒を買いに外に出る。今着いたとこなんだが……?


仕方ないので俺もついて行くことにする。クランの場合いくら買うか分からん。こいつ、一人にすると樽一杯の酒飲んだりする奇行に走るし。


「リフレッシュがてら私も着いて行きますね」


そう言ってくれたのはヒビキさんだった。まぁエフィは倒れたし、ヒビキさんも外に出たいんだろう。人数は多い方がいい。助かる。


しかし装備ぐらい外したかったのだが。



――ということで、三人で酒を買いに露店の方まで赴く。さっきまでの威勢は何処に行ったのか、クランは緊張していた。やはり、未だにヒビキさんと一緒に行動するというのに慣れないらしい。戦闘中は大丈夫なんだが。


「そういえば、ヒビキさんから見て、ハイカさんって冒険者としてどれくらい強いんだ?」


あの時、ヒビキさんは、ハイカさんの強さを見抜いていた。あの時は、強い人をたくさん見ていたと言っていたが、だとすれば、そんなヒビキさんから見て、ハイカさんはどれくらいなんだろう。


それを聞きたかったのだが……。クランの様子が変わった。


(泉、尾けられておる)


クランはそう伝えてくる。正直、俺ではわからない。しかし、『夜行』のスキルで五感が強化されたクランであれば、分かってもおかしくない。俺は、クランの五感に相乗りする。確かに、ずっと俺たちと一定の距離を保つ奴がいる。


クランが察知したタイミング的に、この露店に入ってからか? それとも別のタイミングか。とりあえず、ヒビキさんに伝えるか?


「そうですね……ここでは人が多くて聞こえづらいですし、”裏道”まで行きましょうか」


そう言いながらヒビキさんは目配せする。ヒビキさんも気づいているらしい。流石は竜人、と言うべきか。


(クラン、相手の強さは?)


(恐らく、大丈夫じゃ。ヒビキ様の方がより詳しく察知しているようじゃし、そのヒビキ様がそう言った時点で、な)


とりあえず、問題はなさそうだ。だが、油断はしない。装備、そのままで良かったな。俺は盾を構えられるように歩く。


「イズミさん、説明するだけですから固くならなくていいですよ」


ヒビキさんは、意識しすぎて相手にばれないようにと言外に伝えてくる。確かに、二人の足取りは自然だ。こっち方面の演技は俺より上手か。


さて、相手は何者だ?

読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。

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