パーティバトル
どうも、作者です。四十六話です。
「イズミさん、防御は任せていいんですね?」
「ああ」
今回挑む敵はDランクの魔獣、コレ―。イノシシ型の魔獣で、性能だけで言えばC相当だが基本突進しかしてこないため、D扱いになっている魔獣だ。
俺たちの適正はC、ヒビキさんも入るとBまで視野に入る。しかし、今回は冒険者としてはまだ新人のエフィがいるため、Dランクの魔獣を選んだ、という訳だ。
それでも、新パーティと新装備の試運転には十分だろう。
今回、いや今回から司令塔としてヒビキさんが指示役になる。ヒビキさんの職業は、サブにカースドキャスター、そして、メインにはコマンダーという構成だ。コマンダーという職業は今のところよくわからないが、あとで教えてくれるとのこと。
冒険者業は久々らしいが、それでもレベルは五十。そして、魔獣の知識、戦闘の知識は俺たちよりずっと豊富だ。
だからこそ、職業の名の通り、コマンダー(司令塔)という訳だ。
そんなことを話しているうちに、アメイが魔獣を誘導してくる。そしてアメイは、突進してくる猪たちから必死で逃げていた。そろそろ交代だな。
「さて、なら行きましょうか」
「おう、任せた!」
アメイはエフィのいる位置まで後退し、俺たちは武器を構える。さて、初実践といこうか。
俺たちの陣形は最後衛にヒビキさん、その前にクランとエフィ、そして一番前に俺という形。
『獣どもよ、この音を聞け、衝撃の咆哮を』
『魔獣挑発』
魔力の咆哮が響き渡り、俺は敵のヘイトを引き付ける。
「イズミさん。ポインターの位置まで移動してください」
ポインター、確かに何か魔力でできた柱のようなものが見える。これもコマンダーの魔法らしい。俺は魔獣たちを進行方向から横に誘導する。
そうすれば、
『か、火球よ、獣を燃やせ……』
『火炎弾』
味方が敵の側面を叩ける。魔獣たちは、たちまち燃える。もろに食らった相手は体勢を崩している。流石にレベルが一ではそうダメージにならない、はずなんだが。
(レベルが一にしては威力高くないか?)
Cランク相当の身体能力、つまり冒険者で言えばLv.30はあるであろう猪相手に、討伐には至らないとはいえ、かなりのダメージが入っているのは間違いない。
普通、Lv.1というと、ひのこくらいの威力で、ぎりぎりダメージが入るぐらいではないんだろうか?
(あれでも魔王じゃ……しかも、魔尾のな。魔法の素質は魔人の中でもトップクラスじゃよ)
魔人、全体的に魔力のスペックが高いらしい種族の中にいてトップと言わしめる程か。だがそれは目の前の攻撃を見て物語っている。
「Lv.1の威力じゃねぇなこれ」
「ですね......ちょっとこれは想定外です」
冒険者経験の長い二人すら驚くほどか。すさまじいな。とはいえ、今の威力が高すぎた。俺の挑発の効果が薄い猪たちが、エフィを狙ってしまった。
「え? ひぃ!?」
魔法の威力は高けれど、それ以外の部分はまだ未熟、流石に足が遅い。
「クランさんは攻撃魔法の詠唱! 泉さんは数秒抑えつつ『跳躍』の準備! アメイさん、エフィさんを!」
俺は、動きたい衝動を抑えて盾を構え続ける。今はヒビキさんを信じろ。
「男の手を握る趣味はないんだがな!」
そう言いながら、エフィは手を引っ張る。ヒビキさんとクランを伴って全力で逃げる。しかし、それでもじわじわと距離を縮められる。
『精兵よ、加速せよ』
『加速指令』
先に詠唱が完成したのは、ヒビキさんの魔法。アメイたちの速度が上がっている。しかし、それだけではないであろう加速力を生んでいる。それによって猪たちとの距離が一気に開く。
『兎のごとく、跳ねろ』
『脱兎跳躍』
俺は詠唱を完成させる。それと同時に
『これは獣を破壊する一撃、さぁ今宿れ』
『魔獣破砕』
クランの魔法の詠唱も完成する。俺は足に、クランは槌に魔法の効果が蓄えられる。あとは、
『『交換』』
俺たちは位置を入れ替える。俺がいた位置にいるクランは、その槌を振り下ろし、轟音を響かせる。それによって正面の猪たちはぺちゃんこになり、その衝撃の余波で、周りの猪共ですら気絶する。
俺は、クランの位置に着いた後、猪たちの方向を向き、そのまま地面を蹴る。『脱兎跳躍』、その効果は名前の通り、跳躍力強化、つまり、地面を蹴るというより、正面に跳躍するというほうが正しい。
その速度は、『加速指令』の効果、そして俺の速度も乗せられ恐らく一歩で数十メートルは移動する。そのままエフィを狙って突進してきた猪たちに突っ込む。恐らく、人であれば九十キロの盾と合わさって、ぺちゃんこになっているところだ。
――だが、相変わらず、この一撃で死なないのは本当によくわからない。今の一撃ですら、猪たちには、大した攻撃になっていない。相変わらず攻撃のステータスが低いと、ダメージがあまり入らないのは変わりないらしい。それでも、俺の攻撃にしてはダメージが通っているので、完全に効果がないわけではないらしい。
突然突進してきた俺に驚いて、猪たちは俺をロックオンする。それでいい。あとは流れだ。意識を切り替えるように、刺さった猪の牙をすぐに抜く。
『生命の力よ、癒しの加護を彼の者に与え給へ。傷は残すことなかれ』
『再生』
(なーにが消化試合じゃ、お主の体に穴空いておるではないか!)
クランは俺に回復を施す。今までの『治癒』ではなく、『再生』の魔法。それによって、俺の傷は一瞬で回復する。クランの言う通りなんだが……今度こそ、問題はない。
あとは、主にクランとエフィが攻撃を入れ、定期的にヒビキさんも攻撃に参加していた。それによって、猪たちはあっという間にに処理されていく。
「――どうでしたか?」
「し、指示とっても的確でした……!」
俺たちは猪の部位をはぎ取りながら、戦いの感想を言い合う。エフィの言う通り、ヒビキさんの指示は分かりやすかった。
「私としては、最初から魔法を入れておけばよかったと後悔しておりますが……」
確かに、エフィが狙われたときは危うかったか。
「まぁ、久々なんだし悪くねぇんじゃないか?」
すっかりヒビキさんに対して敬語を使わなくなったアメイ、使わなくていいと言われたんだろうが。実際、久々という割にはかなり動けていた。しかも久々というのは、四百年単位なわけで……それを考えれば十分だろう。
「それでいうと、エフィもすごかったな」
「いえ……ま、まだまだです」
エフィはLv.1だったはずだ。あれはそのレベルで撃てる威力じゃないので、恐らくスキルの力なんだろうが。詠唱が口ごもったりしていたところもあるが、それでも初心者としては十分だろう。
あとは……
「クラン、あの回復魔法」
「うむ、明らかに射程が伸びておるのう」
やはりそうだった。俺とクランの位置はそれなりに離れており、この前までだったら届かなかった距離だ。それが届くようになっている。
恐らく、あのケープローブと、槌につけられた魔石の効果だろう。やはり、装備がいい感じだ。俺の方もかなり動きやすさを感じる。
「そっちの盾の使い心地はどうじゃ?」
そう言いながら、俺の持っている盾を近くで見るクラン。
「ああ、いい感じだった。持ちやすいし重量もちょうどいい」
俺はそう言いながら、軽く振ってみる。あ、近くにクランがいるの忘れてた。
「うお、あぶな……ぶっ!」
「「痛ったぁ!!」」
俺は何とか、腕の力で急ブレーキをかけるが、こつんとクランに当たってしまう。だがしかし、そこは九十キロ近くある盾、小突いたたけでもかなりの威力だ。痛覚共有でその威力を実感した……めっちゃ痛い!
「だ、大丈夫!?」
「大丈夫ですか!?」
エフィとヒビキさんが俺たちに近寄ってくる。しかし、唯一アメイだけいつも通りのように呆れている。
「戦闘中は平気そうなのに、そこは痛がるんだな」
共有で食らう痛みはちょっとだけ違うのだ。あと油断してた。
「とにかく……問題はなさそうだ」
俺は腹を抑えながら、そう言う。新パーティも、新装備もいい感じだ。盾の扱い以外は。
読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。




