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三月羅針譚~盾持ちと吸血鬼~  作者: FOXtale
二章 ■■にあつまれ
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どうも、作者です。三十七話です。

「――んで、今日も街巡りすると」


俺たちはアメイと朝食をとっていた。ここ最近は、今日の予定の報告も兼ねてアメイと朝食をとるのが日課になっていた。


そのため、こうしてクエストに行かない日でも会うことが当たり前になっている。昨日も、装備の件と、それに伴ってしばらくクエストに出られないことを話していた。


「うむ、昨日は何だかんだで半分くらいしか巡れんかったからのう」


この街、思ったより広いし複雑だ。初めて来たときから思っていたが、とにかくまとまりがない。道も大通りを除けば、入り組んでいる。昨日も二人で何度か地図とにらめっこしていたぐらいだ。


「まぁ、この街は慣れてないととにかくわかりにくいからな。ギルド本部に行くこと以外を想定されてねぇ道づくりしてるし」


やっぱりそうなのか。ギルド本館だけは、大通りの道をまっすぐ進めばたどり着くように設計されているんだろう。逆を言えば、他の店などの類に関しては、後からどんどん適当に建てられていったんだろうな。


「俺だって裏道なんかは全然把握してないからな。困ったら、跳んで建物の屋根を伝った方がいいだろうな」


出来たらだけど、と付け加えるアメイ。まぁ、この世界ならできる人がいてもおかしくないな。


「それで、今日はそれでいいだろうが、明日はどうするんだ? 流石に明日まで観光はできないだろ」


「うむ、それなんじゃがこいつに料理でもふるまってもらおうと思ってのう」


昨日も話していたが、俺が料理を作るというものだ。クランが興味を持ったのもそうだが、俺も久々に手料理をふるまってみたい。この世界に来てから作ってなかったしな。


「お前料理できるのか」


アメイは意外そうな顔で言う。まぁ、実際いつも意外だといわれる。やはり、ガタイがでかいとそう言うの苦手そうに思われるのだろうか。別にそんなことないんだが。


「こやつ、普通に手先が器用じゃからのう」


「攻撃以外何でもできる男」


その言い方はひどくないか? 実際、攻撃力は低いが。いや、魔獣限定だ。人間相手には結構強いんだが……。それって誇れることか?


と、そんな自問自答は置いといて、意外と言えば、アメイも普通に料理ができる。ダンジョンの中や野営中なんかにさらっと料理を作っていたくらいだ。クイックサポーターは料理ができるのが当たり前らしい。


やはり冒険中なんかに料理は誰かやらないといけないしな。クイックサポーターがその役割を担うことも多いんだろう。戦闘以外はできないといけないとは、アメイが言っていたことだ。逆にクイックサポーターがいなければ誰がやるんだろうか。そういう統計があったら面白そうだ。


「というか、泉もアメイもできるのなら、できないのはわしだけ」


クランは少しバツの悪そうな顔をしている。まぁ一人だけできないと疎外感があるんだろう。


「別に、料理なんてできる奴がやればいいし、冒険者なんて大半はできねぇよ。それにおひ……お嬢だしな」


アメイは一瞬”お姫様”と言いかけて言い直す。実際、お姫様に料理ができるイメージはない。お姫様というか、王族全体だが。


「それもそうじゃがのう……じゃが、わしの友には料理ができる奴もおったぞ」


「へぇ~、そういうのするやつもいるんだな」


クランの友人という時点で、かなり身分が上の人間のことである。まぁ、クランの場合は『庭園』の人間も含めるが、今回はちゃんとした王族のことだろう。実際、俺もクランの記憶でうっすら見た覚えがある中の一人だろう。どっちかは分からないが。


「ま、とにかく、料理楽しみにしてるぜ」


アメイも楽しみにしてくれるらしい。これは俺も手を抜けないな。だが、一つ問題がある。


「それは良いんじゃが、料理できる場所ってどこかないかのう?」


そう、場所だ。調理器具もそうだが、場所がない。流石に宿屋には、調理場は備え付けてないので、やる場所がないのだ。


「それなら、ギルドでいけるぜ。ギルドの職員用のルームに調理室がある。俺から使用許可もらっといてやるよ。どうせ、他の奴にもふるまうんだろ?」


ギルドにそんな場所があるのか。だが、使用許可がもらえるんだったらちょうどいいな。実際、ハイカさんやアイカ、ソテルさんにも作れるなら作るつもりだったし。


マゼランには少し申し訳ない気もするが、また作ればいい。


「お主、よくそんなの知っておるのう」


「まぁ、そこらのギルド職員より詳しい自信はあるぜ」


確かに、ハイカさんたちと同郷で、付き合いも長いようだし、どうもギルドの仕事の一部を手伝ったりしてるらしいから、詳しくてもおかしくないか。


「もうギルド入ったらどうじゃ?」


確かに、読み書きもできるし、細やかなことは得意だから入るのは簡単そうだ。


「嫌だよ、毎日同じ時間に出退勤する仕事なんて。俺は好きな時に酒が飲みてぇんだ」


「うーむ、わかる」


「わかるんじゃない」


それは流石に理由としてどうなんだ。


「あと……俺は冒険者だからな」


そういえば、冒険者とギルド職員は兼任できないんだったか。実際ソテルさんも、元冒険者だったみたいだが、俺たちを助けてもらったときの感じ的に腕が衰えて引退したとかではないのだろうし。


それに、ギルド職員になってアメイに抜けてもらうのは俺性質的にも困るな。


「それもそうじゃのう」


「ま、明日楽しみにしてるぜ!」


そう言って、席を立ちあがるアメイ。なんだかんだ言って、アメイはクエストに積極的だ。今日も一人でやれる簡単なクエストに赴くようだし。本人曰く酒代が足りないからと茶化していたが、やっぱり冒険者業に誇りがあるんだろう。


「じゃ、俺たちも行くか」


「うむ」



俺たちは今日も地図とにらめっこしながら、街巡りをしていた。色々な場所があったが、大変だったのはマル秘スポットと書かれた場所だな。どんな場所かと思ったら、娼館だった。うん、まぁあってもおかしくないよな、とは思ったが。クランもいる手前、気まずくなったのだが。


「なんじゃ、娼館か。面白いことはなさそうじゃのう」


と、さらっと流された。幼い姿に騙されるが、そういえばこいつ三百歳だし、そこらへんはドライなんだろうか。


――と、色々巡って俺たちが最後に来たのは、ギルドの資料館だった。何でも、今まで攻略されたダンジョンや、近辺で出現した魔獣の情報を展示してるんだとか。マゼランの地図にも面白いと書かれていた。


資料館の大きさはかなりのもので、資料館というより現代日本だと、博物館なんかを思わせるほど大きい。ギルドに次いで二番目くらいの大きさだ。


俺たちは中に入る。ギルド職員が受付をしていたが、冒険者資格を見せることもなく、あっさり通してくれた。誰でも無料で入れるらしい。


ただ、俺たちが入るとき、スタッフは必要かと聞かれた。どうやら、文字が読めない人用に、専門のスタッフがついてくれるらしい。いても面白そうと思ったが、つけなくても解説の人が中で普通に歩いているらしいので、断った。


中には、なんと魔獣の剥製があった。すべての魔獣ではないようだが、それでもかなりの数だ。大きさの理由はこれか。


剥製の下には、説明が載ってあり、それをみることで魔獣の特徴が分かるようになっていた。何のためにこんな形にしているんだろうかと思っていたが、要は攻略情報だ。そのための場所か。


「ほう、Aランクの魔獣か、やはり強そうじゃのう」


クランが見つけたのは、ハグテンダーというAランクの魔獣の剥製だ。見た目は、ヴァルガーと同じ狼型の魔獣だが、ヴァルガーより、二回りほど大きくがっしりしていて強そうだ。


Aランクになれば、こんな魔獣と戦うんだろうか。用心しておかねば。


と、今度はダンジョンコーナーに行く。そこには、ダンジョンの見た目が写生されたであろう紙と、そのダンジョンで出現した魔獣や最奥の魔獣、いわゆるボスの情報が載っていた。流石にボスの絵はないらしい。まぁ、攻略者ぐらいしか情報を持ってないし、仕方ないか。


「……あ! 貴方たちは!」


そう言って、ダンジョンコーナーにいたギルド職員に話しかけられる。


「うむ?」


「ダンジョン暴走を止めたお二方ですよね!」


どうやら、俺たちのことを知っているらしい。


「そうだが」


「やっぱり、まさか来ていただけるとは! お二方のことはギルドでは結構話題になっているんですよ! 主にアイカちゃん経由で」


あぁ、アイカか。確かにアイカなら広めそうだな。俺たちは納得してしまう。


「何とも気恥ずかしいのう」


「いえいえ、実際すごいことですよ! なんとこの資料館にも展示予定です!」


そうなのか。まぁ、あれも立派なダンジョンか。それに、ダンジョン暴走をした例でもあるし、取り上げられてもおかしくないか?


「そこでなんですけど……展示するにあたって、お二方の名前を載せてもよろしいでしょうか?」


名前が載るか。つまり、この資料館がある限り、俺たちの名前は残り続けることになる。俺は別に構わないが。


「どうする?」


「ふむ……良いぞ! 名前はクランと泉と、しっかり載せてくれ!」


少し、クランは正体がばれるのを懸念してか考えていたが、まぁ、ファミリーネームなんかを載せなければ大丈夫だろう。


「ありがとうございます!」


その後も、その職員さんに色々聞きながら、資料館を楽しんだ。ついでに、名前の許可のお礼にと、この資料館の横で売っているという飾りをくれた。所謂お守りらしい。


――俺たちは、軽やかな足取りで宿屋に戻る。


「この街、中々いいところだな」


「うむ、愛着も湧くというものよ」


この二日で、ダンジョン街のことはずいぶんと知れた。俺たちの名前が残る街、か。なんだか変な気分だな。


アイカやハイカさんにも、今日会ったことを話したいな。アイカなんかはすごく喜んで聞きそうだ。


俺はそれで思い出す。そういえば、


(”ギルドの怪物”について、アメイに聞くの忘れてたな)


恐らくハイカさんのことであろう、”ギルドの怪物”という異名。それについて聞くのを忘れていた。


(まぁ、明日聞けば良いじゃろう。本人もおるし)


それもそうか。明日会うのだ。でも本人に聞いていいんだろうか? まぁ、アメイに聞いてからでいいだろう。


明日は、俺にとっていろいろな意味で忙しい一日になりそうだ。

読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。

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