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三月羅針譚~盾持ちと吸血鬼~  作者: FOXtale
二章 ■■にあつまれ
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都市観光

どうも、作者です。三十六話です。

「――うーん、こんなところあったんじゃな」


俺たちは、ダンジョン街を見下ろしていた。その景色は中々壮観で、見応えがある。相変わらず、街の建築物には一切統一感がないが、だからこそ、どこを見ても飽きない。


『シゲン』展望台。俺たちが入ってきた門や、普段泊まっている宿屋とは真反対にあり、普段から監視塔として使われている建物らしいが、上の監視部屋以外は開放されているらしい。


だが、こんな所があるとは知らなかった。確かに、ちらちらと塔自体は見えていたが、気にしていなかったな。


「あいつ、本当によくこんなところ知ってたな」


「普通は入れるという発想にも及ばんな」


実際、この塔に入れるかどうかは、下の衛兵に聞くまで半信半疑だったが、聞いてみればあっさりと大丈夫だと、言われたぐらいである。


それにしても静かな場所だ。活発で景色を楽しむという発想が基本ない冒険者にとっては、こんなところは無縁だろう。だからなのか、周りにほとんど人はおらず、いつも騒がしいダンジョン街にありながら、この場所は静かだった。


「ここで本を読むのもまた一興じゃのう」


確かに、静かだからいいかもしれない。この街には図書館などはないようだし、普段は宿屋の一室でわざわざ音の遮断魔法をかけているぐらいだが、この場所ならそれもいらなさそうだ。


さて、俺たちは装備ができるまでこうして街観光をしていたが、思ったよりいろんな場所がある。ここみたいに静かな場所もあれば、マゼランの地図に描かれていた、


”ダンジョン街の雰囲気にしてはあまりにバチバチな場所”


なんて書かれていた場所に行ったら、本当にすごいピリピリした雰囲気の場所だった。理由はシンプルで、いわゆる、道具の換金所で、どこもかしこも値切り交渉がすさまじかった。


特に商人同士で、うっすら笑みを浮かべながら机に向かいあいながら喋っていた時はそれはもう恐ろしい雰囲気だった。どこも金が絡むと怖い。


(さて、今度はどこに行こうかのう)


俺たちは、展望台の中でマゼランの地図を広げる。クランがあちこち目を移している中、俺は完全に一か所にしか目が行かなかった。


「うーむ、お前の腹が限界そうじゃな」


そう、俺はもう腹が減って仕方がなかった。こいつが日光の下で動き続けるのは、俺のエネルギー消費量が半端ない。


ということで、俺は早歩きでマゼランのおすすめの食事処に向かう。というか、マゼランはこの地図に行ったいどれくらいの情報量があるんだろうか。いたるところに補足やメモ書きがなされているのに、異様に読みやすい。


普段の言動と行動が変なだけで、普通に優秀だよな。言動と行動が変なだけで。


と、もう着いたか。ここは確か……肉屋である。ステーキがメインだが、肉そのものもそこそこいい品質だが、付け合わせの芋と、何よりソースが上手いと書いてあった。こうして思い出すだけで涎が垂れそうだ。


(お前、ちと早いわ! もうちょい加減せぇ!)


(おっとすまん、腹が逸って)


俺はクランに合わせて歩調を合わせる。もうこいつのこと抱えて連れていくか。


(まぁ、気持ちがわからんでもないが。というか街中でそれはやめろ)


クランにも俺の空腹が伝わっているせいだろう。基本的に、契約してからエナジードレインを切ることが無くなった。簡単な話、こいつの空腹が俺に伝わると俺のそれより飢餓感が強い。思ったより吸血鬼の空腹は大変そうだ。


そのせいか、逆にクランの空腹耐性が強いため、こうして俺のが伝わっても案外大丈夫である。


さて、そろそろついた。


「――調子乗ってんじゃねぇぞてめぇ!」


すると、店の近くからそんな声が聞こえてくる。はぁ、絶対面倒な奴だこれ……無視だな。


俺は、喧嘩で人だかりができている横を通り過ぎようとする。しかし、クランは面白そうだとそっちへ行ってしまった。しかし、こっちは腹が減ってそれどころではない。


クランはいつの間にか最前列までいって、ヤジを飛ばしている。こいつ……マナーが悪いのは後で叱るとして、とりあえず飯を……


俺はクランの視界越しに殴り合いが見える。周りもヤジを飛ばす中、二人の殴り合いは白熱していた。片方の一発がクリティカルヒット。もう一方は倒れてしまった。


「それは……てめぇの方だろうが!」


そう言って、ダウンした相手にもう一発ぶちかまそうとする。流石にそれは――やりすぎだ。


(クラン)


(うむ)


『『交換(チェンジ)』』


俺はクランと入れ替わり、その一撃が届く前に受け止める。


「やりすぎだ、決着はついただろ」


「あ!? てめ、いつの間に、お前もやんのか!?」


いや、そんなつもりはないんだが。


そう言おうとした瞬間、右ストレートが飛んでくる。顔面に一発、ちょっと痛い。はぁ、これは言葉で止まる相手じゃなさそうだな。


(痛い! 泉、やれぇ!)


おっと、うちのお姫様にも俺のダメージが共有されてしまった。やっぱり痛覚まで共有されるのは不便だな。さて、荒事は嫌いだが、俺も空腹で理性が緩んでる。


「かてぇ! だが、もう一発――あ?」


俺は勢い任せに殴ってくる相手の拳を左手で掴み、体をねじりながら右肩を利用し、相手の体を浮かせる。いわゆる一本背負いの形になる。とはいえ、このまま体を叩きつけるのはまずいか。俺は浮かせた男の服をつかんで勢いを殺す。しかし、完全には殺しきれなかった。


「がっ!」


まわりからは歓声のようなものが上がるが、できれば止めてくれないかな。いやまぁ、こういうのは日常茶飯事なんだろうが。


「すまん、手加減しきれなかった」


まずい、今のは煽りになったか!? そんなつもりはなかったんだが……しかし、謝ってもまた、煽りに……どうしよう。 あ――まずい。俺は咄嗟に避ける。


「くそが!? まだ――ぐが!」


後ろからやってきたのはクランである。いつの間にか戻ってきていたらしい。


「流石にやりすぎじゃ泉。と言いたいところじゃが、まぁお互いさまってやつじゃな、お主もやりすぎは良くないぞ、こうなるからのう。喧嘩するのは良いが、精々殺し合いにならんようにな」


じゃああの時点で喧嘩止めてくれ。いや、殺しそうになったから俺と変わったのか。だが、


(ヤジを飛ばすのは良くない)


(喧嘩は人のコミュニケーションじゃ。止める方が野暮じゃ野暮、まぁ、命にかかわらん限りはな)


雨降って地固まる、とは少し違うか。


(そうじゃ、お前の分は頼んでおいたから、食べてくると良いわ)


そう言いながら、クランは怪我した男たちの治療に当たり始める。やることはちゃんとやるらしい。俺もいい加減腹が減ってきたから、早く食べよう。


俺は食べながら、クランの治療を見守る。旨いなこれ。やはりマゼランのセレクトは間違いない。


すると、傷を治している最中に倒されていた男が意識を取り戻す。すると、男はクランの顔を見て驚く。


「てめ……! 七番の!」


七番? 七番とは何だろうか?


「何じゃ?」


「か、勘弁してくれ! このこと、”ギルドの怪物”には話さないでくれぇ!」


そう言って、クランの元から逃げ出そうとするが、クランはけが人に負担をかけないように、最小限の力で掴む。


「まだ治療は終わっておらぁん!!」


「あ……はい」


ギルドの怪物……七番……俺たちの知り合いで冒険者が知っている。七番? もしかして七番受付、ハイカさんのことか? これは、今度聞いた方がいいかもしれんな。


まぁ、今は腹を満たした満足感の方がでかい。


「ふぅ、食った」


(相変わらずうまそうに食うのう)


(食うのは好きだからな)


エナジードレインによる空腹抜きでも、元々食うのは好きだしな。


(そういえば、作るのもできるんじゃよな)


(まぁな)


母が料理があまり得意でない上、仕事で父親がいない日も結構あったため、結果的に俺が料理を作ることが多かったから、それで趣味になっただけだが。


(ふむ、お前の料理も気になってきたのう)


別にふるまっても構わんが、まぁ町巡りをしても時間が余ってたら、作るのもいいか。

読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。

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