これから
どうも、作者です。三十一話です。
「出たぞ! お前ら!」
前から走ってくるのはアメイと、サルっぽい感じの魔獣だ。名前は確かサルプレン、じゃなかった、ソルプレンだっただろうか。等級はC、今の俺たちの適正帯の魔獣。俺たちは、その魔獣の討伐に来ていた。
本来は、上からの奇襲をしてくるそうだが、アメイが釣りだしてくれた。
(泉、やってみせよ!)
クランの言葉にうなずくように俺は、言葉を紡ぐ。
『縛れ』
『魔鎖――設置』
本来なら、『魔鎖』は詠唱した時点で発動する。しかし、鎖は出ず、現れたのはいわゆる魔法陣のようなものが、木の根っこ近くに出現する。
(下がるぞ、クラン)
(うむ)
俺はクランを抱え、アメイとサルたちから逃げるように後ろに下がる。
(さて、そろそろ)
俺はちょうどよいところで、振り向く。ちょうど魔法陣を出現したところをアメイが通り過ぎ、もうすぐサルたちが来るところだ。
あと少し……今。
『解放』
その言葉と同時に、先ほど出現した魔法陣から『魔鎖』が飛び出す。それがちょうど最前線にいたサルたちの足を引っかけ、転倒させた。
(今度はわしの番じゃ!)
『種よ、芽吹け、そして敵を打て』
『木打』
その言葉と共に、魔力を含んだ種が二つ生成され、サルたちが転倒した場所に芽吹く。クランはそのまま、サルの所まで移動する。そして、芽吹いた種は、一瞬にして木に成長し、クランの槌の振りと同時に、サルたちを殴打していく。
今までの衝撃音に、木の音も追加され、処理力は上がっている。
(どうだ?)
(うむ、想定通りじゃのう)
そのままの流れるように、クランは魔法と槌を駆使しながら、敵を処理していく。
しかし、流石に前の敵より狡猾だ。仲間が倒れる中、虎視眈々と一匹のサルが後ろからクランを奇襲する。だが――それは通じない。
クランがいるところまでたったの数歩で到達する。奇襲の一撃を盾で防ぐ。火力は低いな。この程度なら、盾でなくてもいけそうだ。
(速度も問題なし、じゃな)
クランの言う通り、問題なさそうだ。
「――うーん、お前らの無法ぶりが上がってやがるな」
俺たちは、あのサル、ソルプレン討伐のクエストを終えて、無事に帰還していた。特に傷もなく、苦戦することもなくクエストはクリアしてしまった。
そして、今はギルドに設置された食事処で三人揃って食事をしながら会議だ。
「やはりスキルの力はすさまじいのう」
そもそも今日のクエストは、スキルの試しとして、簡単にやれるものを見繕ってもらった。
今日、改めてスキルの効果を試していて実感した。前より明らかに強くなっている。
「泉の『機動要塞』と、お嬢の『治癒庭園』か」
クランのお姫様発覚から、アメイはすっかり”お嬢”呼びが定着している。朝はお姫様と呼んでいたが、バレたらまずいと思ったのか、お嬢呼びになっていた。クランの方はむずがゆそうだが。
『機動要塞』、俺がクランと契約したことで手に入れたスキルの名前、かっこいいというか、仰々しい名前である。
ステータスから、改めて『機動要塞』の効果を確認する。
『機動要塞』
・常時、防御、耐魔、速度上昇(中)
・守る対象の前にいるとき、防御、耐魔上昇(超)
・守る対象の元まで駆け付けるとき、速度上昇(超)
・魔法の設置が可能
「相変わらずの効果の多さ……」
アメイが呆れているが、実際すごい強い。常時能力が上がるうえ、割と緩い条件でさらに能力がかなり上がるというスキルである。そして、特筆するべき点は他にある。最後の魔法の設置である。
「通常、詠唱した時点で発動する魔法を、設置することでいつでも発動待機状態にできるというのはやはり便利じゃったな」
クランの言う通り、便利だ。詠唱の最後に、『設置』の詠唱を付け足すことで、魔法陣の中に閉じ込め、『解放』もしくは直接魔法陣に俺が触れることで発動する、というものだ。
純粋に汎用性が高い。欠点があるとすれば、設置した後は動かせないこと、同時に設置できる数には限りがあること、そして
「泉の魔力が低いのと、そもそも使える魔法が少ないのがな」
そう、そもそも俺の魔力は低い。だから、汎用性が上がっても、必殺にはならない。ある意味でちょうどいい塩梅である。
「まぁ、それ込みでも破格じゃろう。しかもあの魔法陣、わしとこいつ以外には見えとらんしな」
どうやら、あの魔法陣は俺とクラン以外には見えないらしい。厳密にはクランも見えないものだろうが、俺たちの魂が接続してるせいだろう。
「どっちかというと、対人戦で強そうだな、その設置」
確かに、奇襲にはもってこいである。あまり人相手に使いたくないものだが。まぁ、これから、いざこざがあった場合に役立つか。
「あとは……クランの『治癒庭園』だな」
『治癒庭園』
・『植物魔法』使用可能(メインレベルに応じて習得可)
・治癒魔法に超高補正
・回復魔法、植物魔法詠唱時、魔力上昇(小)
「やはり、わしにふさわしいスキルじゃのう!」
実際強いから困る。純粋に回復力が上がったのもそうだが、この『植物魔法』も強い。今までクランが使えなかった攻撃魔法のレパートリーが増えた。
クランの方はしっかり魔力が高いので、純粋に強い。
「いや~、ここまで強いとサブのタンクやヒーラーなんていらないな。何だったら、それぞれが二人分……いやそれ以上の働きは普通にしそうだなお前ら」
アメイや、ハイカさん曰く、レベルが上がるにつれて、補助役になるサブメンバーを増やすそうだ。多分それのことを言っているのだろう。
「んまぁ、討伐も楽々だったわけだし、スキルの確認もメインはすんだ、お前ら、これからはどうするんだ?」
アメイは今日のクエストの総括をそう締めくくる。実は他にも変わった部分はあるが、メインの確認はすんだし、そんなところだろう。
いわゆる、予定、目標の確認が今日のメインだ。俺たちは、ある種成り行きでダンジョンを攻略した。もちろんこれからもダンジョン攻略はしていくだろうが、流石にすぐとはいかないだろう、改めて準備も必要だ。
「それなんだが、しばらくは休憩の方がいいだろ、正直、体がレベルになじんでない」
俺たちはレベルが急激に上がった代償で、動きがずいぶんとぎこちなくなってしまった。
今日くらいの魔獣ならいいが、またダンジョンでイレギュラーが起きた場合、多分そううまくはいかないだろう。
「それに、あのコンパスやらの”鑑定”もしときたいしな」
実は、まだダンジョンの戦利品の換金はすんでおらず、特にボスからドロップした籠手とコンパスに関しては、未だ価値が未知数である。
「そういえば、”鑑定”ってどこでやるんだ?」
「基本はギルドでできるぜ、何より一番信頼できるんだが……順番待ちでいつになるかわからない」
なるほど、流石はダンジョン街、一日にいくつの品が持ち込まれているか分からないしな。
「時間がかかるのか……他に方法はないかのう」
「ま、信頼できる鑑定士がいれば、そいつに頼むのが早いんだが……」
「そんな方……ここにいますよ♪」
俺の脇から、マゼランが首を出す。
「「「うわああああああ!」」」
またもや唐突に現れたマゼランに三人揃って驚く。
「いやはや、本当はもっと早くお三方の所に駆け付けたかったのですが……商売の方が忙しく! ですが、お二方が無事でよかったです! まぁ、最初からあまり心配していませんでしたが」
芝居がかった声と仕草でそんなことを言うマゼラン、しかし俺たちが聞きたいのは唐突に現れたことなんだが。
確かに、俺たちがダンジョンに潜って以来だ。
「とにかく、”鑑定”なら私にお任せを♪ と言いたいところなんですが、今日は別件があるので……今度来てくださいね~!」
そう言って、ギルドの奥に消えていくマゼラン、あいつ本当になんなんだ。というか、あいつ店持ってない露天商なのにどこ行けばいいんだ?
「ま、まぁ”鑑定”の方は、なんか解決したが……いやしたかのこれ?」
「俺に聞くな」
マゼランのことは本当にわからん。
「と、ともかく! ダンジョンに潜るのはしばらくなしということで……わしが別の目標を考えてきた!」
クランが立ち上がりながら、胸にどんと手を当てそう言う。おぉ、ちゃんとそんなことまで考えてたのか。いや、こいつ、さっきからそわそわしてたのはそういうことか。
「お、なんだなんだ」
アメイも意外だったのか、割と期待に満ちた声で言う。
「わしは、ダンジョンで実感したのじゃ……圧倒的に火力が足りないと」
「うんうん……うん?」
何だろう、こいつ、それを威張って言うのは良いが、それってつまり……
「今のパーティ構成はカスじゃ! つまり、パーティメンバーを集めるぞ!」
「それって俺が前から言ってたことおおおお!」
アメイの盛大なツッコミが入った。
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