異世界人の見分け方
どうも、作者です。三十話です。
もう三十話かと言うべきか、まだ三十話というべきか、どのみち先は長い。
ギルドマスター、ソテルさんの執務室、そこに、ソテルさんとハイカさん、そして俺、クラン、アメイの五人だ。
集まった理由は色々あるがやはり一番は、
「どの時点で俺が異世界人だとバレたか、だな」
これである。どうも前々からバレていたようだが、どの時点でバレていたのかが分からない。そこをわからないと、これからの身バレ対策もできないのだ。
「まぁ、いつからかと言われると……アイカを助けてもらった時点ですね」
「最初だと?」
流石に予想外だった。ハイカさんとアメイにばれている時点でアイカにもバレているとは思っていたが、まさか最初からだとは思わなかった。
「ステータスを見てとかならわかるが、どうやって?」
実際、俺が異世界人だとクランに即バレした理由は、俺がステータス画面を初めて見たのが、その日だったからだ。この世界の住人で、俺の年になるまでステータスを開いたことがないというのはあり得ないらしい。
あのステータス、どうも文字が読めない人間ですら、脳内に直接意味が伝わる謎仕様があるらしいから、最悪赤子でも理解できるらしいし。
というか、意外なことに声を上げなかったのはクランの方である。クランはやはりか、という方に嘆息していた。
「クラン、お前、理由分かるのか?」
そう言うと、クランはうなずく。
「推測じゃがな。恐らく、言語じゃ」
言語? 俺の言葉が理由で?
「どういうことだ?」
「わしもつい最近理解したが、恐らく『翻訳』の仕様じゃ」
『翻訳』、俺が持っているスキルだな。恐らく異世界人は全員持っているだろうそれは、新も持っていた。俺たちはこの世界の言語が分からないから、その処置として、女神が持たせているものだろう。
『翻訳』は万能だ。俺の発する言葉はすべて相手の知っている言語に置き換わり、逆に相手の言葉は俺にはすべて日本語で聞こえる。そういうスキル。
そしてクランは最近分かった? つまり、分かるきっかけがあったということ、それがあるとすれば……あ、いや、俺もあった。何せ最近俺はこの世界の言語が少しだけわかるようになった。
「そうか、クランは俺の記憶から」
「そう、日本語を学んだ。ちょっとだけじゃから、未だにお主の言葉は魔族の言葉に聞こえるがの」
つまり、『翻訳』スキルは、
「日本語さえ知っていれば、日本語に聞こえる?」
「そういうこったな。俺たちからすれば、泉は最初から日本語で喋ってた。逆を言えば、日本語をしゃべってる時点で」
「異世界人、という訳か」
なるほど、からくりが分かれば簡単なことだ。『翻訳』スキルは知っている言語で翻訳される。つまり、日本語を知っていれば、日本語でそのまま出力されるのか。
「私たち姉妹と、そこのアメイは日本語が分かるので、日本人だとわかる、というわけです」
「ちなみに、俺は分からないよ」
そうソテルさんが付け足す。なるほど、そうだったのか。だが、何で三人は分かるんだ?
「それは、あり得んはずじゃ。日本人と話しても、日本語は習得できん。何せ全部『翻訳』されるからのう、わしのように、直接記憶を読み取ったならわかるが」
その通りだ。すべてスキルで『翻訳』される以上、どう足掻いても、言語の習得など不可能だろう。
「記憶を読み取った、とかの話もあとで聞かねばですが……とにかく、そっちの解決からですね。簡単ですよ。それは、私たちがすでに言語を習得している場合の話です。逆を言えば、言語を習得していなければ?」
「そんなの……いや、そうか、”赤子”のころか!」
俺は、クランの言葉で理解する。そうか、生まれたての赤ちゃんには、言語機能がない、周りの喋り声を聞いて覚えるのだから。なら、その赤子が聞いている中に、”日本語”があるとするなら?
「『翻訳』スキルでは、言葉が分からない赤子のころには、日本語はそのまま聞こえる、そして、そのまま覚えることが可能、というわけです」
「んで、俺とハイカとアイカの姉妹は、同郷だ。ここまで言えば分かるだろ?」
つまり、三人が生まれ育った場所では、日本人がいた。
「これが、泉さんの正体を見破ったからくりです。そして、知ってなおこの方法は対策できないので、同じような人間がいたらもうバレてると諦めてください」
「ま、つってもそうそういないと思うがな。今のところ、俺たちの村出身以外で、日本語が話せるってやつは見たことないし。何だったら、俺たちと同じ村に住んでても、昔違うところにいたってだけで分からなくなるしな。あと日本語以外はわかん」
そうか、本当に赤ちゃんの頃から聞いていないと、日本語は分からない、つまりかなり限定的な裏技だ。ということは俺たち異世界人を除けば、日本語話者はせいぜい数百、何だったらもっと少ないのだろう。
「とにかく、これが私たちが泉さんの正体を知った方法です」
うん、これはどう足掻いても対策不可能だ。しいて言うなら、俺がこの世界の言語を覚えることだが、それもまた、ほぼ不可能だ。一応、クランの記憶を読み取ったことで、多少わかるが、それでも日本語に『翻訳』される以上、これ以上覚えるのは不可能だろう。
「にしても、日本人がいた郷、か。お主たちの年齢から推測すれば、誰かわかるのはたやすいが」
そう、クランは言う。どうもクランには、アメイたちがいた日本人の正体がなんとなくわかっていそうである。しかし、それを聞こうとしたところ、
「その話はまた今度にしようか。何せ今度はこっちの番だからね」
そうソテルさんが遮る。そう今日の話し合いは、俺たちが聞く側であると同時に”聞かれる”側である。
「さて、クランちゃんとイズミ君が”やったこと”と、クランちゃんの”正体”、教えてくれるかな?」
少しだけ、圧が強くなる。まぁ、俺たちがやったことを考えれば、それなりに重大なのは間違いない。
(お前から話してくれんか?)
萎縮したクランからそう言われるが、
(バカ言え、”契約”はともかく、”正体”はお前の口から言え)
(くっ!)
クランは、ため息をつき、
「実はのう……」
俺たちがした”契約”、魂の接続、あるいは共有の内容と、そうなった経緯を話す。そして、クランの身分、それは、
「わしは、吸血鬼。そして、その吸血鬼たちの頂点者、”魔王”の娘じゃ」
こいつが”魔王の娘”であることである。俺は”契約”時にしったが、その時は驚く余裕がなかった。
その情報に、三人はそれぞれの形で頭を抱える。ハイカさんは頭痛を抑えるように額に手を当て、ソテルさんは目を手で覆い天を仰ぐ。アメイは座ったまま、頭を膝の間に埋めてうなだれている。
「泉さんも泉さんですが――クランさんもクランさんですね……!」
「流石に僕も予想外だなぁ……!」
「喋り方的に”貴族”までは予想してたが……!」
うん、人ってこういう時、こんな反応になるんだな、とつい冷静に考えてしまう。
「やっぱり、やばいことなのか」
「「「やばいとかのレベルじゃなねぇよ/いです/いねぇよ!!」」」
だよな、明らかに魔王はやばいよな。
「まぁ、安心せい、こやつとの”契約”はともかく、基本的には他の吸血鬼とそう大差ないわ!」
そう言うと、一番最初に持ち直したのはハイカさんだった。というか、あの契約、やっぱり特殊なものなのか。まあ気軽にできたらダメか。
「はぁ……もういいです。私も……いえ何でも。そうですね、魔王の娘であって、”魔王そのもの”ではないですから、基本問題はないですね、ちなみにその、貴方の父親は」
ハイカさんはそう冷静に分析する。流石は種族不問、身分不問のギルド、セントラルフラッグである。
「安心せい、わしの居所がわかっても飛んでくるようなことはせん」
どうも、魔王本人がいることがまずい、と言った感じか。やっぱり、この世界の事情はまだ分からないな。
「がっはっは! ま、問題はなかろうて! 魔王が”直接”来るようなことがなければ、わしらは普通に冒険者ライフを過ごせばよい!」
「契約の方も問題だけどな……」
いつの間にか持ち直したアメイもそうツッコむ。まぁ、そこらへんは俺たちの問題ではある。まぁ、クランの言う通り、危機は去ったのだ。これからは普通の冒険者ライフができるだろう。あ、いや未来さんの件もあるか、そこも追々クランと話していかなきゃだな。
――そう思っていた時期は、ここから数日と保つことはなかった。これから、俺たちは様々な問題に巻き込まれることになる。
「あ、えっと、魔王です……。」
これを筆頭に、それこそ、様々な。
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