戦利品
どうもFOXtailです。二十九話です。
今回から二章『■■にあつまれ』開幕です。どうぞよろしくお願いします。
「もうお姉ちゃんなんて知らない!」
「ハイカ!」
ハイカは扉から出ていく。行くところは、わかっているから問題ない。
……こんな時まで、あの子の心配を優先してしまう私は、やはり良くないのだろう。私は、あの子を守ると決めたのに――いや決めてしまったからこそ、あの子の期待に応えられない。
私は、あの子のために、どうすればいいのだろうか。部屋の隅に置いてあるその剣を抱きながら、今の自分について考える。
「お父さん、私は、どうすればいいんでしょうね……」
――俺は目の前に置かれた食事をひたすら口の中に放り込んでいた。
「泉さん! たくさん食べてね!」
「ああ」
食事を運んできていたのはアイカだった。俺たちが帰ってきたのが相当にうれしいのか、すごいニコニコしていた。
「んふふ、本当に泉さんとクランさんが帰ってきてよかった」
アイカの言う通り、俺たちはあのダンジョンから帰還できた。といっても、俺は脱出した記憶はないのだが、どうも、ソテルさんと
「ん、アイカ、あんまり張り切りすぎるなよ」
今扉から現れたアメイが運んでくれたらしい。
「もう、分かってるよ!」
どうやら、ダンジョンから脱出したアメイはその後、ダンジョンまで全速力で向かい、ソテルさんを呼んできたらしい。つまり、俺たちが助かったのは、ある意味でアメイのおかげという訳だ。
アメイは、ベッドの隣の椅子に座る。アイカとは反対の位置だ。その表情は暗い。
「……すまなかった」
アメイは、そう一言謝る。俺たちを置いて逃げたことを、謝っているんだろう。しかし、それは
(どちらかというと、わしらの責任じゃろうが!)
(クラン、急に共有してくるな)
五感を共有しているクランは、俺の視界と聴覚越しに会話を聞いていたのだろう。そう激怒する。ただ、クランの言う通りだ。
あの時、アメイの言葉を振り切ってボス討伐に行ってしまったのは俺たちの方だ。俺たちの生存だけを考えれば、アメイの言葉は正しかったのだ。
「アメイ、正直、俺たちはその謝罪を受け入れる権利はない、だって、謝るのは俺たちの方だ。クランもそう言ってる」
「クランも?」
一瞬、不可解な言葉に困惑しながら、アメイはその言葉で苦い顔をする。それでも、罪悪感は拭えないんだろう。とはいえ、互いに、ここは譲れない。
「――んー、もう! どっちも譲らないなら、私が代わりに怒るよ!」
そこまで、黙って不満そうな顔をしたアイカは、椅子から立ち上がって、両手を上げて不服のポーズ? をする。そして、俺に人指し指を立てながら、言葉を続ける。
「泉さんとクランさん、アメイの意見を聞かずにボス討伐に行ったのは、すごく! とーってもかっこよかったけど、死んじゃう可能性が高かったんだから! あんまり危ないことすると、私が泣いちゃうよ!」
そんな、少し自分勝手なようで、思いやりにあふれたその言葉に、しゅんとするクランを感じる。そうだな、アイカには随分と迷惑かけてしまった。
「すまん」(すまんのう)
俺は、素直に謝罪する。一応、その場にいないクランも謝罪をする。そして今度は、アメイの方に向き直す。
「アメイは、二人を置いていったのは良くないね! 私とお姉ちゃんが、アメイに託したんだから、ちゃんと最後まで一緒にいるべきでした!」
アメイは、その言葉に少し辟易しながら、しかし、その通りだなというように小さく笑って、頭を下げる。
「すまんな」
俺たちの謝罪に、アイカは満足そうにうなずく。そして、パチッと両手を叩く。
「はい、これで喧嘩両成敗! それに、三人とも、責めるんじゃなくて、褒められるべきだよ。泉さんとクランさんのおかげでたくさんの冒険者が助かって、アメイのおかげで二人は助かったんだから」
俺とアメイは、目を合わせて、互いに笑いあう。そうだな、危ないことはあったが、結果的に最良の結果を得られたのだろう。なら、確かにそれでいい。
場には和やかな雰囲気が流れる。
(そうじゃ! 泉、今のうちに、アメイに言っておけ!)
すると、クランからそんな言葉が飛んでくる。そうだな、言っておくべきだ。
「アメイ、これからも俺たちと――冒険してくれるか?」
その言葉に、アメイは一瞬驚いて、少し呆れて、そして結局笑う。
「はぁ、てめぇらに解散だって言われたら、そうするつもりだったんだがな――ああ、ついていってやるよ。お前ら危なっかしいからな、これからも支えてやる」
「ああ、お願いする」
俺たちは、正式にパーティを組むことになった。
アイカはその姿にずいぶんとうなずいてる。うれしいのだろう。
そこでノックの音が聞こえる。といっても、誰が来たのかはクラン越しに分かっているのだが、
「泉さんすみません」
ハイカさんだ。ハイカさんが、俺をギルマスの執務室までの案内役としてきたのだ。
実は、ソテルさんとハイカさんの二人とクランは話していた。ダンジョン攻略の処理など、色々と事務処理をやっていたのだ。それと同時に、俺たちの正体を知っている件に関しても話す必要があるということで。
とはいえ、その件は肝心の俺が寝ていたのと、飢餓感で動けなかったので、それが収まるまで待っていたということだ。
「あ……お姉ちゃん」
何か、ハイカとアイカの間で気まずい雰囲気が流れる。あんなに仲が良かった二人に、何かあったのだろうか。
「泉さん、あっち行っちゃうの?」
あっちとは、ソテルさんの所だろう。俺は、うなずく。アイカは少し残念そうな顔をしながら、作り笑顔を浮かべる。
「それじゃ、私はお仕事に戻るね!」
アイカは有無を言わさず、出ていく。俺は、ハイカさんに何があったのかという視線を送るが、困り笑顔でそらされてしまう。
「ま、姉妹喧嘩くらいするだろ」
そう言って、立ち上がったアメイ。どうやら、アメイも着いて行ってくれるらしい。
そうだな、アメイの言う通りだ。兄弟姉妹なんて、喧嘩して仲を深めるものか。まぁ、たまに深い溝になるが……それもまた一興、というやつだ。
「そうだな」
「――お、来たのう!」
来るのは分かっていただろうに。まぁいい、その部屋は、執務室というには簡素な部屋だった。広さこそあるものの、作業机の前には、来客用の机とその両隣にソファが備え付けてある。割と想像通りの執務室だ。
俺はクランの隣に立ち、アメイもこっち側、ハイカさんはソテルさんの隣に立った。
「はっはっは、アメイはもう完全にそっち側だね」
「まぁ、そっすよ」
そんなやり取りをする二人、やはりここも、親しい仲らしい。
「さて、じゃあ色々と話し合いをしようか――その前に、二人にこれを渡すよ」
そう言って、ハイカさんが机の上に置いたのは、二つの品だった。一つは籠手、もう一つは、
「これは、金のコンパスか?」
見た目は、懐中時計型の、金コンパスだ。
「うん、のダンジョン攻略の報酬だ。あの魔獣のいたところに落ちていたから間違いない」
どうやら、ダンジョンは攻略されると、中の魔獣が自浄作用で、灰のようになって消えていくらしい。しかし、ボス魔獣が討伐されると、死体の代わりにこういう報酬を落とすのか。面白いな。
「とにかく、あのダンジョンを攻略したのは間違いなく君たちだ。だからこそ、この報酬は君たちにこそふさわしい」
「ま、そういうことなら、遠慮なく受け取っておくとするかのう」
そうだな、俺たちが攻略した、というのはあまり実感はないが、もらえるものはもらっておこう。
「それと、ランクCおめでとう」
そう、もう一つ、得たもの、厳密には上がったものだが、それはレベルと冒険者ランクである。そう、どうもあのダンジョン、ダンジョン暴走によってボスのレベルは圧倒的に俺たちより高くなっていたらしく、そのせいで経験値がかなり溜まったらしい。
小山泉 所属:セントラルフラッグ 職業:シールダーLv.38/エヴィターLv.34 種族:人間
攻:20 防:235 魔:37 耐:177 速:135
スキル 翻訳/再生/盾持ちLv.3/機動要塞/守癒の契約
クラン 所属:サンリグノ/セントラルフラッグ 職業:ヒーラーLv.38/バスターLv.37 種族:吸血鬼
攻:127 防:23 魔:206 耐:58 速:25
スキル 夜行Lv.3/速読Lv.44/治癒師Lv.2/破槌者Lv.3/治癒庭園/吸血姫/守癒の契約
「やっと、イズミ君の能力が異世界転移者らしくなったねぇ」
実際、今までよりぐっと強そうに見える。というか、俺のスキルの名前『機動要塞』なのか。なんかかっこいいな。そして、あの契約もスキルとして現れている。
だが、問題は
「クランさん、隠さなくなりましたね」
「隠す必要が無くなったからのう」
そう、はっきりと、クランのステータスには、吸血鬼と書かれていたのだ。まぁ、ただの”吸血鬼”じゃないのだが、
「ま、それも含めて、色々と話し合っていこうか」
さて、色々と秘密が明かされるな。
読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。
二人のステータス比較用
小山 泉 所属:セントラルフラッグ 職業:シールダーLv.21 / サブ:エヴィターLv.19 種族:人間
攻:10 防:124 魔:19 耐:94 速:72
スキル 翻訳/再生/盾使いLv.2
クラン 所属:セントラルフラッグ 職業:ヒーラーLv.21/サブ:バーサーカーLv.21 種族:人間
攻:71 防:13 魔:115 耐:32 速:14
スキル 夜行Lv.2/速読Lv.44/治癒師Lv.1/槌使いLv.2




