赤月の夢
どうも、作者です。二十八話です。
これにて、一章『はじまりの契約』、終了です。
……ここは? 確か、俺はあのトカゲと……いや、確かソテルさんがとどめを刺してくれたんだっけな。それで、アドレナリンみたいなものが切れて、ぶっ倒れた、気がする。
正直、気絶寸前のことは意識がはっきりしていなかったから、よく分からない。まぁ、いい。それで、ここはどこだ。さっき気絶した時も、こんな空間にいた気がする。でも、さっきより意識ははっきりしているような。
「あ、あの~、すみません。喋ってもいいですか?」
!? 待て、誰かいるのか? そう思い振り返ると、そこには、見慣れない女の人がいた。
「あ、はい。女の人です」
この感じ、思考、全部読まれている?
「すいません、魂だけの状態ですので、そうなりますね......」
……。
「......」
すっごい気まずい
「わ、私もですぅ!」
えーっと、ちょっと待ってくれ、貴方は一体?
「あ、やっと本題に入れそうですね。すみません、唐突に現れてしまって……じゃないじゃない。こほん、私はこの世界の管理者の一柱、この世界ではよく、赤月の女神と呼ばれているものです。唐突ですみませんが、よろしくお願いしますね?」
……赤月の女神。確か、この世界にある三つの月には、それぞれに女神がいて、この世界を監視している、だったか?
「はい、厳密にはあの端末にいるわけではないですが、その認識で間違いありませんよ」
なるほど……えっと、なんて呼べばいいんだ。赤月の女神じゃ長いしな。
「ん、ん~、私自身、赤月の女神としか呼ばれませんし、私が司るものというと、死とか、未来とかですかね、でも、ろくな未来視もできないんですけどね……でも名前ですか、確かにあったほうがいいですね!」
急に落ち込んで立ち直られても……いやまぁいい。そうだな、死は物騒だし、とりあえず未来さん、未来様? と呼ぼう。
「様付けはやめてください~。そんなに偉くないので私! あいや、魔族の皆からすると偉いのかな? と、とにかく、未来さんでいいです! なんだか、日本人みたいですね」
確かに女神っぽくない……というか、日本を知っているのか。
「それは、ええ、貴方たち異世界人を呼んでいるのは、女神ですから。呼び出せるということは、観測できるということです。ですので、あなた達の世界のことは、西暦以降なら把握していますよ」
こっちの世界にいると西暦なんて聞かないな。まぁいいや、未来さんは、俺に用があるのか?
「あ、そうでしたね。はい、貴方と話したかったのと……謝罪に」
謝罪?
「はい、私の不手際で、貴方に苦労させてしまったこと、そして――巻き込んでしまうことを」
二つもあるのか、一気に聞くとパンクしそうだな。とりあえず、一つ目の不手際っていうのは?
「貴方のスキルが上手く開花しなかったことです。本来あなたはもっと、強いスキルを持った状態でこの大地に降り立つはずだったのですが……」
……もしかしてだが、クランと契約した時に、異常に防御力が上がっていたあれのことか?
「はい、あれは本来、この世界に来た時点で発現するはずのスキルだったんです。それが、初めてとはいえ、私が上手くあなたの肉体を構築できず……」
なるほど、俺にも強力なスキルが眠ってたのか。それはなんだか、安心したな。それに、それで怒る気はないな。それがあってもなくても、今の選択肢に後悔はしない。
「……あなたはかっこいいですね。はぁ、クランちゃんのおかげで無事に発現したわけですし、あまり謝りすぎもよくありませんね」
そうだな。謝りすぎはよくない。相手に気を遣わせすぎる。それで、二つ目の”巻き込む”っていうのは、
「そうですね、切り替えます。巻き込むというのは、文字通りの意味です。今、私達女神は、少々、争いあっていまして、確実に貴方はいつかその戦いに巻き込まれます」
それは、どうして?
「貴方が、私の眷属だからです……」
ん? 俺が未来さんの……眷属?
「はい、私もそんなつもりなかったんですが、どうもそういう扱いになっているそうでして……」
なんで?
「さっき、私が貴方に肉体を与えたと言いましたよね」
言っていたな、俺の肉体を構築したって。
「それが原因です……」
つまり、未来さんが俺に肉体を与えたから、未来さんの戦力に数えられたと?
「そうなりますね……本当にそんなつもりなかったんです」
じゃあ、なんで俺に肉体を与えたんだ?
「それはですね、本来異世界から魂を引っ張ったり、肉体を与えたりするのは別の女神の役割というか、やっていることで……ですが、貴方は魂だけ引っ張られて、肉体が与えられなかったんですよね」
つまり、俺は……本来呼ばれるはずじゃなかった?
「恐らくですが……私もあの子が考えてること、分からないので推測になっちゃいますが」
なるほど、そういえば、一緒に呼ばれた新は、勇者だったな。つまり勇者を呼ぶ過程で、近くにいた俺の魂が呼ばれたとしたら、辻褄は合うか。
そして、肉体を与えられなかった俺の魂? を未来さんが……
「見つけたので、流石にそのまま放置! はあまりに同じ女神として申し訳ないと思ったので、私が与えたところ……」
女神の眷属認定された、と。
「そういうことです」
俺は怒ればいいのか? 感謝するべきなのか、分からんな。
「いえ、怒っていただいても構いませんよ……構築ミスも起こした挙句、勝手に戦力扱いされて、もうんと謝ればいいか」
……いや、やっぱり感謝するよ。確かに、過酷なこともあったが、それ以上にいろんな人と出会って、いい思いはさせもらってる。
「……この世界は、楽しいですか?」
どうだろうな、俺の世界より過酷なことはたくさんあると思う。それに、まだこの世界に来てからあんまり経ってないし、でも、この世界でも生きたいとは、誰かを守りたいとは、思えた。
「それなら、良かったです」
そんな表情されるなら、言ってよかった。
「私も、この世界で生きる人が好きです。人らしく、彼ららしく生きる世界が……差別も、殺し合いも、起きてしまう不完全さがあっても、それを克服しようと自分らしく生きようとする、人が」
そうか。
「だから、私は……いえ、泉さん、これからもどうか貴方らしく生きてください、私の眷属だ、という自覚は別にいりません。そんなものは冤罪だ、と笑い飛ばしてくれていいです。だから、どうか貴方の旅路を歩んでください」
ああ、未来さんが、俺を呼んだあなたがそう言うのなら、そうするさ。
「あ、でも、結局巻き込んでしまいますね」
その巻き込むってことは結局、
「貴方は、確実に狙われます。相手は、貴方がイレギュラーであり、私が呼んだ存在だと確信されているので」
なるほどな。ま、それごと背負い込むさ。どうせ俺はやりたいことをやりたいだけだ。それに、多分だが、クランも関係あるんだろ?
「……そうですね、あの子も、無関係ではいられないでしょう」
なら、あいつに出会った時点で、もう変わらないさ。俺は、もうあいつを守るって決めたからな。
「あの子が、出会ったのが貴方で良かった。ふぅ……なら、改めて、泉よ、どうか貴方の旅路が健やかであらんことを……もし何かあれば、またこうして話しても構いませんか?」
構わない。俺は、こういう人付き合い、女神付き合いは嫌いじゃない。
「それなら、また会いましょう」
これは、勝手に終わるものなのか?
「えぇ、そろそろあなたの肉体が起きるころでしょうから」
そうか、じゃあまた。
「はい……あ、できれば、私と出会ったこと、クランちゃん以外には、言わないでください、というより、クランちゃんとつながっている以上、確実にばれるのですが。とにかく、他の方に言うと、私もどんな厄介ごとがあるかわかりませんので」
ああ、わかった。それじゃ、またな、未来さん。
「はい、また、泉さん」
――俺は、どうもふかふかのベッドで寝ていたらしい。
読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。
前書きで書いた通り一章これにて終わりです。次回から、二章『■■にあつまれ』が始まります。よろしくお願いします。




