誰かを守るというのなら
どうも、作者です。二十四話です。
「馬鹿かてめぇら! 本気で言ってんのか!」
「「本気だ/じゃ」」
ダンジョン暴走を止める方法、それはダンジョン攻略による機能停止。つまるところ、ダンジョンボスの攻略に他ならない。
「わかってんのか! ダンジョン暴走が起これば、ボスの強さは一段階も二段階も上がる! しかも、」
「それぐらい、理解しておるわ」
一応、俺もハイカさんからダンジョン周りの情報は聞いている。それでも、だ。
「それに、どのみち誰かが暴走するボスを抑えねばならぬ。でなければ、この階層におるものは全滅するじゃろう」
「俺たちはその中に入ってねぇだろうが!」
至極真っ当な意見だろう。俺たちだけなら、この階層から抜け出せる。だが、それじゃだめだ。それでは誰も、守れていない。
「俺は……俺は知らねぇ! そこまで言うなら、てめぇらだけで勝手にやりやがれ!」
苦悶に顔をゆがめるアメイ、本当に迷惑をかけてしまっているな。こればっかりは俺たちのわがままだ。何より、きっと正しいのは、アメイの方で。
「ああ、それで良い……。すまぬな」
「なんで……お前が謝るんだよ」
本当に、申し訳ない。なんでこの人が悲しい表情をしないといけないんだろうか。俺たちが勝手にやってしまっているだけなのに。
「くそがっ!」
俺たちは、階段へと向かうアメイを背中を見送ることなく、ボスがいる部屋へと向かう。元々、この道は、ボス部屋と階段が近いという理由で、三層の目標地点になっていた。だから、ダンジョンボスの所在地は把握している。
「アメイには申し訳ないのう」
「約束もしたのにな」
どうして、俺たちの正体がばれたのか、帰ったら聞く予定だったんだがな。
「何を言っておるか! ……帰るぞ」
「……そうだな」
そうだった。無事にボスを討伐して……いや無事じゃなくても生きて帰って、話を聞けばいい。
さぁ、ボス部屋はもう……そこだ。
『シゲン』のダンジョン 『登録No.63』 推奨Lv.15/推奨人数:二人 最奥の魔獣 アランストレン
ダンジョン暴走により、更新。 ”推奨Lv.60 ”/ ”推奨人数:四人”
俺たちは、一見他の空間と何ら変わらない、しかし、入る前から異様な威圧感を放つそこを前にする。初めて、震えが止まらない、足が止まって縫い付けられそうになる。
恐らく、まだボスは待機状態、ただいつ動き出して、ダンジョンの外に出るかわからない。叩くなら、今しかない。
「俺から行くぞ」
「うむ」
クランは槌を構える。俺も一息入れ、盾を構えながら、その空間に入る……!
――横、敵は、誰かが来るのを待ちわびていたかのように、その巨大でどす黒いトカゲは、入口の横に張り付いていた……まずい、クランにだけは当てられ、いや盾を構えろ……!
しかし、盾を正面に向ける前に相手のしっぽが到達する。威力は御しきれず、吹っ飛ばされる。
「がっ!」
衝撃、背中から全身へ、痛みと衝撃が流れる。壁に叩きつけられた……! だが……意識を失うことも、思考を止めることも許されない。耐えろ、今は次の一手を考えろ。
「イズミ!」
クランが呼ぶ。ダメだ、クランが無防備になる。それだけは、あいつだけは守らなきゃいけない! しかし、俺に見向きもしなくなったトカゲは、今度は俺の次に入ってきたクランに狙いをつける。
だが、どうする。距離が遠すぎる、どうする、どうする。
「吠えろ!」
クランがそう言う。吠える? そうか、魔法か! シールダーのレベルが25になったとき、一つの魔法が使えるようになる。今はそれにかけるしかない!
『獣どもよ、この音を聞け、衝撃の咆哮を!』
『魔獣挑発!』
その詠唱と共に、轟音が鳴り響く。トカゲはその音に一瞬硬直したかと思うと、俺の方を向き直る。どうやら、うまくいったらしい。敵は、俺に向かって突進してくる。
俺は、落ち着いて盾を構える。わかっているのなら受け止めきれる!
敵はこちらに向かってくる。だが、このままではクランの一撃を入れることができない。そのため、俺は、クランに向かっていく。
しかし、速度は敵の方が上。やはり、レベルは圧倒的に上だ。しかし、それでもやるしかない。
クランの所に行く前に、敵がこちらに到達する。今度は頭突きなのか、そのまま突っ込んでくる。盾を正面に置く。敵の突進を受け止める!
「ぐっ! 今度は、耐えたぞ……」
しかし、直感で分かる。恐らく、『再生』込みで、あと二発も受ければ、死ぬ。腕のしびれがそう訴える。俺が一人であれば、
『陽なる波動よ、この者を癒せ』
『治癒』
いつの間にか回復範囲まで近づいてくれていたクランが回復してくれる。
腕の痛みが急速に引いていく。とはいえ、多少は残っており、全快とはいかない。だが、それでも耐えられる回数は増えた。
クランは俺に、回復を施した後、敵に向かって槌を構え、走り出す。敵は俺に回復を施されたことも気にせず、突っ込んでくる。
俺はまた、盾を構える。もう一度、耐えろ。敵の頭突きをどうにか、受け止める。今度こそ、
クランが、その攻撃の隙をついて敵の体に槌をなぎ振るう。敵はその攻撃に少しだけ悶える。やはり、クランの火力でも大きくはダメージは入らない。やはり、圧倒的にレベルが足りない。
それでも、だが確実にダメージは通っている。これなら、ヘイト管理と、回復のタイミングさえミスしなければ、問題はないはずだ。
「イズミ、大丈夫か!」
「あぁ、回復、頼んでいいか?」
「うむ!」
敵がひるんだ一瞬だけ、言葉を交わす。ついでに回復もしてくれる。多分、もう言葉を交わす時間はない。このまま、相手を抑え込むしかない。これなら、時間はかかれど、倒しきれるはずだ。
相手は、ひるみ状態から抜けて、こっちを向く。大丈夫、まだ挑発効果は残っている。俺は突進に合わせて盾を構える。
同じ突進だと、そう思った瞬間だった。相手は急停止し、体を横に捩る。まずい!
「っな!」
俺は咄嗟にクランを左手でつかみ、体を正面に置いた盾ごと九十度右に回転する。敵の薙ぎ払い攻撃が来る。また、吹き飛ばされる。
――だが、今度はそうはいかない。後ろに、クランがいる。こいつがつぶされてしまう。吹き飛ばされる寸前、俺は盾を地面に突き立てる。
しかし、その動作によって敵の攻撃をガードしきれない。それでも、こいつを守れ。額から流れた血で前が見えにくい中、それでも、盾を地面に突き立て勢いを殺す。
どうにか、勢いはほとんど死んだまま、それでも壁にはぶつかってしまう。
「お前!」
クランが……叫んでいる。目の前が……血に染まる中……トカゲが突っ込んでくるのが見える。
「ま……え」
その声で……気づいたか、クランは……ドンピシャで、敵の頭に槌を……入れる……これはかなりいいダメージ……相手も……逃げている
「イズミ、イズミ!」
だめ……だ、意識が、俺は……こいつを……”守ら”なくちゃ……いけないのに。
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