ダンジョン暴走
どうも、作者です。二十三話です。
俺は淡々と探索の準備を進めるが、正直、それどころではなかった。朝起きて告げられたのは、唐突な俺たちの正体バレだったのだから。
「本当に何があったんだ……?」
とはいえ、薄々バレているのではないか、という疑念そのものはあった。時々アメイはこっちを気にかけていたし、ハイカさんからもそれらしいことは言われていた。
「まぁ、会話の成り行きで……あ、ちなみに、わしがバラしたわけではないぞ」
それは何となくわかる。しかし、昨日はいったんそこで止まったらしい。どうやらそれに関する話し合いは、とりあえずギルドに戻ってからにした方がいいとい、うことになったらしい。まぁ、ダンジョンでは何が起こるかわからない上、多分一番重要なハイカさんがいないなら、そっちの方がいいか。
「ま、とにかく今日はちゃちゃっと三層を探索して帰ろうではないか」
正直、蚊帳の外感が否めないが、やることは変わらない。切り替えていくか。
俺たちは支度を終えた後、三層に向かう。とはいえ、三層と二層では、あまり変わったところはないらしい。強いて言うなら、敵の出現頻度が多少上がるくらい。とはいえ、別に今までも多かった気はするが。
俺たちは三層へと降りる。三層の階段は変わらず螺旋階段だ。長さは、あの時は急いでいたから違いが分からない。
「そういや、多分三層は、そこそこ他の冒険者たちもいると思うから、気をつけろよ」
そうか、そう言えば昨日そんなことを言っていたな。トラブルになるのはあまり本意ではないし、そうならないように気をつけねば。
「特にお前な」
「なんじゃと! そんなどこにでも噛みつきに行かんわい!」
本当だろうか。いや、良識はある……あるかこいつ?とにかく気を付けていこう。
そういう訳で降りた先にあったのは、特に一層や二層とは変わらない通路である。ただ、どことなく、空気が重くなった感じはある。
「そういえば、お前ら、レベル確認したか?」
レベル、そういえば、ダンジョンに入ってからは確認していないな。
「そうか。そういえば、防御職はそろそろ魔法を覚えるのう」
そういえば、ハイカさんからそんなことを言われた気がする。俺は、ちらとだけ、レベルを確認する。確かに、魔法が使えそうである。しかし、
「実戦でいきなりって言うのは怖いな」
「まぁ、ここを出てからで良いじゃろう」
俺はクランに同意して、アメイの後ろについてく。
「ミニゴーレム三、スケルトン八!」
三層に入って少し経った後、早速敵に遭遇する。といっても、今までと代わり映えしない敵ではあるが、最初からスケルトンの数が多い。しかもミニゴーレムもいる。とはいえ、対処は今まで通りスケルトンを俺がひきつけて、ミニゴーレムからクランが処理していく。
流石に数が多いので、アメイもスケルトン処理に加わる。アメイの火力ではミニゴーレムの処理はきついらしい。やっぱりあのゴーレム固いんだな。
とはいえ、特に苦戦することなく撃破。ただ、この戦闘中、通路の先に他の冒険者がいるのが見えた。どうやら、本当にいるらしい。
とはいえ、あっちもこっちの存在に気づいたようだが、特に接触することはなかった。基本、互いに不干渉というのが決まりだから、特に何か起きることはないだろう。宝箱のブッキングなどが起きると話はややこしいらしいが。
逆を言えば、それぐらいでしかダンジョン内では干渉することも少ないのだとか。ただ、魔獣の擦り付けなどはあるらしいが。
「っと、もう次だ!」
さっきの戦いから早数分、次の魔獣があらわれる。早いな。
魔獣に遭遇、処理。魔獣に遭遇、処理。ルームに入り、宝箱を発見。他の冒険者と遭遇。特に干渉することなくスルー。そして、また魔獣、魔獣、魔獣……。
「流石に多いわい!」
一時間で五回。昨日の戦闘は、せいぜい十回ちょっと、もう半分近くは到達していることになる。流石に、数が多すぎる。
「ああ、俺もちょっとこれは予想外」
今度は一時間で、六回。流石に数が多い。どうなっている?
「今度はインプ十八、スケルトン七!」
数は少ない、問題はない。というかもう、インプに関しては二百体ぐらい倒した。だが、予想外はそこから、
「すまんな!」
隣を、他のパーティメンバーがすり抜ける。これは、擦り付けられた!
「ちっ、カスが!」
「仕方ない! 追加はいくつじゃ!」
戦闘中、逃げるのは難しい。だがさっきのパーティ、負傷者が多かった。クランが退避を選ばなかったのはそれか、どのみちやるしかない。
どうにか、全魔獣の撃破。幸い通路であったため、囲まれるような事態にならなかった。それは良いが、流石におかしい。
「くっそ、なんだこれ! 数が多すぎる!」
アメイが明らかに取り乱してる。このダンジョンに何度も来ているはずのアメイをもって、数が多いという状況。一体何が起きている。
「いや、大丈夫だ。目的地はすぐそこ、そこまで行ったらすぐに帰還するぞ、流石にこの状況はおかしい。くっそ、ギルマスに報告した方が……あ?」
振動、絶望の振動音が、響き始める。
「まさか、これは!」
なんだ、何の振動だこれは!? 分からない、だが、俺は咄嗟に上を見る。この状況で一番危険なのは!
「アメイ、入れ!」
俺はそう言いながら、近くにいたクランを抱き寄せる。
アメイにもその言葉の意味がわかったのか、それともただの生存本能なのか、すぐに俺の盾の中に入る。その瞬間、巨大な瓦礫の落石。俺はそれを盾で受け止める。
ステータスのおかげか、何とか耐えきる。そして、振動は小さなものになっている、しかし、収まる気配はない。
「本当に何が起きてるんだ?」
「これ……それは後でいい! とにかく今はここから出る!」
俺はアメイに言われるがまま、後ろをついていく。しかし、クランはやはり遅い。いや、それだけじゃないが、
「クラン、運ぶぞ」
「あ、ああ」
俺はそう言いながら俺はクランを抱える。やはりこっちの方が速い。しかし、クランは少し心あらずといった感じだ。この状況が何かを考えているのか?
だが、本当に、一体何が――
「た、たすけ」
――声。助けを求める声がした。声がして、押しつぶされる音と共に掻き消えた。「たす……」
「無視しろ! 助けに行っても巻き添えになるだけだ!」
どうする。どうする。しかし、分かっている。あの冒険者が助からないことは、それでも、他にも
「――ここを越えれば、もう二階だ!」
アメイは必死に俺たちに訴える。だが、ここには、まだ、たくさんの冒険者が同じ状況になっているはずで
「だから!」
「ダンジョン暴走、じゃな」
俺に抱えられたクランがそう言う。この状況を理解したのか。クランはそう言った。
ダンジョン暴走。それは、ダンジョンの異常活性によって、通常外に出るはずのない魔獣たちが、狂暴化して、ダンジョンの外まであふれ出る現象。
クランが考えていたのは、
「だから、何だって言うんだよ!」
アメイの怒号が飛ぶ。クランはそっと俺から降りる。その瞬間、クランと目が合う。俺はクランのやりたいことの意味を理解する。
「「ボスの討伐」」
それこそが、全員の生存率を上げる、唯一の方法だと。
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