閑話休題、とするには
どうも、作者です。二十二話です。
「さて、昔話はこんなところじゃ」
クランは、唐突に話を終わらせる。何というか、クランの原点に触れられて、彼女に対する認識は少しだけ変わった気がする。
思ったより、彼女ははっきりと、自分のやりたいことを認識していたのだ。冒険者になる意味も、ヒーラーとしての意味も。俺は、何があるんだろうか。
「俺の話は聞かなくてもいいのか?」
「どちらでも良いわ。少なくとも、半端であればいらぬ」
彼女は言外に、まだ見つかっていないのであれば、喋る必要はないと告げる。今だけは、こいつの方が年上に見えてくる。いや、実際そうなんだが。
「あぁ、いつか絶対話すよ」
「わしは話さなくとも良いがな」
彼女は軽く微笑む。何となく、お姫様みたいな笑顔だなと思った。
「そうだ、お前って、ただの吸血鬼じゃないのか?」
何となく、話を聞いていて思った。多分普通の吸血鬼ではないだろう、と。
「ん? まぁの。 何じゃ、今更わしの高貴さにひれ伏したか?」
クランはなんて事のないように認める。高貴さにひれ伏す、か。
「それはないな」
「じゃろうな。ならさっさと寝るがいい」
何となく流された気がしたが、いいだろう。実際明日もダンジョン探索は続くのだから。
イズミが寝て、少し経った後。アメイが帰ってくる。
「ん? てめぇは寝ないのか?」
「まぁのう」
というか、わしは寝る必要がないだけだが。吸血鬼だし。
「そうかい」
アメイは寝ずに、わしと同じようにたき火を眺めている。アメイの方こそ、寝ないのだろうか? たき火を見るふりをしながら、横目でアメイの方を覗く。どうも、わしの方が気になるらしい。
「わしに何かついておるか?」
「いや、まぁえっと、あぁ、お前、そんなに落ち着いてたか?」
明らかに話をそらされた。というか、そんなに落ち着いているだろうか? 恐らく、さっきイズミに過去を語ったせいだろうが。じゃが、その程度では食い下がらない。
とはいえ、どうせまたそらされる気がする。もう一度、アメイを観察する。気にしているのは、わしだけではない。イズミの方も、定期的に覗いている。ふむ、今までのことを思い出す。そういえば、定期的にイズミと何か話しておったし、気にかけておった。
そこで、ハイカの言葉を思い出す。確か、言っておったのう。なんとなくだが、”一般”の人間ではないと気づいていると。あの時は驚いたものだが。
正直に言って、イズミが異世界人であると、バレる要素は少ない。なら、バレたのはわし? いや、やはり、これは勘であるが、バレたのは、いやバレておるのは、イズミの方か?
「お主は、いや”お主ら”はイズミの正体に気づいているな?」
「!」
アメイの顔に動揺が浮かび出る。どうやら、図星らしい。
「クラン、てめぇ、そんな鋭かったか?」
どうだろうか。普段から、観察したうえで、興味がないことには一切関心を寄せる性格ではないので、そのせいで今まで気づかなかっただけではある。
「ま、そういう側面もあるというだけじゃ」
「ああ、イズミの正体には気づいてる。やっぱりてめぇも、知ってやがったか」
まぁ、知らないと思われても仕方ないだろう。となると、さっき切り出さなかったのは、それが理由か。わしが知らなかった場合、安易にイズミの正体をばらすことになる。
「まぁの。しかし、どうやって気づいた」
「それは、いや、できればハイカたちがいるところで話してぇ、泉も起きてる時にな」
ふむ、その方が良いか。何より、気づいたうえでフォローをしてくれたなら、何よりギルドの人間であれば問題はなかろう。それに、泉を起こすのも忍びない。
「わかった。ちなみに、わしのことはどこまで気づいておる」
「俺がわかる範囲だと、その古臭い喋り方だな。古くから生きてる上で身分が高い人間じゃないと、そんな喋り方にはならん、つっても学があって、英雄譚でも読んでない限り気づかないだろうが。とにかく、そのうえで身分を隠すなら、獣族なら隠す必要がない、かといって、霊族じゃない。だから、魔族。人に扮せるなら、魔人か吸血鬼ってとこまで」
流石にここまでバレてるのは予想外じゃ……!? いや、切り替えろ、そこまでバレていて何もされなかったのを見るに、恐らく問題はない。というか、もとよりここはセントラルフラッグ。種族は不問。問題はない。
「そこまでバレておったか」
「ま~、俺やら、ハイカやらは、ちと特殊でね。そこら辺の観察眼はあるもんで」
ふむ、この分だと、ハイカには、もっとバレてそうじゃのう。というか、アメイも含まれておるなら、もしかして昔なじみと推測できるかつ、ハイカの妹であるアイカも気づいておるのか?
「多分、アイカはお前の正体には気づいてない。泉はバレてる」
完全に、アメイに思考を読まれた。しかし、そっちはバレてるのか。やはり、何か特別な方法でバレておるな。どんな方法か見当つかぬ。恐らく、何か出自の問題か? いや、これ以上考えても無駄じゃな。
「はぁ、ともかく、ギルドに戻ったら色々と聞かせてもらわんとのう」
「そりゃお互い様だろ」
それもそうじゃな。さて、わしもどこまで明かしたものか。恐らく、イズミも含めて、”身分”まではバレておらぬだろうし。どうしたものかのう。
「つーか、まてよ。お前もしかして寝ないんじゃなくて」
おっと、どうやら最初の会話がヒントになってわしの種族が完全にバレたらしい。
「うむ、恐らくお主の考えている通りじゃ。わしは寝る必要がないから起きているだけじゃ」
「......まじか。”吸血鬼”に出会ったのは流石に初めて」
この分じゃと、魔人の方には出会っておるな。一般の獣族が魔人に会ったことを当たり前に話すとは、本当に珍しいことじゃ。まぁ、普通なら、吸血鬼と明かした時点で恐れられておるか。
「よく、恐れぬのう」
「言っただろ、ちと”特殊”だって」
なるほど、本当に何か訳ありらしい。これは嫌が応でも聞かねばならんのう。
「はぁ、つくづくお前らの関係を聞いた方が良さそうだな。ま、多分ハイカはあんまり干渉する気はなかったんだろうが……」
まぁ、本来は異世界人と魔族が一緒に行動することなどまずありえない。そんな例外、わしらを除けば多分おらんじゃろう。ただでさえ、人間の兵器として利用される”異世界人”と、その”兵器”に幾度となく苦しめられた”魔族”が交わることは決して。
さて、イズミにどう伝えたものかのう――。
――朝、かどうかは分からない。この洞窟の中では、日差しなどでないし、いつだって薄暗い。ただ、随分と寝ていた気がする。思ったより疲労がたまっていたのだろうか?
「む、イズミ、起きたのう」
「おはよう」
俺は、クランにあいさつをして起き上がる。意識がはっきりしてくると、アメイがもう支度しているのが見える。だが……なんだろうか? 昨日と何か雰囲気が違う。
「なにかあったか?」
俺はクランに問う。
「いや、バレておったらしい」
「......何が?」
「わしらの正体」
……まて、何でそんな話をしている? 俺が寝ている間に、何があったんだ!? 俺はもう、情報でパンクしそうだった。
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