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どうも、作者です。二百七話です。
「――概ね、知ってはいましたが、明確に父を狙った”厄災”でしたか……」
俺は、未来さんより聞いた内容をみんなに伝えた。一番、きつかったのは先代勇者の娘であるハイカさんだろう……。
「まぁ、想像通りですね。父のことは置いておきましょう。どのみち、青月の女神とは戦う覚悟は決めていましたから」
「え? 全然落ち込んでない?」
意外だった。もう少し怒るものかと……。ハイカさんからは強がりを言っている雰囲気はなく、いつも通りの淡々とした声だった。
「父のことは、グリムさんが言っていましたから……それが確定しただけのこと。何より、もう十五年、私はあの日から、許したことなどないのですから。無論、アイカのことも」
違った。怒っているのが通常状態だから、これ以上怒りようがないのか。うん、ハイカさんはやっぱり表情からは何も分からないな。
「モロゾフさんは、もう聞いてたんだよな?」
「まぁな。俺もあのくそ女神には縁があってね……ま、やることは変わりやしねぇよ」
縁か……いったいどんな縁が……?
(モロゾフは転移者なのじゃろう? じゃったら、青月の女神によって転移させられているはずじゃ)
あ~、そうか。そういえば、未来さんは誰かを転移させたことがないんだったか……? 厳密には、肉体を構築したことがないだったか……とにかく、元々モロゾフさんが青月の女神に転移させられたのなら、確かに何かあったのか。
「ヒビキさんは……」
「私は特に……と言いたいところですが、一人のパーティメンバーとして皆さんと共に進みましょう。もう、無関係ではいられませんから……イ、イズミさんの……いえ! あの人との因縁をつけなければいけませんから」
ん……? 一瞬ごまかされたような……まぁいい。それにしても、あの人って誰だ?
「あ~、まぁいいか。お前らの問題だし……っと、そうだったな。言ってなかったな、”亜人街”での出来事」
そうか。やっぱりヒビキさんたちの方でも何かあったんだな。マゼランが、普通に行けばあっちが先についているはずだって言ってたし、問題が起こってたんだろう。
――亜人街での逃亡劇、それは中々ハードな状況だった。まさか、一週間も地下にこもりきりだったとは……それに、小人の王、アレイ・エピス・グランゲージか。
ヒビキさんを付け狙っている王。これから”王選”が始まるのなら、確実に戦う相手……それは、ヒビキさんも確かに、味方がいた方がいいだろう。
(ヒビキ様を狙うとは……! まぁ良い。じゃが、その王に、ヒビキさんの魔法が奪われたら終わりじゃのう)
こっちとしても、ヒビキさんの力を奪われるわけには行かない以上、一緒にいてもらった方がいいな。
「そうだな……ヒビキさんのことも守れるくらいには強くならないとな」
「え!?」
やはり今の俺では守れないのは分かっている……それに王なんて相手にどこまで俺の力が通用するか分からないし……いや、そういうことを言っている場合ではないか。
「ダメですね……守護モードの泉さんには何ら意味がないです」
「ちっ、盾頭ボーイか……いやこの場合攻めるべきなのは初心竜人か」
「何か言ったか?」
小声でひそひそと話している二人……一体何の話だろうか。
「いいえ、何でもありません……あと伝えておくべきことは……そうだ。泉さんたちは聖王国を進んでいたのですよね? だったら、”断罪者”という言葉を聞きませんでしたか?」
「ん? 聞いたというか、一人会ったし、殺されかけたが」
「……え!?」
「いや、何さらっと言ってるんですか……ヒビキさんが見たこともないほど困惑してるじゃないですか。そっちもいろいろあったようですね。早く聞かせてください」
俺の方も、少し今後のことに頭が行き過ぎていたようだ……。そうだな、一週間以上も経ったせいで、少しあの時の危機感が薄れている。反省だ。
聖王国であった、立往生の件、それを引き起こした過激派と、勇者の覚醒、そして”憤怒の断罪者”ヴィーの話。
確かに、未来さんの話を聞いた後だと、あの件は今後にかなり響いて来る話だな。断罪者に勇者、あれは、これから始まる戦いの前哨戦だったのかもしれない。
「……なるほど。なかなか大変なことが起こっていたみたいで……ちょっと待ってください、アルデと会ったんですか?」
「ん……ああ、知り合いだったか?」
ああ、でもそうか、アルデさんもSSランク冒険者だし、知り合いでもおかしくはないか……。
「……ヴァティ姉さんから聞いてません? 彼は、同郷の……というか、私の幼馴染なんですけど」
「……え?」
(何じゃんとぉ!? 一体どういうこと……”あれ、言ってなかった?”ではないわい!?)
クランの方ではどうやら、師匠に詰め寄っているらしい……というか、アルデさんがハイカさんの幼馴染!? そんな話……そうか! 俺たちもハイカさんと旅してるなんてあっちに一切言ってなかった。
師匠、かなり重要な話を何で忘れてるんだ……。そういえば、師匠はアルデさんとは妙に親しそうだったな……そういうことか。
「まさか、彼が勇者パーティの一人になっているとは……」
「待ってくれ、だとしたら、アルデさんは知っていて、青月の女神の陣営についたのか?」
同郷……ということは、勇者とも直接会っているはずだし、それなりの仲だったのではないだろうか。ハイカさんと幼馴染ということは、関わりはあったはずだろうし。
それに、アルデさんはすごく……いい人だと思う。悪い人には思えなかった。というか、俺はあの人がいなければ、死んでいた可能性すらあるし、俺たちのことも黙ってくれるようだったし。
(それに、アルデ殿が、ヴァティ殿を知っておって黙っておったのは間違いあるまい)
それもそうか。ティノスさんは、師匠のことは特に言及しなかったということは、師匠が先代勇者の、いやセントラルフラッグの一員だという情報も漏らさなかったことになる。
「……そうでしょうね。ただ、何も考えずにあっちの陣営につく人ではないです。ただ、青月の女神の眷属となって、何かを聞いた可能性はあります……その上で、あっちについたのは間違いないでしょう……はぁ、厄介な人が敵になりましたね」
ハイカさんは、もうアルデさんが敵になったことを受け入れている。こうなる可能性も考えていたんだろうか。とにかく、かなり重要な話を俺たちは知らなかったな。
「一旦そのことは、ここまでにしておきましょう。”断罪者”の話を聞かせてください……その断罪者は、変な剣を持っていませんでしたか?」
剣……あの真円の刃を、剣と言っていいのだろうか……一応、二つに割って、二振りの刃にはしていたが、まぁいい。そのまま伝えればいいだろう。
「真円の刃は持ってた、外と内両方に刃がついた……超巨大なチャクラム? みたいなものだ」
「……なら、私たちの村を襲ったやつとは別ですか……」
村を襲った……そうか、アイカを一度殺し、ハイカさんに呪いをかけた相手……それも断罪者か。何というか、色々なことがつながっている気がするな……。
「ちっ、今考えすぎても無駄だろ、どうせしばらくはあいつらの情報なんて手に入りやしねぇ。帝国なんて、無関係もいいところだしな」
「それもそうですね。今は、”妖精王の秘薬”を優先しましょう」
モロゾフさんがそうまとめてくれる。とにかく、その通りだな。戦いはまだ少し話だ。今は”試練”をこなさねばならない。
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