女神の戦争
どうも、作者です。二百五話です。
――船の上で二日、川を使うだけでかなり大幅に短縮できると聞くと、昔から川近くで文明が発達したのはそういう利点もあったんだろうなと思い知らされる。
陸上と違ってほとんど障害物もないし、止まることもない。まぁ、安全な旅だな。確かにこれなら帝都まではかなり楽に進めるな。
実際、獣人の国と帝国は交流が盛んらしい。互いに必要な資源を川を使って安全に運べるおかげだろう。
「こういう川には、魔獣っていないのか?」
「基本的にはいないですね。魔獣というのは、元々はダンジョンにいたもので、それが地上に出て繁殖したのが普段、森などで討伐している魔獣です。海にはダンジョンがあるのですが、彼らは海水魚のようですし」
ハイカさんが教えてくれる。魔獣にも、淡水、海水の概念があるのか……でも、地上の魔獣たちも、きっちりと生息分布があるようだし、そういうものなのか。
「この世界の魔獣って……通常のルールに従って生きているのか微妙に迷うときあるよな」
モロゾフさんの言う通りだ。そもそもが、物理法則耐性なんて妙なものもっている割に、割としっかり生態系を作っていたり、俺たちの世界の常識が通用するときと、しないときが混じっていてかなりややこしい。
「まぁ、魔獣自体、女神が創りだしたものですし、そういうものですよ」
女神……そういえば、ダンジョンもステータスも女神が創ったものなんだったか。ダンジョンは未来さんが創ったって言ってたな。
あの人、ああいうのを創るのに向いている性格ではないと思うんだが……どういう経緯で創ったんだ?
……女神か。クレオス王が言っていたことを思い出す。俺たちは敵同士だと、いつかは戦うことになると。漠然と、そういうものなのだという感覚はある。いつか、新とも敵となるかもしれない、というのは分かる。
「なぁ、どうして女神同士で争ってて、それに俺たちが巻き込まれてるんだ?」
その理由が、あまりわかっていない気がする。多分、俺以外は何となく察している気がする。いや、アメイあたりは知らないかもだが、ヒビキさんや、アメイ、モロゾフさんは、特殊な立場だ。知っていてもおかしくはない。
というか、クランも知っているだろうが……
(そっちの奴らに聞けい)
だよな。というかもう聞いているのだから、クランに聞くよりこっちに聞いた方が早い。
「そうですね……私たちが話してもいいですが」
「本人に直接聞け。女神に聞けるなら、それが一番手っ取り早い。俺たちより詳しいっていうか、当事者だろ」
それもそうだな。未来さんに聞けるなら聞いた方がいい。一応、この前も報告のために一度交信をしたし、その内来るだろう。
――とか思ってたら、本当に来た。
「? はい、私です……もしかして、私の話を?」
ああ、未来さんに一つ聞きたいことがあってな。
「私に?」
いつか言ってただろ? 俺が未来さんの眷属である限り、戦いに巻き込まれると。多分もう、俺はその戦いを避けられない。
クレオス王にも言われたしな。だが、その戦いっていうのは結局どういうものなんだ? どうしてそんな戦いが起こっている?
「……そう、ですね。もう、戦いは避けられないところまで来てしまいました。今の勇者が力を発現した以上、それは避けられません……わかりました、話しましょう。私たち、女神の争いについて」
女神の戦い、か。それは一体どういうものなんだ?
「まず、そもそもこの世界がどうして今の状態になったかを話す必要がありますね……元々、この星には、多くの神がいました」
多くの神、つまり、未来さんや、青月、緑月の女神以外にも神様がいたってことか?
「はい、彼の方たちはこの星を運営し、そして見放しました。いえ、実際のところ、どういう理由でこの星を手放したかはわかりません」
それじゃあ、未来さんたちは、
「私たちは元々、この星の記録をする役割の女神でした。神としては、末端の三姉妹です。ですが、彼の方たちは、この星を離れると同時に、私たちに星の運営の仕事を与えました」
星の運営……それが今の状況か。
「いいえ、今とは少し状況が違います。あの時はもう少し、滅茶苦茶というか、いえ、今とあんまり変わらないんですけど……元々記録がメインでしたから、各々手探りでかつ協力して色々やっていました」
ステータスとか魔獣とかも……
「はい。人という存在により成長してもらおうと、私たちがその時代に作ったシステムですね……ですが、星の管理の仕方に慣れたことで、問題が生まれました」
問題か……それが今の状況に繋がっているってことか?
「はい。問題というのは、方針の違いです。私たちは女神です。だからこそ、星をいくらでも、好きなようにできます。ですが、三姉妹とは言いましたが、いかんせん性格が違ったもので」
それで、この星をどうするかでもめたってことか。
「はい、青月は、徹底管理を、緑月は、楽しさを、そして私は、人に自由を求めました。特に、青月とはそりが合わなかった」
なるほど。徹底管理と、自由じゃ、全く逆のスタンスだな。緑月の女神様の、楽しさっていうのはよくわからないけど。
「簡単に言えば、今の状況をもっとゲームっぽくしたものです。あなた達風に言うならMMORPGのゲームみたいなものです。定期イベントとか打ち出して、のような」
何だそれ……本当に星一つをゲームみたいにしようとしてたってことか……今も似たようなものな気がsるが。
「まぁ、彼女の場合は、女神が干渉しまくって、人に苦難と喜びを、みたいな感じですね。私とは似ていますけど、彼女が干渉派で、私が不干渉派、といった具合です」
なるほどな。どっちも人が主体ではあるけど、女神がどれだけ干渉するか、の違いがあったわけだ。
「そして、方針でもめた時、青月の女神が提案したのが」
今のこの戦い、というわけだな。
「はい。千年前より始まった、それぞれが作った種による代理戦争。”王選”です」
”王選”というのは。
「ルールは簡単。まず、一人の女神が他の女神に宣戦布告をして、それに応じた時点で始まり、そして、先に自分の駒、この言い方好きじゃないですね。ええと、それぞれの種族の王が無くなったほうの負けs
、という訳です。駒の負け方は、その王が敗北を認めた時、です」
それだけ、本当にシンプルだな。負け方も、その王が敗北を認めた時ということは、
「戦い方も王に委ねることになります。戦争での敗北、もしくは一騎打ちでも、何でも構いません。しかし、一度戦いを受けた時点で、勝敗は決しなければいけませんが」
なるほど。待てよ、それって、千年前から続いているんだよな? 何というか、その割にこの世界は殺伐としていないというか、平和というか。
「……簡単な話。私が、青月からの宣戦布告を無視しているからです……さっきも言った通り、片方の女神が応じなかった場合、王選は始まりません……引き延ばしができるんです」
なるほど。そうか、さっき、未来さんは、人に自由って言ってたが……
「ええ、正直、私からすれば、今の状況が一番好ましい。多少女神の干渉はあるでしょうが、人が自由に生きている世界、という意味では、今の状況が続けばいいですから」
なるほど。だったら、戦いなんて一生始まらないんじゃないか?
「その通りです……ですが、宣戦布告に応じなくても、戦いを一方的に有利にすることもできます。まさに今がその状況ですね」
そうか。そもそも、女神同士が争わなくても、普通の人同士の諍いで有利不利が生まれる。
「ええ、それに、”王選”にはもう一つルールがあります。一つの陣営に、存在している九割以上の王がついたとき、その時点で、その陣営の勝利です」
でも、三つ陣営があるなら……
「いいえ、今の陣営は二つ。私と、青月だけです」
まてよ、ということは
「とうの昔に、緑月の女神は負けています……彼女はもう、盤外です」
なら、緑月の女神の王たちはどうなっているんだ?
「そのほとんどが、青月の女神の陣営となっています……」
思ったより、厄介な状況になっているらしいな……でも、とうの昔に、ってことは、ずっと現状維持はできてたんだよな? それが、なんで今になって、戦いが始まりそうになってる? というか、戦いが始まりそうってことは、
「ええ、ここまでは、今までの話です。現状、私はもう、宣戦布告を受けなければ、負ける一歩手前まで来ていると言っていい……だから、どうしてこうなったかの話をしましょう」
ここからが、本題か。
読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。




