パーティ分担
どうも、作者です。二百三話です。
「さて、パーティ分けですが、まず、王の追加条件的に、クランさんとイズミさんは分けます」
「まぁ、そうなるじゃろうな」
実は、俺たちはメインの二つの要求とは別に、もう一つ試練を課されていた。その内容は『交換』の禁止。つまり、俺たちの位置入れ替えが使えないということだ。
何故、この試練が課されたかは、王にも分からないらしい。だがまぁ、試練とされたからには、俺たちも従わざるを得ない。
そして、『交換』が禁止された以上、俺たちの一番のコンビネーションは使えない。まぁ、あれがなくても、五感の共有で戦いは有利にできるが、
(まさしく、それが今回わしらがわけられる理由じゃな)
「二人には、五感と精神の共有を利用した連絡を担ってもらいます」
そう、この世界では電話などの遠方同士がすぐに連絡が取れる手段はない。一応、女神さまを通しての連絡手段もあったわけだが……
「俺たち眷属同士の連絡は赤月限定な以上、ま、妥当だろうな」
そう、赤月が出ている時期しか使えないのだ。そして、もう赤月の時期は終わり、緑月の時期に入る。女神様を介した、連絡はもう使えないのだ。
というか、そろそろ未来さんともしばらく話せなくなるな。また、連絡が入るだろうか。
「では、二人は分けるとして、後は二人も含めて、どちらの試練に割り振るかですね」
俺とクランを分けるにしろ、”妖精王の秘薬”か、”悪の討伐”……どちらの試練に誰を割り振るか、である。
「人数は均等に割り振るとして……”妖精王の秘薬”に行く方から決めてしまいましょう。そもそも、製法とかを知らなきゃですしねぇ」
「「私/俺に行かせてくれないか/ませんか」」
そこで言葉が被ったのは……ハイカさんとモロゾフさんだった。この二人が同時に? ハイカさんはやっぱりと言わんばかりの顔をして、モロゾフさんは本気で驚いている。
「二人とも、何かあてがあるんですか?」
「あ、ああ……まて、今回の件に対応できそうな薬屋が複数人いると思わないんだが……」
「ええ、恐らく同一人物です……はぁ、帝国に一人、あてがあります」
モロゾフさんの驚き顔が深まったということは、本当に同一人物なんだろう。というか、この二人に繋がりあったのか……。
というか、二人そろってその薬屋のことを上げるくらいには信頼度が高いのか。すごい凄腕なんだろうか。ハイカさんもモロゾフさんも、凄腕だし、信頼はできるだろう。
「つーか、いつから気づいてた」
「貴方が亜人街で薬を取り出した時です。あの瓶の形で薬を保管する人は一人しかいないんですよ」
「そうだった……お前らしかいなくて油断してた」
瓶の形で判断できるものなのか。瓶の形にすらこだわるぐらいの職人なんだろうな。
「さて、ではお二人は確定ということでよろしいですかね?」
そう言いながらマゼランは、アメイや師匠の方を向く。
「異論ないわ! 多分、霊大陸に渡るでしょうし!」
「俺も異論なし。あそこら辺の言語は非対応だもんで」
何故霊大陸……? と思ったが、そうか。”妖精王の秘薬”という名前の通り、作った人はエルフらしいし、エルフがいるのはこの獣の大陸ではなく、霊族が住まう霊大陸だ。
なら、原材料が霊大陸にあると考えるのが自然だろう。そうなると、言葉が喋れるかどうかというのは対応力が変わってくる。
そこで、喋れない二人より、喋れる側が行った方がいいのは、正しいか。だが、そうなると、別に俺が行ってもクランが行っても変わらんな。
俺には『翻訳』があるし、クランは普通に喋れる。
「となると、泉様か、クラン様どちらが行った方がいいですかね?」
「だったら、そいつに付いてきてもらう」
モロゾフさんが指名したのは俺だった。薬なら、俺よりクランの方が詳しいとは思うが……まぁ、どっちが行っても、思考は共有できるから知識面ではあんまり関係ないが。
「私も賛成です……いろんな意味で彼女とは相性よさそうですし」
ハイカさんまでそう言うのなら、まぁ異論は無い。ただ、ハイカさんが微妙に目をそらすのは何なんだ? 相性がどうと言っていたが……。まさか、クランと同じタイプか?
(お主ちょっと面倒そうな感じだしてないか?)
いや、実際お前の性格は多少面倒だ。
(なんじゃと!?)
「クラン様、あまり泉様を睨まないでください……いえ、睨む理由は何となく察せますが、とにかくこれで三人は決まりですね♪」
「あとは、私かマゼランのどちらかですね」
まぁ、後は竜人のどちらかについてきてもらうのがいいだろう。二人とも頭が切れるし、移動にもなれている。
どっちが付いてきても必ず仕事はしてくれるだろう。正直、どっちが一緒でも助かるが……いや、微妙にマゼランよりは、ヒビキさんの方がいいか?
「そうですね。私より、ヒビキの方がいいかと♪」
「え!?」
ヒビキさんが露骨に動揺する。どうしたんだろうか。その表情を見て、マゼランがからかうようにニヤニヤと笑っている。
「いえいえ、別に私の都合ではありませんよ。合理的に考えれば、あなたの方がいいと思いますので、いえいえ本当に、別に他意はありませんよ」
人の弱みを握って、それを突っついているマゼラン。どんな弱みかは知らない。だが、声こそ出さないが、動揺が隠しきれていないヒビキさんを見ると、少しやりすぎだろう。
マゼランは都合よく、手が届く範囲にいたので、肩をポンと叩きマゼランが振り向いた瞬間にデコピンをくらわせる。
「ふぎゅ! 泉様、私への扱いがなっていませんよ!? もーう、雑なんですから……流石にやりすぎたと反省していますから、ね?」
俺のデコピンを喰らったマゼランは、猫を被ってきゅるんとした涙目で、俺を下から覗いて手を合わせ、許してと言わんばかりのポーズをしている。
こいつ、あんまり反省してないな。はぁ、まぁいい。こいつも本気で嫌がるラインまではやらないだろう。そこらへんはわきまえているやつだ。クラン、大笑いするのはやめろ。
「それで、合理的な理由っていうのは何なんだ? 嘘ではないんだろ?」
こいつは、ヒビキさんを使って遊ぶのが楽しいのは間違いないんだろうが、だからといって、煽るためだけにそういうことをする奴ではない。
「そうですね。ちゃんとした理由はあります。本人も気づいているでしょうが、一応説明しましょう」
やっぱりあるんだな。
「いくつかありますが、現地ガイドとしては彼女の方が優秀であることが一つ。商業的な面ならともかく、それ以外の街事情や、土地事情は彼女の方が詳しいです」
なるほど。”記録者”と”商人”の違いだ。ヒビキさんは実際、あらゆる方面の知識があるし、土地の歩き方にも詳しいし、納得ではある。
「そして、冒険者としての実力はわたくしより彼女の方が高いです。指揮官としての面も含めて」
そうだな。マゼランは冒険者としての実力は高くない。それに対してヒビキさんは冒険者としての実力が高い。もし、原材料が判明して取りに行くとなれば、高確率で魔獣がいるのは間違いない。
他にも、細々とした理由があるんだろうが、確かにその二つの理由を並べられると、ヒビキさんの方が間違いない。
「……ええ、私としても、異論はありません」
「では、秘薬入手組は泉様、ヒビキ、ハイカ様、モロゾフ様の四人。悪党討伐組はクラン様、わたくしことマゼラン、アメイ様、ヴァティ様の四人。帰還するのは、アグルス様、アルコル様という形で問題ありませんね」
最後にマゼランがまとめてくれる。俺たちは、自分がどこにいるかを確認し、ついに動くこととなった。
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