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三月羅針譚~盾持ちと吸血鬼~  作者: FOXtale
五章 ■■流星
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203/210

第二の試練

どうも、作者です。二百二話です。

今回より五章、『■■流星』編の始まりです。

俺たちは、王より部屋を与えられた。十人が入ってもまだまだ余裕がある大部屋だ。そこで今後に向けた会議が始まった。


「さて、では第二の試練についてまとめていきましょう」


ヒビキさんが仕切る。この感じ、久々で懐かしいな。ダンジョンに入る前もこんな感じちょっとした作戦会議をしていた。


ダンジョン攻略から四週間。久々に”黄金羅針”全員での会議だ。それに、師匠やアルさん、そして俺と同じ、赤月の女神の眷属のモロゾフさんとアグルスさん。すごい面子ではないだろうか。


「ふむ、本題に入る前に一つ聞いていいかのう?」


「何でしょう」


「わしらは試練として、”二つの要求”をされたわけじゃが、その二つをクリアして、一つの試練、ということでいいんじゃな?」


俺たちは今回、試練として二つの要求をされた。しかし、俺たちはその内容を提示されたとき、”第二の試練”としか言われていない。


「その通りです。つまり、二つで一つの試練、という訳ですね。そして、王はこう言っていました、これも含めて、残りは”二つの試練”と」


ここで大体言いたいことが分かる。つまり、二つの要求をこなしたとしても、もう一つ、試練があるということ。


もう一つの試練の内容に関してはまだ提示されていない。とはいえ、今与えられた試練をクリアしなければ、どのみち意味のない話だが。


「さて、それでは二つ目の試練の内容をまとめましょうか……どうも、二つで一つになっただけあって、同時並行で進めないといけなさそうですからね♪」


同時並行……つまり、俺たちは合流してすぐ、また分断されることになった。いや、今度は分担か? とにかく、その二つの要求とは――




「――”妖精王の秘薬”を俺の元に持ってきてもらうこと。そして、この街にはびこる”悪”の討伐。この二つだ」


それが二つの試練の内容。どちらも、ある意味ではそれらしい内容だが、正直具体的なことは何も言っていないので、よく分からない。


「一つ目、”妖精王の秘薬”ですか……名前だけは聞いたことがありますが……」


「ああ、俺も試練の内容として出てきた時は驚いた。かつての初代妖精王、厳密には、エルフの王だな。彼が作ったとされる、あらゆる害を取り除く薬だ」


あらゆる害……つまり、毒や病気を取り除く、万能薬という訳だ。


(あとは、呪いもじゃろうな。そんなもの、わしも欲しい)


癒し手としては見逃せない案件か。確かに、そんなものがあるなら、世界中から病気が無くなっていてもおかしくはないわけだが……これは試練だ。


「察しの通り、この薬は現在、製法がどんなものかも、材料が何かも残っていない。それどころか、資料すらな……」


「手がかりは何もない、という訳ですか?」


それでは、試練云々の問題ではないだろう。何一つとして分かっていないのでは、作りようもないし、持って来ようもない。


「いや、実はな、俺の数代前の王が、その妖精王より一つ、小瓶でもらっている。少なくとも、獣の大陸では唯一残っているオリジナルだ」


「ちっ、そういうことか」


モロゾフさんが小さな声で言った。何かに気づいたのだろうか。


「ふむ、つまり、このオリジナルを再現したものを持ってこい、ということですか?」


「ああ、製法、材料を突き止め、このオリジナルとほぼ同じものを作って持ってこい、というのが今回の内容だ」


オリジナル一つで……現代の日本なら、成分を調べ出してそこから同じものを作ることもできそうだが、この世界にはそんな技術もないだろう。それとも、それができる何かがあるのだろうか。


そして、それが一つ目、”妖精王の秘薬”の入手、厳密には製作、と言うほうが正しいだろうか。材料入手も、制作方法も必要になる……か。これはなかなか大変そうだ。


「そして、二つ目、街にはびこる”悪”を倒せ、ですか」


「ああ、こっちはシンプルだ。現在、この国では、なにか企んでいるやつがいる。ということだ」


……王様の声がピタッと止まる……それだけか?


「ふむ、俺も試練として出るまで、何か企んでいるやつがいるとは知らなかった……つまり、こっちに関しては、全く情報がない」


……まじか。さらっと言ったが、それって結構まずい状況ではないだろうか。それに、結局のところ、全くと言っていいほど、情報がないではないか。


それにしても、さっきからそうだが、王様自体が、試練の内容に驚いている気がするな。もしかして、王自体も試練の内容を直前まで知らなかったのか……?


(恐らくじゃが、マゼランの『正義の天秤』と似たような事象を、権能で起こしているんじゃろう)


なるほど。『正義の天秤』か。あれも、自分がこうしたいと思ったこと、もしくはこの未来を起こすにはどんな行動が”最善”かを示すスキルだった。


今回の場合であれば、どんな試練が最適か、というのを権能そのものが示している、というわけだ。それなら、王自体が驚くのも納得だ。


「これに関しては、俺としても動かねばならん。少々抽象的だが、もし、その企む何者かを突き止めた場合は、お前たちにも伝えよう」


「ただし、メインで情報収集するのは私たち、という訳ですね♪」


「そういうことだ。お前たちが、情報を集め、その内容を俺が精査する……という形だ。もちろん、できる限りの協力はしてやる」


具体的なことは何もないが、代わりに、王の協力が得られるというのは、かなり大きいことかもしれない。


(何より、場所が分かってるだけ有情というものじゃな)


確かに、秘薬の方に関しては、材料の入手場所すら分からないな。それにたいして、敵がほぼ確実にこの国にいるのが分かっているだけましか。


「何、そう焦らなくていい。この試練は、二か月以内には終わるものだ。俺の『試練』は、理不尽は押し付けん」


二か月という具体的な数字……これはつまり、


「期限、ですね」


「ああ、試練の期限は緑月の中月、その末までだ」


緑月の中月。今が赤月の終月、最終週だから、約二か月だな。そして、理不尽は押し付けないと王が言った通り、今言った内容は、二か月以内には終えられる試練、ということだ。


「さて、これで具体的な試練の内容はおしまいだ。質問は?」


「では一つ、それぞれの内容は、それぞれが一か月で終わりませんか?」


「そうだろうな。だから、二つで一つなのだろう」


ああ、なるほど。そうか、要求は二つあって、それぞれ一か月ずつで終わらせることはできないから、二つの内容を同時並行でやる必要がある、ということか。


(つまりは、パーティを分けろ、と言っているのと同義じゃろうな)


せっかく全員集合できたのに、また分けなきゃならないのか……。まぁ、今度は強制的な分断じゃないだけましか。


「もう一つ、よろしいでしょうか?」


「何だ」


「もし、この試練が達成できない場合、どうなりますか? 私たちはもう、報酬はもらっているわけですが」


そういえばそうだ。俺たちが試練に挑む理由は、エフィを救うためのはずだ。しかし、そのエフィはもう、目の前の王様が動いてくれたおかげで、もう助かったと言っていいだろう。なら、試練をバックレることも可能だ。


「ふむ、俺は一度言ったことは、取り消さない主義だ。”空間”の王を助けると言った以上、それは変えん。だからこそ、その時は、貴様ら全員の命をもらう。竜人のお二方も含めてな」


これは、絶対にこなさないといけないな――




「と、いうわけで、今からそれぞれの試練に挑むパーティを分けていきましょう♪」


「その前に、一つよろしいでしょうか?」


そこで手を上げたのは、アルさんだった。何か……あ、そうか、そうだった。元々そういう約束だったな。


「どうしましたか?」


「僕は今回の試練には参加できません。国に帰らねばならないので」


そう、元々、アルさんは俺たちを”ファクタム”に送り届ける、という約束で俺たちについてきたのだ。元々、聖王国の領主だ。一か月も領地を空けていい立場ではない。


何だったら、俺たちは立場上は敵になるわけだしな。ずっと一緒に行動するのはまずいだろう。


「あ、それなんだけどぉ、私もちょっと、他にやることが出来ちゃったわぁ」


そう言ったのは、アグルスさんだった。


「ちょっと、”シゲン”の街に戻るわぁ」


”シゲン”に? 一体何で戻るんだろうか?


「なるほど。それでしたら、試練の後を考えると、戻ってもらった方がよろしいですね」


「ごめんなさいねぇ」


それが何かは分からないが、ヒビキさんが許可した以上、俺としてはなにも文句はないな。クランの方も、特に異論なさそうだし、マゼランも何も言わない以上、有益な何かなんだろう。


「さて、では今度こそ、パーティ分担と行きましょう」


アグルスさんとアルさんを除いた八人を、分けることとなった。

読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。

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