”試練”の王
どうも、作者です。二百一話です。
今回で四章終わりです。
ヒビキさんたちを助けた後、今度は、ヒビキさんたちと共に、”ファクタム”にたどり着く。一晩休んでも砂の味が消えない。あの時は、久々に合流できたのもあって、楽しい気持ちだったから良かったが、一生食いたくないな。
(あの場におらんかったのに、味わされたわしの身にもなれ)
それはすまん。ま、ヒビキさんたちが無事でよかった。さて、これで、”黄金羅針”のメンバーはそろい踏みだ。
俺たちは、王がいる宮殿へと向かい、その門で、クランたちとも合流した。
「お久しぶりですね! ヒビキ♪」
「ええ、本当にお久しぶりです。マゼラン」
何というか、和やかとは言い難い竜人同士の再会が目の前にあった。ヒビキさんもマゼランも、基本他人に対しては丁寧に接する方だ。名前を呼ぶときは、敬称も基本つけるし。
それなのに、互いに雑に扱っている感じだ。道中で聞く限り、竜人同士は何というか、腐れ縁みたいなものらしい。同じ種族だから、最低限喧嘩しないで、仲良くすることもない、くらいの感じみたいだ。
「お久しぶりに二人に会った感想はどうですか?」
「ええ、まぁ……良かったです」
ヒビキさんの言葉は微妙に歯切れが悪い。表情を見てか(俺からは見えないが)、マゼランは、少し動きを止めたかと思うと、途端に今まで見たことのないような、煽るような笑みを浮かべる。
「おや、おやおやおやぁ? 泉様と何かありましたぁ?」
「貴方には関係ないでしょう」
「ありましたね! これは何か、あ・り・ま・し・た・ね!!」
「うざいです!」
ヒビキさんがうざいって言った!? 今までヒビキさんの口からは絶対に出てこないであろう言葉が出てきた……! これがいわゆる、腐れ縁という奴なんだろうか。普段の二人だったら絶対に見せない面が見えるな。
「はっはっは! はぁ、そうですね。今は、深く聞くのはやめておきましょう。王も待たせていることですし……おっと、そちらがモロゾフ様とアグルス様ですね。申し遅れました。わたくし、マゼランというものです、以後お見知りおきを」
「おう」
「よろしくねぇ」
一応、事前にアルさんとマゼランのことは話している。とはいえ、こういう自己紹介は必要だな。
「では僕も、アルコル・セラフィと申します……一応、肩書は……」
「大丈夫だ。こいつから聞いた。まさか聖王国の領主とはね……ま、今は味方ってんなら、ここで攻撃はしねぇ」
モロゾフさんがそう言ってくれる。それは助かった。ハイカさんたちも、最初は驚いていたが、こうして会ってみれば普通に握手を交わしている。
「ハイカさんとはいつか手合わせ願いたいものです」
「私も少し興味がありますね。異世界の剣技というものは」
ハイカさんとアルさんは、握手の時に少し物騒な話をしていたが。さて、自己紹介を終えたところで、本題はここからだ。
「さて、王に謁見と行きましょう……私たちは二回目ですが」
最初にたどり着いたときは五人。今は十人。結構な大所帯だな。俺たちは宮殿の奥に進む。宮殿は大理石のようなものでできた白い宮殿。
”ファクタム”の土地は、森林地帯ほど、じめじめしておらず、砂漠地帯ほど暑くもない。過ごしやすい環境だ。しかし、マゼラン曰く、あまり治安の方はよくないらしい。
それもこれも、”弱肉強食”という、獣の本質を獣人が引き継いでいるのが大きいそうだが。
と、そんなことを考えているうちに、宮殿の奥、豪華な王の間に到着した。玉座が奥の方にあり、その前に通路の両脇には、それぞれ五人の兵士が並んでいる……相変わらず、強い人たちだ。
昨日謁見した時と、変わらない十人。恐らく、この十人が王のそばに常にいるのだろう。やはり、兵士の強さも序列で決まっているのだろうか。
俺たちは数分、玉座の前で待機すると、横から、その王が現れた。
「――よくたどり着いた。ふむ、何というべきか……”黄金羅針”では、全員の呼び名にはならんか。なら、”空間”の王を救いに来た者たちよ。歓迎しよう」
王は玉座の目前に立ち、そう悠々と言い放つ……この場にいる、竜人を除く全員が、その立ち姿に警戒してしまうほどに、強い。
「昨日、名は言ったが、いない者たちもいたからな。改めて名乗ろう。俺こそは、この”ファクタム”、そして獣人の主にして、”試練”の王、クレオス・テュモス・レオーディールだ!」
獣人の王、クレオスとの、邂逅だった。その姿は獅子。獣人族の特徴たる、その耳と尻尾もそうであるが、その口に見える鋭い犬歯と、力強い手……そして、その圧倒的な立ち振る舞いに、一切の隙は無い。
まさしく、これぞ王であると、誰もが認めてしまう姿なのは間違いない……決してエフィとは比べていない。
王は力強くその名を叫ぶと、そのまま言葉をつづけた。
「さて、貴様らも名を名乗りたいだろうが、今回は不要だ。もう知っているからな……何せ、俺はお前らを称えなければならない。名だけを告げさせてもらうが……イズミ、クラン、アルコル、ヴァティ、ハイカ、アメイ、モロゾフ、アグルス。そして竜人のマゼラン殿とヒビキ殿、よくぞ第一の試練を突破した! その健闘をたたえよう!」
王が力強く言い放つと、両脇にいた兵士たちも大きな咆哮を上げた。それは多分、獣人族流の称え方であった……待て、第一の試練?
(泉、頭を下げい)
そう言われてから俺は急いで頭を垂れる。このタイミングなのか。しかし、ヒビキさんとマゼランだけ頭を下げない。やはり、竜人だけ別扱いなのか。
「さて、試練の褒美だ。何が欲しい」
ヒビキさんとマゼランが目を合わせた後、ヒビキさんが前に出る。
「では、私たちと共に、一芝居打っていただければ」
そうヒビキさんは言った。旅が始まる前、マゼランに聞いた話だ。エフィは、現れた”神災魔獣”を討伐するため、”空間”の王としての力を発揮した。
しかし、それは本来やってはいけない禁忌。他者の領地で堂々と権能を使えば、他の王にも一瞬でバレてしまう。だからこそ、一芝居。
エフィが勝手に権能を使ったのではなく、”試練”の王による要請によって”神災魔獣”の場所まで赴き、討伐したということにする、というもの。
「まぁ、大体想像通りだ! よかろう! その願い、竜人の血と、お前たちの試練の功績をたたえて、実行しよう……というか、もう動かしている。数日もすれば、どの王も、”空間”の王には手が出せなくなるはずだ。だが、本当によかったのだな?」
「ええ、彼にも了承は取っております」
了承……何か、今回の作戦に問題があったのだろうか。
(……王が他の王に従うなど、本来あってはならぬ話……それだけじゃ)
それは、王が話し始めて、俺の思考は遮られる。
「さて、では次の話をしよう。正直なことを言おう。貴様らの試練への態度は素晴らしいというほかない。だが、今回の要求の対価としては、足りないというほかない」
「はぁ……やはり、そうなりますか」
マゼランがため息をつく。”第一の試練”とは、まさしくそういうことか。俺たちの要求に対して、あの王はさらなる対価を求めているのだ。
「すまぬな。これが”試練”であると認めた以上、俺にもどうにもできん。何せ、この大地全域の国に干渉する必要があるからな」
「いえ、申し訳ありません。了承しておりますよ、だからこそ、貴方は”試練”の王なのですから」
少し、重要な内容を飛ばしながら話されている。多分、今回の試練は、王が操作できるようなものではないらしい。
何らかの理由で、俺たちがその試練をこなすことが絶対必須、ということらしい。今回の件を解決するために、何かの力を使っているらしい。多分、権能だろうが。
「ということで、話そう。貴様らには、これから、二つ。いや、やることとしては、三つの試練を出す。ということで、第二の試練の内容を話そう」
「第二の試練、二つの要求を、こなしてもらおう」
さらなる試練が、俺たちを待ち受けていた。
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これにて四章『■■の王』編を終わります。長かった!




