合流
どうも、作者です。二百話です。何と二百話です。我ながらよくやったものです。あ、まだまだ続きます。
――それは、ある日のこと。”黄金羅針”として、初めてダンジョンを攻略する前、ギルドの資料館で資料を集めていた時、私とアイカさんの二人で話していた。
アイカさんも私の『文化紀行記』を読んでいたようで、色々と話をした。でも結局、私たちの一番の共通点は、”黄金羅針”の皆さんの話題だった。
アイカさんは、お姉さんのことが好きだから、きっとその話ばかりだろうな、なんて微笑ましく聞いていたら、アイカさんが一番熱が入って語っていたのは、クランさんと、イズミさんの話だった。
「本当にお二人のことが大好きなんですね」
「うん! 私の命の恩人で! いっちばん応援したくなる人たち! ふふん、ファン一号です!」
「そうなんですね」
そう誇らしげに言う彼女の言葉を聞いて、何故か私まで誇らしくなって、あの時の私には意味が分からなかったけれど、
「あ、そうだ! イズミさんってね! 人を守り切ったと思ったときにさ! すっごい笑顔になるの!」
普段、全くと言っていいほど表情が変わらない彼が、表情筋を動かせるとは、それは意外な事実だった。彼が、その顔を綻ばされるようなことがあるなんて。それほどまでに、人を守れることが、彼にとって大事なことなんでしょう、少し見てみたいものですね――
――思い出した。アイカさんの言葉だった。私、初めて人のことを……じゃないです!?
「ど、どうしてイズミさんが!?」
「やっほー、久しぶりぃ! ハイカちゃん!」
「どうしてヴァティ姉さんが!?」
珍しく、ハイカさんの方も動揺している。どうやら旧知の仲の人らしい。イズミさんと一緒に来たんでしょうが……
「えーっと……まぁ、色々あってな、とりあえず、俺とヴァティさんの二人でみんなを迎えに来た」
そこから、イズミさんは私たちを助けに来るまでの経緯を教えてくれる。
どうやら、今日の昼前に、私たちより先に”ファクタム”にたどり着いたらしく、一足先に獣人の王に謁見したそう。
そこで、事情を説明すると、私たち全員がたどり着かないと、その条件は飲めない、と言い渡されたそう。
私が予想した通り、やはり、エフィさんを救うために”ファクタム”を目指した全員が期限内にたどり着くことが条件だったようです。
そこで、マゼランは、ファクタムにたどり着くことだけが条件か聞き、それに対して王もそうだと言った。つまり、
「こうして、俺たちが救援に行くこと自体は問題ないってな」
「なるほど」
マゼランなら、その程度の予測は立てられますね。はぁ、彼女がいてくれて助かりました。
「ですが、どうやって私たちの位置を?」
「コンパスよ!」
コンパス……黄金羅針ですか。二人が持っている、ほしいものの位置を割り出せる魔道具。確かにそれがあれば。
「簡単な話、コンパスと地図を使って、クランが”ファクタム”から、ヒビキさんの位置を割り出して、それを五感を共有している俺の目と耳越しにナビゲートした」
「私たちだけなのは、一番速くたどり着けるメンバーだったからよ!」
そういう理由があったのですね。ですが、二人が来てくれて助かりました……正直、ここから先、私達だけでいけるかどうか不安でしたし。
「それは良いんだが……ヒビキさん、なんで俺の目を見てくれないんだ……」
「いえ、ただの疲れです」
「疲れか……」
イズミさん……こういう時は単純で助かります。正直、今は顔が見れません……! 私は一体どうしたら!
そう思って、視線を右往左往させていると、ハイカさんと目が合う。ハイカさんもいつもの無表情に戻っており、あまり感情が読めない。
そうすると、ヴァティさんでいいんでしょうか。ヴァティさんとも目が合う。私の表情で何かを察したのか、目をぱちくりさせた後、ハイカさんの方を向く。
「ねぇ……ハイカちゃん。あれってもしかして」
「いったん口を閉じましょうヴァティ姉さん。よくないです」
「んぐ」
「何してるんだ……」
これ、完全に気づかれましたかね……気づかれましたよね……! 私は完全に沸騰しそうになる。こんな感情にはなったことがない。一体どうすれば……そう思っていると、遠くの方からアグルスさんたちがやってきた。
「おーい、大丈夫か……ってヴァティ姉!?」
「あ! アメちゃんもおひさー!」
口をふさがれていたヴァティさんはアメイに全速力で駆け寄って抱き着く。
「うおー! 抱き着くな恥ずかしい!」
「は? 何でいいボディのお姉さんにしがみつかれてんの?」
何だか、不思議な雰囲気に少しだけ気を持ち直す。そうだ、今は過酷な旅の途中でしたね。ふぅ、一旦これは置いて……何とか置きましょう。
「ん? その盾ぇ、もしかしてぇ」
そう言ったのは、アグルさんだった。そういえばそうですね。アグルスさんとモロゾフさん、そしてイズミさん、お三方は
「貴方が女神ちゃんが言ってたぁ」
「! 貴方が未来さんの眷属!」
「間違いなさそうだな。あいつのことを未来っていうのは、こいつくらいだろ」
「そうねぇ」
赤月の女神の眷属。全員がこの場で出会った。
さて、私も少しだけ持ち直したので、二人に今の状況を説明する。時々、顔が真っ赤になりそうになるのを何とか抑えて。
「なるほど。それでこのワームを……ウナギみたいなもんか?」
ビッグワームは、イズミさんが防いでくれたあの一撃で、完全に沈黙したようで、大地に横たわっていた。
「ウナギ……あぁ、ツクリも言ってた魚ですね。多分全く違います。すごくまずいので」
「まずいのか……一応、食料は持ってきているが」
そう言って保存食を取り出すイズミさん……。それで問題は解決するのですが……そうですね。久々に、イズミさんの手料理が食べたい気分です。
本当なら、食べなくていいなら、食べたくなんかはないはずなのに。
「少しだけ、食べてみませんか? これも、”思い出”ということで」
イズミさんとヴァティさん以外、露骨にいやそうな顔をする。それはそうでしょう。肉の形をした砂なんて評価を、私が教えましたから。
「ふふ、いいじゃない! お姉さん、思い出って好きよ!」
「はぁ、姉貴なら真っ先に食うだろうな……ああ、まずいんだろうが、何とか調理してみようか」
やっぱり、イズミさんの顔は見れませんね……でも、やっと食べたいものが食べられる気がします。
イズミさんが人数分の肉を削いで、調理を始める。その間は肩を寄せて、体を温める。一瞬にしてヴァティさんはパーティになじんでいる。
一か月の旅が、終わる。でも、たくさんのことがここから始まるのでしょう。エフィさんを救えても、これから先、たくさんの戦いに巻き込まれる。
その間に、私は、この恋心をどうするべきでしょうか……何だか、不思議な気分ですね。でも、ええ、悪くない気分です。
イズミさんは全くもって自信がなさそうにその肉を出す。一応、隣に保存食も置いて。
「これを食べて休んだら、出発しましょう……少し早いですが、旅の終わりに、祝福を」
どこか疲れた雰囲気は完全に消え去り、動く活力がわいてくるが、少しだけ休んで、私たちはもう一度出発する。旅の最後の味は、全くもって美味しくなかったけど、どうしてか、甘く感じた。
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