助け方
どうも、作者です。百九話です。
「”辻褄合わせ”?」
私は説明を始める。どうやってエフィさんを、この状況から助けるのかを。
「……つまり、魔王が現れたのを、侵略行為以外の正当な理由を作る、ということですか?」
ハイカさんは流石に理解が早い。その通り、
「今回の問題点は、エフィさんが敵地で、魔王の力を使ってしまったことです。これは、傍から見れば、明確な侵略行為でしょう」
「言っちまえば、他の国から唐突にミサイル……特大魔法を撃たれたようなもんだしな」
モロゾフさんの例えは的確である。そんなことをされれば、戦争を仕掛けたようにしか見えないだろう。それにしても、モロゾフさんは、姿は子供にしか見えませんが、かなり経験を積んでいるのでしょうか?
「しかし、今回の場合は状況が違います」
「魔王の力を解放した”正当な理由”がある……だな」
「そういうことです」
確かに、それだけなら侵略行為になってしまうが、今回は急に現れた”神災魔獣”の討伐という正当な理由がある。
放っておけば国一つ、最悪の場合は、大陸の半分にまで大損害を与えかねない魔獣を討伐という理由があった。つまり、過程はともかく、正当な結果があったのは間違いない。
「だけど、それでも、そこに魔王がいたのがそもそもの問題なんだろ?」
「そうよねぇ、他の国からしたら、唐突に魔王が現れたのは間違いないわぁ。だって、他国の領地に魔王がいたっていう事実は変わらないもの」
そう、そこの理由の説明がつかない。モロゾフさんとアグルスさんの言っていることは正しい。言ってしまえば、今のままであれば、自分がこっそり無断で敵の国に特大魔法を放とうとしたら、そこに”神災魔獣”がいました、と言っているに等しい。
「……あ! だから、”辻褄合わせ”!」
「そういうことです。魔王がたまたまいたという事実を、”神災魔獣”が出現したから魔王がそれを討伐しに来た、という過程に塗り替えてしまえばいい」
そう、ハイカさんが言った通り、今、他の国からすれば、侵略行為が行われた、という風に見える状況を、最初から”神災魔獣”が現れたから討伐しに来たという状況が正しいものだと信じ込ませればいい。
「ですが、それは難しいんじゃあない? たとえ私たちが広めたって、少なくとも、”聖王国”と”亜人街”は認めないわよぉ」
そうでしょうね。アグルスさんの言う通り、今の状況が都合のいいその二つの国にとっては、そんな事実は認めないでしょう。
「それならば、誰も無視できない人に声明を出してもらえばいい」
「誰も無視できないほどの人物……それって」
「それこそ、エフィさんと同じ、それぞれの種族の頂点者――”王”に」
それこそが、私の考えた計画。エフィさんを救う方法だった。そのために向かうのは――
「――”獣人の王”がいる、獣人の国”ファクタム”、ヒビキが向かうのはその国です」
俺たちは、マゼランからヒビキさんが考えているであろう計画について聞かされる。
「なるほど、辻褄合わせか。それに、確かに獣人の王が今回の件について理由を話してくれたら、流石にどの国も無視できんじゃろう」
「今回、エフィさんがやったことは事実ですし、その証拠もあります。それに、魔王が一か月もただ閉じこもり続けるだけなら、その状況にも説得性が生まれる。要は嘘をつくのではなく、都合のいい真実に解釈を、彼の王によって説明してもらう、ということです」
かなり難しい話だが、要は影響力がある人間に、今回の件を説明してもらって、それが正しいと確定してしまう、ということか。
「何でしたら、獣人の王が、エフィ様に応援を要請した、ということにしてもらうのが一番良いでしょう。そうすれば、今回の件に文句を言うということは、獣人の王に文句を言うに等しいと言うことになりますから」
完全な後ろ盾だな。だが、現実問題として、
「どうやって、その王にそんな辻褄合わせをしてもらうんだ? というか、なんでその”獣人の王”なんだ?」
種族の数だけ王がいるのなら、他の王に頼むことができるんじゃないだろうか。いや、まぁ普通に考えれば、この世界でもトップクラスの統治者なのだから、普通に考えたら謁見する難しいだろうが。
「理由は三つ、一つに、まずこれは獣の大陸で起こったことです。そうなると、獣の大陸にいる王に声明を出してもらわなければなりません」
それは確かにその通りか。要は、他の大陸にいる王にそんな話をさせたところで、そもそも他の大陸に魔王を派遣するのはおかしいだろ、というツッコみであふれるか。
となると、獣の大陸にいる王、必然、獣族の王の誰か、になるわけか。
「二つ目、私たちが謁見できる伝手があるかどうか。これに関しては、獣人の王に関しては、私もヒビキも伝手があるので、謁見は簡単にできます」
さらっとすごいことを言ったな。ヒビキさんはまだわかるが、マゼランもあるのか……。竜人だから、ではないだろう。相変わらず得体のしれない竜人である。
「そして、三つ目、そもそも他に選択肢がありません。”小人の王”と、”人間の国家”である聖王国は論外ですし、もう一つの”帝国”は、”聖王国”側を抑え込めません。そして、”魚人の王”ですが……彼の王は神出鬼没ですので、一か月で会うのはほぼ不可能です」
確かに実質一択だな。”小人の王”はまともに取り合ってもらえず、人間の国同士は仲が悪い故に、互いに影響力が薄い。そして、”魚人王”は会うのが難しい、か。
それにしても、今、”人間の国”とは言ったが、”人間の王”はいないのだろうか? 選択肢にすら出ないということは、いないのだろうが……人間だけいないというのは不可解だな。
(そこは後々分かる……それより)
「選択肢は一つと言ったが、”魚人の王”に関しては、お主のスキルを使えばいいのではないか?」
そういえば、マゼランは俺達を”最善”が分かるスキルで救ったって言ってたな。確かに、それを使えば行けないこともなさそうだが。
「残念ながら、私の『正義の天秤』はもうほとんど残っておりません! 二人を使うのにつぎ込んだので……あと一、二回程度なら使えるでしょうが、それでは難しいでしょうね」
そう言われると、俺たちは反論できない。つまり、実質俺たちのせいでスキルが使い物にならない状態になっているということだ。
「ま、そういう訳ですので、私たちが向かうのは、”獣人の王”がいる、獣人の国ファクタム、という訳です!」
「となると……”シゲン”とは正反対ねぇ」
「そうですね……どのみち、聖王国横断になるでしょうが、お二人のパーティとは道中の合流は難しいでしょう」
ヴァティさんとアルさんがそう捕捉する。それにしても、敵国を横断するのか。何とも厳しい戦いになりそうだ。それにヒビキさん達と合流できるのは、
「恐らく、ファクタムに着いてからになりますね。もちろん、あちらも目指している前提ですが、どうし絵もルートが反対になるので、確実にそうなります」
「……最後に聞こう。猶予は?」
「一か月。普通に進めば、余裕のある期間です」
”普通”に進めれば、か。それは、できない気しかしなかった。
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