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どうするのか

どうも、作者です。百八話です。

「――ご紹介に預かりました。この土地の領主、『節制』の体現者、アルコル・セラフィです。皆、アルと呼ぶので、お二人も気軽にアルとお呼びください」


そう自己紹介をしたのは、高価そうな、軍人が着ていそうなコートを袖を通さず羽織って、その上で、中に着ているのはシャツ一枚というかなりへんてこな格好をしている男性だった。


それに、腰にかけているもの、あれは何となくなじみ深いような、なじみ深くないような、ある意味で見慣れた武器、刀だ。


「……あぁ、この格好は、僕、『環境完全耐性』のせいで、寒さも暑さもあまり感じないので、薄着なんですけど、この上着は、一応領主というか、体現者の証なので、一応羽織っています」


つまり、完全に着ると熱いが、しかし着ないわけにもいかないので、とりあえず、肩に掛けるだけの状態になっていると……見ているこっちが寒い。


しかし、彼がこの国の領主の一人、本人は体現者と名乗っていた。領主ということはかなりのお偉い方で、やはり警戒をした方が……


「ああ、お二人の素性は聞いたのでお気になさらず。僕は、異世界人とか、魔族とか気にしないので」


……どういうことだ。この聖王国の領主、つまり俺たちは敵になるべきじゃないのか?


「彼はこの国でも珍しい完全中立ですよ。まぁ、色々と理由はありますが、そこらへんはまたの機会にしましょう」


それでいいのか……? まぁ、もう一人の女性の話も聞きたいし、何となく長くなりそうだしな。それに、素性を聞いたうえでこんな待遇をしてくれているのなら、問題はないだろう。


「あ、じゃあ今度はお姉さんの番ね! はい、私の名前はヴァティ! 元勇者パーティ、二人からすると、ハイカちゃんとアイカちゃんのお父さんね! と一緒に旅をしていた一人です! ポジションはタンク! 今は、アマテちゃんの指示で、聖王国に潜入調査中、って感じね!」


すごく元気な女性はそう自己紹介する。前代勇者のパーティメンバーの一人、つまりギルマスことソテルさんの仲間でもあったということだ。


そして、ポジションがタンク、俺からすれば、先輩でもあるな。そして、聖王国に潜入調査か、それでこんなところにいるのか。


「ま、私たちの自己紹介はこんな所かしら! ちょっと唐突で呑み込めないかしら?」


「いえ、結構ビックリしましたが、大体把握しました」


「うーん! 真顔で言われたらどっちか判断つかないけど、まぁ大丈夫そうね!」


ヴァティさんは俺の顔を覗き込んで、じっと観察したかと思うと、何かに納得して親指を立てる。


何というか、結構楽観的な人だな、この人。ソテルさんは真面目な人だったが、こっちは飛びぬけて明るいな。


「とりあえず、二人の自己紹介が済んだところで、お二人のパーティメンバー、もとい”魔王”の状況について話しましょうか!」


マゼランがそう切り出してくれる。エフィをどうするか、今はそこだな。


「もうお二人にも共有しましたが、元々隠れてダンジョン街にいた魔王たるエフィ様が、ダンジョン街の危機に力を解放したことで、それが大陸全土に捕捉された、という状況です」


「そこまで聞いて、それでも俺たちを見逃してくれるのか……!?」


どこまで行っても、アルさんは聖王国の人間である。なら、流石に感化できる状況ではないだろう。


「まぁ、本当に侵略しに来たのならともかく、どうもそういう訳じゃないみたいですし……それに、今回の件は、起こしたのは間違いなくこちら側ですから」


こちら側……つまり、”神災魔獣”を放ったのは、聖王国という訳か。


「恐らくですが、お二人が止めた”ダンジョン暴走(スタンピード)”は、その予兆だったのでしょう。それの時点で、あのギルドマスターが、見逃していたのが不可解ですが……」


「……”あれ”はそういうことか」


クランが言った”あれ”。それは、アイカの誘拐の件だ。そうか、あれも、かなりピンチではあったとはいえ、ハイカさんが最初から本気を出していれば、簡単に解決できる事件ではあった。


要は最初から攫われたのがアイカ以外ならもっと事件は簡単だったしな。つまり、其れすら隠れ蓑だったわけだ。もしくは、あれも”神災魔獣”を呼び起こした時の布石だったのかもしれない。


そのことを、マゼランや他の二人にも説明する。


「……ふーん、アイカちゃんの誘拐か。流石にそれは、お姉さんもむかつく。しかも、それすら隠すための布石とはいえ」


それを聞いた、ヴァティさんも苛立ちを隠さない。それもそうだろう。仲間の娘が誘拐されて、危うく殺されかけたのだから。


「ふむ、皆さん、それぞれの理由で今回の件に対する心象は良くないわけですが……泉様、どうしますか?」


マゼランは俺に対して、試すように聞く。エフィをどうやって助けるか。どうしてその聞き方なのか、よく分からないが、一つ確かなのは、


(こやつは解決手段を持っている、というより知っておるな)


そういうことだろう。だから、俺たちが必要なのは、マゼランの助力を得ることだ。別に、このままでも十分協力してくれそうだが、何となく、こいつは他の何かを欲している気がする。


それは、


「マゼラン、”借り”を返してくれ」


多分、このことだ。こいつと初めて会ったとき、俺はこいつを助けた。いや、助けさせられた気もするが、ともかく、その”借り”がある。それを使えと、こいつは言っている。


「――了解しました♪ それでは、私も今回の件、全力で助けさせていただきましょう! 他の二人はどういたしますか?」


「もちろん、助けるわよ! お姉さんに任せなさい!」


「あまり、領地を離れるのは良くありませんが、流石に今回の国のやり方は気に入りませんので、助力させていただきます」


頼もしい二人の協力を得られそうで、何よりである。



「――さて、エフィさんの救出方法ですが」


私たちは、ギルドマスターの執務室に集まっていた。メンバーは、残った”黄金羅針”のメンバーと、アイカちゃんと、ギルドマスター、そして赤月の女神の眷属二人。


「一つ聞きますか、お二人は協力してくれますか?」


「俺としてはしたくねぇ、が、あの女神の”駒”を助けないわけには行かないしな」


「それに、私としては流石に助けなきゃいけないものぉ」


それは、一体どういうことだろうか。SSランク冒険者の一人、『調教師』アグルス。赤月の女神の眷属と聞いたときは驚きましたが、いえ、そうですか。”赤月”の眷属ということは、


「もしかして、アグルスさん。魔尾ですか?」


私の考察に、他の皆さんが驚く。まさか、SSランク冒険者に、魔族がいたとはだれも思っていなかったのだろう。


「ええ、正解よ。私は、魔人の一種、魔尾よ」


そう言いながら、腰から尻尾を取り出す。その尻尾は確かに、魔尾の証だった。


「あとで、魔王様にも挨拶しなくっちゃねぇ」


それにしても、ペースを崩さない方ですね。他の皆さんも、何か呆れている。特に元から知り合いだった人は。多分ずっとこういう感じの方なんでしょうね。


「えっと、それでエフィさんを助ける方法があるんだよね?」


「ええ。本当は、泉さん達とも合流したいとこですが……恐らく、目的地は一緒なので」


「”目的地”が一緒というのは?」


あの時、”彼女”はこう言った。”一か月後に合流しましょう”と、それはつまり、


「マゼランは、私と同じ結論に至ると思いますので、必然同じ場所に行くでしょう。それは、エフィさんを救うためです。その方法は、後付けの”辻褄合わせ”です」


私は、エフィさんを救うための方法を説明する。

読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。

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