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三月羅針譚~盾持ちと吸血鬼~  作者: FOXtale
悠久忘れぬ■■の景色
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ダンジョン大脱出

どうも、作者です。百五話です。

「ぬぅあーぜ貴様がここにいるマゼラン!?!?」


変な言葉を出しているクランはさておき、本当になんでここにいるんだこいつ?


「お二人をお救いに! といいたいところですが、別の理由で皆さんのところに来たんですが……まぁ、そちらは彼女にお任せしましたので♪」


彼女……ハイカさんのことだろうか。


「よくここまでこれたな」


「まぁまぁ、そこらの話は無事に脱出してからお話ししましょう。時間がないのでしょう?」


そう言って、マゼランは口元に指を当て、いつもの妖艶な笑みに変わる。はぁ、この感じ久々だな。とはいえ、時間がないのは間違いない。


「じゃが、しかしこいつは!」


あぁ、まぁ俺たちの素性を知っていたな。それは間違いない。しかし、


「お前もわかってるだろ。俺たち二人じゃどう足掻いても脱出できん」


アメイのようにマッピングする能力も方向感覚もない。ただでさえ、この三層と二層は、上下でつながった複雑な構造だ。それを今から二人だけで行動しても、まず間違いなく生き埋めになる。


それに対して、どういう方法かは不明だが、俺たちの所までこれたのだ。特にあの複雑な一階層を乗り越えて。なら確実に俺達よりましなのは間違いない。


「それに、多分”敵”じゃない」


「むぅ」


まぁ、”敵”じゃないからこそこいつは不気味だが。とりあえず、クランは納得したらしい。どのみち、命がないのなら、鬼やら、蛇に騙されてでも今生き残ったほうがいい。


「ふふ、泉様にそう言っていただけるのは大変ありがたいです♪ さて、ではつい来てください、お二方。あぁ、ただ一つだけ、しばらく皆さんに会えないのは覚悟してください」


「? わかった」


「何すぐ理解しておるんじゃ!」


さっきも言ったように生存優先だ。とりあえず、今はこのダンジョンから脱出するしかない。


そして、俺はクランを抱えたまま、いや、クランはいつの間にか、肩と腰にある足場に乗っている。おかげで両手がフリーだ。おかげで、マゼランに行きやすい。


「クラン、ついでに元の姿に戻れ、そっちの方が軽い」


「それもそうじゃの」


そう言って、クランは大人の姿から、元の幼女姿に戻る。これで多少は速くなるだろう。


「おお、子供姿を見るのは初めてですね」


「そういうのはいい、速く進めぃ」


「了解です♪」


やっぱり、クランの正体を知っているな。じゃないと、子供の姿に戻ったら驚くはずだ。そうならないあたり、どこまで知っているのやら。


俺はマゼランについて行く。こいつ、かなり速いな。速度に関してはハイカさんより速いかもしれない。


「クラン様! 上から岩が来るので壊してください!」


「む!」


マゼランが言う通りに上から岩が落ちてくる。それをクランは槌で破壊する。あんまり大振りだと俺のバランスが崩れるので最低限してほしい。


(文句言うではないわ!)


非常時だから我慢するか。しかし、よく岩が見えたな。それだけじゃない。こいつ、どういう訳か、岩が落下する場所や、崩落した道が事前に分かっている気がする。


「お主、どうやって道が分かっておる」


クランがそう聞く。そう何というか、道選びに一切の迷いがない。マゼランは恐らくこのダンジョンに入ったことがないはずなのに。


「いえいえ、道など分かっておりませんよ。ただ”最善”を知っているだけです♪」


全く意味が分からん。どんどんこいつに聞きたいことが増えていくな。マゼラン、俺が異世界に来てから、ある意味ではハイカさんレベルで世話になっている人なのだが、全く素性が分からないし、何故か一切感謝する気を覚えない。


まぁ、ある意味で振り回されてるせいでもあるが。何が一番意味が分からないかというと、いろいろ知っていそうなハイカさんや、ギルマスですら”よくわからない”という人物であることだ。


……ヒビキさんなら、何か知っていたりしないだろうか。そう言えば、ヒビキさんとエフィと出会ったのはこいつがこの街を離れた後のことだったな。二人に全く関係のないから、一度も話を聞いたことはなかったが。


「マゼラン、一つ聞いてよいかのう?」


「何でしょう!」


「これ、本当に上に戻れるのか?」


クランが何か気づいたらしい、そして、俺も何となく階段を下っていて気付く。ここは、あの地中に潜る鮫を倒した階段だ。つまり、戻っている?


「……さーて! それはどうでしょうか!」


こいつ、わざと焦らしてやがるな。何というか、まずいことを聞かれた、という感じより、”気づいちゃいましたか?” みたいな雰囲気を感じる。


だが、さっきしばらく会えないと言ったのと何か関係があるのか? どうやら、クランの方は何か気づいたらしい。


「お主まさか!」


「まぁまぁ、私には何かあまりわかっていませんが、恐らくクランさんの考えている通りかと」


「お主もわかってないのか! というかお前は気づけい!」


どうも俺も知っている要素らしいが……というか、共有してからすぐ分かるんだが……あ、まて、このダンジョンから出入り口以外から出る方法確かにあるな。あれか!


「おっと、泉様も気づいたようですね。それでは、そこまでさらに急ぎますか! あ、そこに岩来るので気を付けて」


先に言ってくれ。



――そして、移動を始めてから一時間ちょっと。俺たちはダンジョン深部に戻ってきていた。つまり、ここは、”四層”。


「なるほど、”ダンジョンの歪み”ですか。確かにここなら、ダンジョンから脱出できますね」


四層の下、そこには青白い光が広がっている。この光に向かって落ちれば、この世界のどこかに飛ばされてしまうらしい。


確かに、ここならダンジョンから”は”、脱出できるな。


「じゃが、大抵死ぬやつじゃろうが!」


そう、どこに飛ばされるかわからない以上、海の上だの、上空数千メートルに飛ばされる可能性がある。なので、正直ここに飛び込みたくないのだが。


「さて、お二人は私を信用してくださいますか? ちなみに、私から飛び降りますのでそこはご安心を」


なにも安心できないが。だが、正直一択である。何せ、もうほとんど道はふさがっている。つまり、ここから飛び降りない限り、もう脱出できない。


「信じるも何もないわい! もう飛び降りるしかなかろう!」


「その通りだな」


俺たちは、マゼランの方を見ると、マゼランも笑いながらうなずく。


「さて、それでは飛び降りましょうか」


「死んだら恨むからな!」


「その時は私も死んでますからねぇ」


その時はこいつだけ地獄に落とそうか。まぁ、多分すぐに死ぬことはないと信じよう。マゼランは、足場から、飛び降り、下へと落下していく。


俺も少し足が震えるが、やるしかない。もう、クランに背中を押してもらおうか。


(覚悟を決めい!)


発破をかけられた。仕方ない、さっさと飛び降りるか! 俺は足場からジャンプし、どんどんと落下していく。ひもなしバンジーって現実でやることあるんだな!


青白い光がどんどんと近づき、ぶつかる。そう思った瞬間、光に包ま――気がついたら、晴天の下にいた。ここは……雪山の頂上か!


「んぎゃー! 日光!」


日光の下でクランが悶えている。どうにか『ドレイン』で耐えてくれ。


「泉様! 雪滑りはできますか!」


いや、できるが! スキー板がない! はっ……! 俺は盾を背中から取り出し、足元に設置する。めちゃくちゃ重いから凹むかと思ったが、雪は意外に頑丈で、何とかなりそうである。


急斜面の雪山を盾で下っていく……! 早く木陰まで行かないとクランが死にかねん! それか『ドレイン』のされすぎで俺が死ぬ! どのみち両方死ぬ!


「おっと、泉様、そろそろ下が見えてきましたよ! あ! 木に注意してください!」


だから言うのが遅――俺は木にぶつかった。記憶はそこで途切れていた。あぁ、あっちは無事だろうか。

読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。

これにて三章『悠久忘れぬ”冒険”の景色』終了です!全然終わった感ありませんね。

次回から四章『■■の王』編です。よろしくお願いします。

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