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三月羅針譚~盾持ちと吸血鬼~  作者: FOXtale
悠久忘れぬ■■の景色
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”頼る者、頼られる者”

どうも、作者です! 百話です! ついに百話です! めでたいとしておきましょう!

――いつからだったろうか。僕が、何もできないなんて思うようになったのは。


魔王になりたてだった頃は、自分がこの国を守るんだっていう使命感で溢れていた。


僕が魔王になった頃は、魔眼の国でいざこざが起こり始めた時だったから、いつ、こっちに攻めてくるか分からなかった。


だから、おとうさんが考えた機構を、僕なりに作り直した防衛機構を急いで導入したり、信頼できる人や実力がある人に役職を割り振ったり、とにかく色々と充実していた。


でも、そんなことをやって五十年くらい経った時。国は完全に安定しだした。


がむしゃらに仕事をやっていた僕は、そこで初めて立ち止まった。それで気づいたんだ。もう、やることがないって。


内政は安定していて、外交はほとんどやっていない。防衛機構によって、魔尾の領地には魔獣がほとんど存在しなくなり、他の国から攻められる心配もない。


何より、ぼくができる仕事は、配下のみんなが代替できた。僕がやろうとしても、


「王はやらなくとも良いですよ。私共がやれますから」


なんて言われて、仕事を取られてしまう。実際、僕がやるより皆がやるほうが速いから、僕がやる意味もない。


戦いなんて、僕が魔王になってから百年、もうほとんど起こっていなかったから、魔王として戦うこともなかった。


何も、やることがなかったのだ。今僕ができることは、誰かが代替できてしまう。


それでも、趣味の魔法の研究をしていれば、きっと皆のためにもなって、時間をかけている間に何か仕事がまわってくるだろう。そう思っていた。


一年、五年、十年、二十年......。何も、変化はなかった。僕の状況に変化はなかったのだ。


安定した国は、むしろより効率化が進んでいた。僕が使えるかも分からない魔法の研究をしている間に、国は発展していた。


その間、僕がやったことは、持ってこられた書類に、承認をするだけだった。


僕がいなくても国が回るという事実は、僕をゆっくりと蝕んでいった。


最初に、国の運営に僕はいらないと気づいた。安定して、それでゆっくりと発展していく今の国に、僕はいらなかった。


次に、話すのが怖くなった。みんなが何を言っているか分からなくなったから。簡単な話だ。直接国の運営に関わっているみんなと、間接的にただ書類に書かれた報告を見ている僕とでは全く理解度が違うのだ。


だから、皆が話している内容は、ときが進むにつれて理解できなくなっていた。


最後に僕がやっていることは無意味だと気づいた。職業やスキルを介さない魔法は、誰でも簡単に習得できるわけじゃない。


その上で、職業によって手に入る魔法のほうが圧倒的に便利で汎用的だった。当たり前だ、神が作ったシステムなのだから。


そして、今更研究などしなくとも、職業魔法ではどうにもできないことを他の魔法で補うということは、千年以上前からなされていたことだ。


つまり、誰かのためになる魔法は、とっくに開発され尽くされていた。


今、僕がやっていることは、趣味の範疇から抜け出せてなどいなかったのだ。実際、数十年やっていた研究は、今の国に何も役立っていなかった。


ただの、僕の自己満足だったのだと、気づいてしまった。


安定した国で、僕だけが取り残された。僕だけが、この国にいる意味を見失っていた。


それだけならまだ良かった。閉じこもっていればいい。趣味は趣味だと逃げて、自分のやりたいことだけやれるのなら、それで良かった。


それを許さないのは、自分の立場だった。僕はどこまでいっても魔王だ。魔尾という種族の頂点者にして、支配者であるのは変わりなかった。


一年に三度ある祭り。その時だけは、誰もが民であればだれでも王に謁見することを許される日。僕からすれば、必ず出席しなければいけない行事だった。


それだって、最初は充実した時間だった。皆、僕を憧れの目で見て、たくさんの話をしてくれるのはうれしかった。憧れの目で見られるのは、恥ずかしかったけど。


いつの間にか、それは苦痛だった。みんなが向けてくる笑顔が、果たして本当に僕に向けられた笑顔なのかわからなくて、何もできていない魔王なのに、皆が憧れの目を向けてくるのが申し訳なくて。


何もしていない、何もできていない。それでも民は僕に尊敬のまなざしを向けてくる。配下たちは、当たり前に仕事をやってくれる。誰も落胆してくれなかった。誰も僕を無能だと罵らなかった。それが何より、辛かった。


その気持ちがあふれたのは、一番最近の収穫祭の時、謁見の時間が終わって、自室の鏡を見た時。多分誰も気づかなかっただろうけど、必死に作った作り笑いはなんて滑稽なんだろうと、なんて――みじめなんだろうと思った。


だから、逃げ出したんだ。何もできない自分がここにいる意味はないと思い込んで、家出した。



――きっとそれで気ままに一人で旅をしていたら、心細かったかもしれないけど、気はいくらでも晴れただろう。でも、思っていた通りにはならなかった。きっと、思い通りにならなかったから気づけたんだ。


何故か、家出してたどり着いた土地には、幼馴染がいた。心細かった僕には彼女の存在が何より心強くて、パーティに入らないか、って言われたときはうれしかった。


そして、皆でアイカちゃんを助けた時、僕はいつの間にか忘れていた、達成感があった。アイカちゃんに感謝されて、すごくうれしかった。


冒険者としてたくさんのことを教えてもらって、たくさん修行をつけてもらって、ダンジョンに挑んで。その先で僕は、たくさん役に立ちたいという気持ちばかりが空回りして、その度に落ち込んで、その度に慰めてもらった。


このパーティにいるのは、すごく心地よかった。皆、当たり前に自分の役割を全うして、背中を互いに預けてる。それはとてもかっこよくて、その一人であるのが、誇らしくて。


それに、アメイさんには感謝しなくちゃいけない。僕の忘れていたことを思い出させてくれたから、僕の忘れていた物に、気づかせてくれたから。


何より、今皆と戦って、やっと気づいた。イズミさんが背中を預けてくれてやっとだけど……僕は、僕は頼られたかった。誰かに、”頼られ”たかったんだ。


でも、違ったんだ。僕はずっと、”頼られて”いた。民に、配下に、そして、パーティの皆に、僕はずっと頼られていた。そんな当たり前のことをやっと気づいた。イズミ君に、”頼んで”、やっと気づいたんだ。


誰もが皆、何でもできるわけじゃない。いつでも役立つわけじゃない。だから、”頼る”んだ。そうしていつか、自分も”頼られる”んだ。それはきっと、当たり前のこと。


気づくだけでよかった。僕はずっと、誰かに頼って、頼られてきたんだから。だから、イズミ君、今はありがとうの代わりに、唄うよ。


『大地は灼熱、業火に焼かれろ――』


今は、特別な者じゃなくていい。僕は、”黄金羅針”のキャスター、エフィ。今、皆に”頼られる者”だ。

読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ!

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