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【全24話・毎日18時投稿】異世界よりもヤバいとこ〜バグってはいけない警察学校〜  作者: いふや坂えみし
第三章 平成三十二年十月六日〜七日

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第十八話 よく予習してますね

 寮室へ戻ると、すでに八時近くになっていた。急いで準備しなければホームルームに間に合わない。一時限目は点検教練なので、装備品が多い。一時限目の準備を終えると、寮室の仲間たちが二時限目以降に必要なものを読み上げてサポートしてくれた。ありがたい。


 なんとか準備を終え、全員で第一教場へ向かう。ホームルームを終え、拳銃庫へ向かう途中、「大前、警笛は大丈夫か」「また期待してるぞ」などの声に「うるせぇ、自分の心配してろ」と返す大前の声を聞きながら移動する。


 訓練中、昨日のような大きなハプニングはなかったが、それでもまだまだ通常点検の完成度は低かった。



 二時限目の伝承教養では、外部講師を招くことになっていた。


「いいかお前ら、絶対に居眠りなんかするなよ。真剣に話を聞くように。わかったな」


 河松教官が、外部講師が講堂に入室する前にくどいほど念を押す。依頼して招いた講師に対し、不快な思いをさせてはいけないということだろう。


 講師として招かれたのは、戦争の記憶というテーマで全国を回って講演をしている年配の男性だった。秋田県警の教場当番の一人が教官室まで外部講師を迎えに行っていた。ドアの前で待機していたもう一人の教場当番が外部講師の移動に合わせ、講堂のドアを開ける。講師が演台へ向かう間に教場当番も自席に座る。


「学生、起立!」


 号令は河松教官がかけた。外部教官が招かれている場では、教場当番ではなく教官が号令をかけるのが決まりらしい。


 特攻隊兵士の手記や、残された家族の手紙などが紹介され、平沢にとっては興味深い内容だったので、居眠りの心配はなかった。


 講演が終わり、教場当番に先導されて外部講師が去ると、怒気を隠そうともしない河松教官が前に立つ。


「一〇一号室湯澤、一〇五号室安倍、一〇八号室小野田。前に出てこい!——急げぇ!」


 三人の学生たちが慌てて前に出る。


「俺、居眠りするなって最初に言ったよな。湯澤、従う気がないのか」

「申し訳ありませんでした!」

「行動で示せ!——安倍、小野田、お前ら何回目だ!」

「申し訳ありません!」

「はい、すいません!」

「やる気ねぇなら今すぐ辞めろ!いられたら迷惑だ!——湯澤ァ!自分は関係ないって顔してんじゃねぇ!もっと真剣に考えろ!」


 今回は興味を持って聞くことができたが、今後絶対に居眠りをしないかと言われると、自信はない。今回はたまたま運が良かっただけかもしれないと思いながら、河松教官の叱責を神妙に聞き、二時限目が終わった。



 昼食が始まると、湯澤は一〇一の面々から励まされたり、いじられたりしていた。佐久本教官からは苦笑されつつ激励され、恐縮している様子だった。


 三時限目は地域警察の授業だ。授業前、教官の水差しを用意する。本館の給湯室には、前日の教場当番が洗った青みがかって透明なガラス製の水差しが乾かしてあり、それに水を入れて教壇に置く。


 授業の号令は初めてだ。扉に意識を向けたまま緊張して待つ。扉が開くと同時に号令をかける。


「起立!」


 佐久本教場の学生が一斉に起立する。藤江教官はゆったりと教壇へ進む。


「礼!——着席!」

「はい。それではまず、自己紹介をします。私は藤江加奈子(ふじえかなこ)と言います。交番勤務十年、本部の通信指令課に十二年、警察署の地域庶務係に八年、警察学校勤務は今年で二年目です。これから地域の授業を始めていきますが、みなさん、地域警察では何をするかわかりますか」


 半数以上の学生の手が挙がる。早かったね、とつぶやきながら藤江教官は一人を指名する。


「はい。大前です。地域警察は、交番勤務、通信指令、機動警ら、鉄道警察を管轄してます」


 警らとはパトロールのことだ。


「はい、そうですね。宮城県警のパンフレットにもそう書かれてますね。もう少し詳しく見てみましょう。六法の表紙を一枚めくってください。五十音順の索引になってますので、『ち』の『地域』を探してください。すると、『地域警察運営規則』がありますね」


 法令名の下にページ数が書かれている。学生たちは一斉に六法で該当箇所を探し、探し当てたものから顔を上げる。


「はい、見つけましたか?五百三十八ページですよ。大丈夫ですか?では、同じページの第五条を読んでください」


 藤江教官は最前列の学生を指名する。


「はい。地域警察勤務第五条。地域警察官は、次の各号に掲げる勤務種別に従い、それぞれ当該各号に定める勤務方法により行う地域警察勤務(次項において「通常基本勤務」という。)を通じて、第二条の任務を達成するための活動を行うものとする。一 交番勤務(臨時交番勤務を含む。以下同じ。)立番、見張、在所、警ら及び巡回連絡」

「はい、そこまででけっこうです。どうですか?法律の文章、初めて読んだ人もいると思いますけど、まあ、わかりにくいですよね。第二条っていうのが、ざっくりいうと警察官は市民の安全を守るってことなんですが、それを達成するために交番勤務では立番、見張、在所、警ら及び巡回連絡をしますっていうのが、第五条の一の内容です」


 藤江教官は教場を見渡す。


「今言った、立番とかの内容、わかりますか?」


 数人の学生が手を挙げ、教官が指名する。


「はい、ええと名前は?」

「湯澤です。立番は交番の前に立って警戒、見張は交番の中から座ったまま周囲を警戒、在所は書類作成などをしながら周囲を警戒、警らはパトロール、巡回連絡は各家庭や事業所を回って防犯指導をしたり要望を聴取したりすることです」

「はい、よく予習してますね」


 そのように授業は進んでいった。授業後、学生たちが話し合った結果、名前の書かれた座席図を用意して教壇に置いておくことになった。さっそく学生の一人が作成を始める。


 今田が水差しを入れ替え、平沢が黒板の文字を消す。黒板消しクリーナーは第三教場の向かい、自動販売機が置かれた休憩スペースの柱の前に置かれた机の上にあった。

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