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【全24話・毎日18時投稿】異世界よりもヤバいとこ〜バグってはいけない警察学校〜  作者: いふや坂えみし
第二章 平成三十二年十月二日〜五日

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第十話 誇りと使命感を持って、国家と国民に奉仕すること!

 

 (あさ)五時半すぎ。


「お前ら、起きろ。集合に遅れたら怒られるぞ」


 聞き馴染みのない声、見慣れない部屋で目を覚ます。誰の声だったか、頭が回らない。ああそうだ、戸嶋だ。朝から次の行動を読んでいるとは、抜かりがない。


 布団を畳み、個室のドアにかけていたタオルを(つか)む。ロッカーから電気シェーバーを取り出し、洗面所でひげを剃って顔を洗う。寝ぼけたまま、互いに「おはよう」と挨拶を交わす。


 洗面で少し目が覚めたが、昨日の疲れはまだ体に残っている。


 寮室に戻り、「今日はどれくらいぶっ飛ばされるかな」と笑いながら話していると、放送が流れた。


「おはようございます。起床時間になりました。学生はグラウンドに集合してください」


 声が若い。おそらく学生の当番だろう。


「じゃあ、行くか」


 古謝の一声で、七人が動き出す。隣の一○二号室にも、平沢たちと同じ佐久本教場の学生たちが入寮している。


 黒ジャージを着た二十二期生の学生たちがグラウンドに集まりだしたが、すでに青ジャージの学生たちが整列していた。


「あいつら、早すぎねぇ?放送の前から出てんのか?」


 綿貫の言葉にも一理ある。平沢たちは放送と同時に寮室を飛び出し、走ってグラウンドへ向かったのだ。少し遅れて黒ジャージの女子学生たちも合流する。


 全員がそろうと、昨夜と同じように日朝点呼が始まった。今朝の副総代役は一○二号室の今田という男子学生だ。昨夜と同じ当直教官がやってくる。


 点呼のあと、当直教官が本日の指示事項を伝える。「基本の厳守」「事前準備の徹底」「五分前行動」。それらの指示を、学生たちは急いでメモ帳に書き留める。


 その後、二十一期の体育委員が指示を出して体操隊形に広がると、「警察体操〜」という、妙に爽やかな音声が流れてくる。ラジオ体操のようでいて、どこか違う独特の動き。体育委員の動きに合わせて、見様見真似でこなしていく。


 それが終わると、国歌とともに国旗掲揚され、立ち止まって敬礼を続けた後にジョギングが始まった。


「い〜ち、い〜ち、いっちに!」

『そ〜れ!』

「い〜ち、い〜ち、いっちに!」

『そ〜れ!』

「ちょ〜、ちょ〜、ちょ〜!」

『そ〜れ!』

「いっちにぃさんし!」

『いっちにぃさんし!』

「いっちにぃさんし!」

『いっちにぃさんし!』

「いち!」

『はい!』

「に!」

『はい!』

「さん!」

『はい!』

「し!」

『はい!』

「ちょ〜、ちょ〜、ちょ〜!」

『そ〜れ!』


 掛け声はここまでで一セット。それが延々と繰り返される。掛け声の担当は、先頭の学生から一セットごとに交代していく。


 六時四十分。清掃の時間となる。一〇一号室の担当は、本館一階、教官室前の廊下だった。清掃場所は、厚生委員という学生委員会が決めている。学生委員会は他に総務委員、体育委員、緑化委員、文化委員があり、総代、副総代、室長の決定と同じく入校式後に配属が決まる。


 世間一般の感覚からすればかなり早いが、すでに教官たちはちらほらと登庁してきていた。


 この学校では、学生同士であっても廊下で顔を合わせれば、「お疲れ様です!」と全力で挨拶し、機敏に一礼するルールがある。そうしなければ、教官から指導が入る。


 教官室前は、必ず登庁した教官が通る。そのため、清掃を中断して何度も挨拶を繰り返すことになった。


「声が小さい!」

「礼の角度が浅い!」

「礼の角度が深すぎる!」


 教官が通るたびに様々な指導を受ける。——これが、半年も続くのだろうか。


 七時十分。朝食の時間となる。昨日の経験から、二十二期生たちは少しずつ無駄のない動きができるようになっていた。


 献立は焼鮭、ほうれん草のおひたし、ひじきの煮物、味噌汁、白米。悪くない。もう少しゆったり食べられれば言うことなしだが、現場最優先の仕事ではそうもいかない。早く食べる能力もまた、必要らしい。


 七時四十分ごろ、食堂の清掃を終えて一度寮室に戻る。


 平沢は昨夜早めに眠っていたため知らなかったが、日直担当は朝食後、教官室に行ってその日の授業教室や教材を確認し、放送するらしい。


 八時になると、各教場ごとの放送が次々と始まる。「第二十二期佐久本教場」の第一声から始まる放送を聞き逃さないように集中する。他教場の放送が流れる背後からは、教官の叱る声がうっすら聞こえてくる。日直の仕事も、楽ではなさそうだ。


 この日の予定は、教科書と柔道着・剣道着の配布、入校式の訓練、点検教練、体力錬成ということだった。すべて二十二期合同の授業だった。


 予定に合わせて荷物をまとめ、八時十五分までに第一教場へ向かう。


 毎朝、八時十五分になると「職務倫理の基本五箇条」を全員で唱和することになっている。


「じゃあ、一発目は俺がやります」


 そう言って教壇に立ったのは一〇二号室の今田だった。


「職務倫理の基本! 一つ! 誇りと使命感を持って、国家と国民に奉仕すること!」

『一つ!誇りと使命感を持って、国家と国民に奉仕すること!』

「一つ!人権を尊重し、公正かつ親切に職務を執行すること!」

『一つ!人権を尊重し、公正かつ親切に職務を執行すること!』

「一つ!規律を厳正に保持し、相互の連帯を強めること!」

『一つ!規律を厳正に保持し、相互の連帯を強めること!』

「一つ!人格を磨き、能力を高め、自己の充実に努めること!」

『一つ!人格を磨き、能力を高め、自己の充実に努めること!』

「一つ!清廉にして、堅実な生活態度を保持すること!」

『一つ!清廉にして、堅実な生活態度を保持すること!』


 今田の声に続き、全員で唱和する。この時間、すべての教場で唱和が行われるため、日を追うに「隣より大きな声を出そう」と、意地の張り合いが加速していくのだった。


 その後、雑談を交わしていると佐久本教官が入室し、ホームルームが始まった。

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