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【全24話・毎日18時投稿】異世界よりもヤバいとこ〜バグってはいけない警察学校〜  作者: いふや坂えみし
第一章 平成三十二年十月一日

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第九話 教官室入った瞬間にぶっ飛ばされた俺

 

 十八時二十分。夕食の時間になり、食堂へ向かう。平沢はまた指示を出すよう命じられるのではと警戒していたが、今回は昼に手洗い場の場所を教えてくれた戸嶋が指名された。平沢が時おり助け舟を出したためか、昼ほどの悲惨な状況にはならなかった。高卒枠の学生たちとともに夕食を始めることができ、当直教官一人だけが高卒枠の学生と同じテーブルについた。昼とは異なり、教官たちの監視の目がなかったため、無言の気まずい空気にはならずに済んだ。


 十八時四十五分、食堂の清掃を終える。二十一時までの間に入浴とアイロンがけを済ませなければならない。平沢たちは第二十二期生、高卒枠の学生たちは四月入校の第二十一期生である。先輩が先に入浴するというルールがあるらしく、平沢たちはまずアイロンがけをすることになった。


「やべぇやべぇやべぇやべぇやべぇやべぇやべぇやべぇやべぇよ〜」


 ハスキーボイスの綿貫が寮室に戻ってくるなり「やべぇ」を連発した。


「またかよ綿貫、教官室でなんかあった?」

「聞いてくれよ古謝〜。教官室入った瞬間にぶっ飛ばされた俺〜」

「え、何。どゆこと?」


 綿貫が実演を始める。


「コンコン、入ります!ガラッ」


 ノックしてドアを開けるジェスチャー。


「ガラッ」


 ドアを閉めるジェスチャー。くるりと反転する。


「初任科誠心寮第一〇一号室綿貫巡査、教官室に用事があって参りました!」


 綿貫はビシッと一礼した。


「お疲れ——『ファスナー締めてこいバカタレ!』って判教官がよ〜。いや、締めてんだろ?って思ったけど追い出されて、教官室の前の鏡見たらやっぱ締まっててさぁ。どのファスナーだよって探したら、右足のファスナーちょっと開いてんの。細けぇ〜!」


 みんな笑っている。古謝が手を叩いて綿貫を指差す。


「ウケる。まぁどんまい。アイロンがけ行こうぜ」

「それがさ〜。ファスナー締めてもっかい教官室入るじゃん?」

「まだ続くの?」

「アイロンの使用許可をいただきに参りました!っつったら、もう全部貸出中だって。どの県警のやつらだよ。ふざけんじゃねぇー!俺明日シワだらけの制服で授業受ける。もう寝る」


 綿貫は自分の個室に入って布団にダイブする。


「えぇ?アイロン使えないの?じゃあ、風呂行く?」

「そうだ風呂入ってねえじゃん。だめだ、いま高卒のクソ野郎どもの時間だ」


 西島の提案を聞いて綿貫が個室から出てきたがすぐ戻っていった。


「クソ野郎って、やめとけよ偏見が過ぎる」


 戸嶋が綿貫の軽口を(たしな)める。


「よし、じゃあ女子風呂行くか!野本さんってさー、けっこうさー、けっこうさー、けっこうじゃなぁい?」


 古謝の言う野本さんは同じ教場の女子学生だ。


「古謝お前、何言ってんのかわかんねぇけど、わかるからやめろ馬鹿野郎!逮捕だ!」


 隣の部屋から遊びに来ていた榎木理(えのきおさむ)がつっこむと、「俺が逮捕する」「逮捕逮捕!」と寮室の学生たちが口々にわめき出し、古謝はヘッドロックされていた。


 結局その後、アイロンが空くのを待ってアイロンがけをし、十五分くらいで入浴を済ませると、もうすぐ二十一時になるところだった。


 二十一時から「日夕点呼」という、就寝前の人員確認が行われる。当直教官が来るまでに、各寮室の室長が副総代に対し、点呼欠席者、体調不良者、出席者の人数を報告する。やがて学校に泊まる当直教官が来ると、各教場ごとに「総代」と呼ばれる学生の代表が先頭に立ち、「番号! 一!」と号令をかける。すると副総代以下の学生が二番以降の番号を順に唱える。三列縦隊で並んでいた場合、縦隊の右端の者だけが番号を数える。最後尾の右端の者は、最後尾の列の学生数に応じて「満」「一欠」「二欠」と加える。


 最後に副総代が「第二十一期河松教場総員三十二名、当番四名、一名にあっては体調不良により舎休。その他異常なし!」といった具合に当直教官に報告する。


 二十二期の学生たちは、まだ総代・副総代・室長などの役職が未定のため、役職が決まる入校式までの間は、日替わりで担当することになっていた。


 警察学校では毎朝六時に「日朝点呼」、夜二十一時に「日夕点呼」が行われる。点呼が終わると二十二時三十分の就寝時間までは自由時間だが、たいてい宿題や洗濯、日誌の記入、試験勉強などをしていると時間がなくなってしまう。


 平沢は、配布物や持ち込んだ私物の整理がまだ終わっていなかったので、就寝時間まで片付けに取りかかった。ようやく、今日という一日が終わる。明日日直を任された学生が何やら騒いでいたが、もう何も考えたくなかった。疲れすぎてすぐに眠れると思っていたが、神経が昂っているのか、枕が合わないのか、なかなか寝付けない。


 勘弁してくれ、と寝返りを打っているうちに、ようやく意識を手放した。

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