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3-4 離脱

--パーティーを組み、一年近く経った。


 エナ姫とは時折会ってはいるが、

特に動きはないようだ。


 先日B級に上がったのだが、

パーティーメンバーからの当たりが

日に日にきつくなっているように感じている。


 これは僕の気にしすぎな性格だけが

原因ではないだろう。

明らかな苛立ちを向けられている。


 原因は自分で言うのもなんだが、

簡単に言ってしまうと

嫉妬されているようなのだ。


 人のアビリティをほぼそのまま使える

能力なんて使いようによっては

S級に行くことも難しくはないだろう

相当使い勝手のいいアビリティだ。


 ただ普通に学園を定年で卒業した

他のメンバーにとっては、

正直言ってC級の壁を

越えることすら難しいだろう。


 ただ僕は始めの頃ただ純粋に

冒険を楽しんでいた“ソソイゾル“が好きだった。


 エナ姫のこともあるし、

どんどんランクを上げたい

気持ちももちろんあった。


 ただ、ランクを上げることが

全てとは思っていなかったし、

このままでも問題ないと思っていた。


 でも他のメンバーは違った。

冒険者は学生の頃から強いものが

力を得る世界だ。

弱いものは見向きもされない。


 そのためか、負けん気の強い

プライドの高いものが多い。


 人は弱い生き物だ。

かつての三馬鹿のように、

下を見ていてないと、

胸を張って生きられない。


 大袈裟に言えば、

自分が強いと思い込まないと

自我を保てない。


 根っこの部分ではそんな人間が多い。

今までの経験から、僕はそう思っている。


 客観的に見て、

僕が加入した“ソソイゾル“は

年齢の一番低い僕が誰よりも実力がある。


 ただ、僕としてはたまたま

強いアビリティに目覚めただけなので、

そんなことはどうでもよかった。


 その事実について

はじめは認めてくれていた。


 心から褒めてもくれたし

俺たちも力をつけるんだ、

追い抜くんだという前向きな

気持ちがあったように見えた。


 それを見て僕も良い刺激を受けたし

頑張ろうと思えたのだ。


 しかし、C級に上がった頃から

それもなくなってきた。


 明らかに苛立ちを出すようになってきたのだ。


 これは後から気付いたのだが、

彼らのアビリティを使わないことも

自尊心を傷つけていたようだ。


 人間って面倒くさい……



 彼らの苛立ちを感じた僕はまた、

実力を隠した。


 最初の“ソソイゾル“は好きだったし、

また、元に戻ってくれる期待を持っていた。


 僕は彼らに気を遣い、

彼らに合わせていたのである。


 こんなこと予想していたわけではないのだが、

面倒くさがり屋な性格故、

アビリティについては、

かなりはしょった説明しかしていなかった。


 コピー能力自体が強力であり、

時間経過など、

弱体化する理由はいくらでも考えられる。


 そのため不思議に思われなかったのだ。


 そして僕は極力前に出ることを避けた。


 前衛に出なくても、魔物は倒せるし、

あくまで目立たないように、他をたたせるように

サポートに徹した。


 そして、時間はかかったが、

パーティーはB級に上がった。


 すると今度は明らかに

僕を見下すようになってきた。


 はっきり言ってしまうと、

D級で停滞していた彼らが、

そのままの自分たちの実力だけで、

簡単にB級に上がるなど、

あり得ないことだ。


 しかし、もはや冷静ではなかった彼らは

心のどこかで真実に気付きながら、

実力のないレイはお荷物で

自分たちの力だけでB級にあがったのだと

信じこむようにしていた。


 そうすることで自我を守っていたのだ。



 クエスト中

ミールはずっと何も言わなかったが、

バルタンからは怒声ともとれる激励を

飛ばされ、

マーチからは皮肉としか思えない小言を

浴びせられる。


 そんな日々が続いていた。


 僕は単純に悲しくなっていた。

精神的に参ってしまっていたのだ。


 抜けることは簡単だし、

仮に戦うことになったとしても

苦戦することはないだろう。


 かといって、僕の中で

そんな簡単に片付けられる問題ではないのだ。


 とはいえ、エナ姫のことを考えると

こんなことでへこたれてはいられない。

彼女は彼女で大変なのだ。



 そんな中、終わりは突然やってきた。


 いつも通りクエストを終え、

帰路につこうとしていた途中である。


「“ソソイゾル“を抜けてくれないか」

 リーダーであるバルタンから

告げられた。

事実上の離脱申請である。



「…………」


 こんな日が来ると予想はしていた。

しかしすぐには口を開けずにいた。


 僕が黙っていると、

マーチがバルタンに加勢してきた。


「強いアビリティだと思ってたけど

全然大したことないじゃない

分からないの?

あんたはお荷物だって言ってるのよ!」


 すると今度は、それを聞いた

ミールが会話に加わる。

「みんな、どうしちゃったの?

明らかにレイ君はこの中で一番強いよ


後衛に下がったのだって

二人がイライラして

クエストにならないから

気を遣ってくれたんでしょう?

それが分からない二人じゃないはずよ!」


 珍しくミールが声を荒げてくれている。

目にはうっすら涙を浮かべていた。


 ミール……



 内気な性格の彼女は現状に思うことが

ありながら何も言えなかった。


 そして僕のようになんとかうまくいくように

前の“ソソイゾル“に戻れるように

考えてはいたがうまくいかなかった。


 僕が苦しんでいる間に

彼女は彼女で苦しんでいたのだろう。



 そんな彼女を見て心が痛くなった。

二人も黙ってうつむいている。


 とうとう感情を爆発させてしまったが、

彼らもまた悩んでいたのだ。


 悪いことだと分かっていながら、

強すぎる自尊心をぶつけずにはいられない。


 特にバルタンとマーチがしてきた

ことは悲しいし、腹も立つが、

彼らの感情を全く理解出来ない

わけではなかった。


 僕が出来ることもあったはずだ。

だからこそ今まで黙って耐えていた。


 しかし、このまま

パーティーを続けてもお互いにとって

良い結果にならないだろう。


 僕は三人の様子を見て、決心を固めた。


「今までありがとう

ミールもありがとね……

でも僕はここにいない方がよさそうだ」




「レイ君……」ミールはそれだけ呟き、

他の二人は黙ったままだった。


そして僕は“ソソイゾル“を抜けた。






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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公、パーティーメンバーの感情は分からん事は無いけど、それが役立たずのような感情になるのは理解不明、下がっただけじゃなく主人公は何もしなかったのか?こんな状況になる前に抜けるやろ。
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