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3-5 リーベルの母

 次の日、僕は虚無感に苛まれながら

拠点のベッドで、

昼を過ぎてもまだ横たわっていた。


…………


 しかし、

このままでは王宮で頑張っている

エナ姫に合わせる顔がない。


 もう一度初心に帰ろう。


 エナ姫と初めて探索した日、

冒険者として初めて探索した日、

そしてその後こ数日間。


 毎日が新鮮で楽しかった。

あの感覚を思い出したい。

今度は一人で冒険をしよう


 そう思って僕はギルドに向かった。

するとミールが一人でいた。

ギルドは一部が酒場になっている。

そこで一人でぼーっと座っていた。


 僕は気まずさはあったが、

あれこれ考えずにミールの隣に座り、

飲み物を頼んだ。


 すると、ミールはこちらを見た。

僕に気づいたようだ。


 そして僕はお礼を言った。

「昨日はありがとね

ほんと助かった……」


「ううん……

私にはなにも出来なかったから……


ごめんね

あんなことになって


二人ともね

学園の頃から一緒で

あんなこと言う人たちじゃなかったの……


レイ君に対しても

二人に対してもなにもできなくて……

自分が情けないよ」


 ミールが自分を責めていた。

優しい……いや、

優しすぎる性格なのだろう。


 責任の全てを自分一人で

抱え込んでいるようだった。


 なんとなく、放っておけなかったので

話していると、


 体調不良を理由にして“ソソイゾル“を

一時的に離脱していること、

補助魔法に覚えがあり、

流されるまま冒険者になったが、

今後冒険者として生きていくことが本当に

やりたいことなのか悩んでいるらしい。


 そして話している間に一つの結論に達したようだ


「私ね、受付嬢になろうと思うの

今日ずっと受付嬢の仕事を見てたんだけどね


受付嬢って冒険者にクエストを受注してもらうだけじゃないと思うの


私は冒険者としてはこれ以上

上を目指すことは難しいし、


そっちの方が人のためになれると思うの


後は……

“ソソイゾル“みたいなパーティーを

少しでも減らせたらなって……」


 なるほど、“ソソイゾル“として

共に活動していたとき、

彼女は人のことなど何も考えておらず

興味がないのだと思っていた。


 でも本当はその逆で、かなり気にしていた。


 しかし何もできない

そんな自分に、もどかしさを

感じていたのだろう。


「良いんじゃないかな」

 僕は笑顔で彼女の次の道を後押しした。



 すると、僕たち以外の冒険者が

丁度いなくなり、受付嬢が、

僕とは逆側のミールの隣に座ってきた。


 そして、受付嬢の話を聞いていると、

どうやら僕の加入前から

クエストの受注や相談は

ミールが中心に行っていたようで、

二人は仲が良いようだった。


 曰く“ソソイゾル“は期待の新人を失って

Cランクに下がった。


 さらに、一時的にではあるが

ミールも抜けている現状、パーティーとして

いつまでもつか、という状況らしい。


 あの性格では他の人とパーティーを組んでも

長続きはしないだろう。


 どうやら今まではなんとかミールが

二人をフォローすることで

パーティーとしてやってこれたらしい。


 僕についても

僕のいないところでフォローして

くれていたのだろう。

直接言われた訳ではいないが、話の流れで確信した。


 そんな話をしつつ、

受付嬢はミールを慰めていた。


 ミールは数日後にも“ソソイゾル“を抜けて

受付嬢を目指して試験を受けるつもりらしい。

 

 ミールが抜けた“ソソイゾル“はもう

パーティーとしてやっていけるか

どうかも怪しいだろう。


 もっとやれることがあったんじゃないか

心苦しい気持ちが僕にもあった。


 それはミールも同じなのだろう。


 いやむしろ、今までずっとやってきた分

僕なんかよりその気持ちは強いはずだ。


 だから受付嬢への転身を決意したのだ。


 僕は彼女に共感し、彼女の意思を尊重した。


 僕も流れで冒険者になった。

目立つのは嫌だが、

自分に良くしてくれた人や街を、世界を救えるなら

救いたい気持ちはある。


 ただ、エナ姫と一緒にいるのが楽しいから

付いてきただけで、自分や周りが

幸せならそれでいい。


 世界平和のために第一に考えて

身を捧げたいとか、そこまでの気持ちはない。


 彼女も、人に喜んで貰うことで

自分も嬉しくなる、という意味で、

自分のためというところは当然あるだろう。


 完全に人のために動ける人間などいない。



 しかし、同じような思いをする人を

増やしたくない。


 命をかけて魔物を倒す冒険者を

心理的な面でもケアしたい。


 そうすることで少しでもパーティーの解散率を減らし、

クエストの達成率をあげていく。


 その目標のために、

世のため人のために働こう。


 そういった彼女の志に共感したのだ。



「僕もしばらくはソロでやるつもりだけど

何かあったらいつでも手伝うよ」


僕がそういうと彼女は満面の笑みで言った。

「ありがとう!」


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