黒いお友達
「先生、これは何でしょう」
「これは……いやはや……」
分かってる。これは腫瘍だ。こんなでかい腫瘍が見つかったとなっては、俺ももうおしまいだ。
「教えて下さい、先生、これは何ですか!?」
医師はひとしきり唸った後、ようやく絞りだすように言った。
「これは……暗黒の……暗黒の何かだ!」
オブラートに包まれた……もう確定だ。
今からでも入れるガン保険は無いものか。
「先生、僕はもう覚悟しています。正直に言って下さい!」
「いや……これは私にも分からない。腫瘍のようだが、腫瘍にしては綺麗にポッカリと開きすぎている。まるでブラックホールのように……」
「ブラックホール?」
俺の胃にある腫瘍がブラックホールだなんて。食べても太らないとは思っていたけど、まさかな……
「とりあえず様子を見ましょう。また来週来てください」
病院を出て、どことなく虚無感の漂う、快晴の空を見上げる。
はあ……治療が嫌だからって、丁重に拒否されたよ。どうしようかなぁ。きっともう手遅れだろう。この際だから、牛丼でも食って帰ろ。
「いらっしゃいま……えええ!?」
気まぐれに入った牛丼屋の店員が俺を見て驚く。
「お客さん、お腹が真っ黒ですよ!」
俺がシャツを見ると、シャツの部分がくっきりと円形に削ぎ落とされ、真っ黒の空間が支配していた。
「うわああああ!」
まさか、本当にブラックホールが!?何を食べた?何を食べたらこうなるんだ?
その時、ブラックホールと思われたそれがどんどん盛り上がった。これは……人の頭!?
その頭は俺の腹からニョキニョキと人間の姿となって出てきた。
「こんにちは。私は宿主の別人格です」
「喋った!?」
それは……裸体ではあるが、ごく普通の少年だった。
「やだなぁ、宿主。僕はあなたが生み出したもう一人のあなたですよ」
「嘘だろ、こんな事があるわけ……」
「でもあるんですね。あ、ちなみに僕はとっても『腹黒い』ので注意して一緒に暮らしましょうね」
「誰が暮らすか!」




