宇宙戦艦逃亡記
宇宙戦艦を夢見る少年は多い。
だが実際の宇宙戦艦にロマンなんぞ存在しない。
この際、ロマン的な要素を全部抜き去って話すが、実際そこは一つの寮と会社がセットで存在するただの共同体だ。
上下関係があって、狭っ苦しい部屋があって、毎日の作業があるだけ。
そりゃあ楽しそうな屋台やそっち系のお店もあるが、それは別だ。
むしろそういった要素が「飼いならされている」というイライラを増幅させる。
オレは逃げ出す。逃げ出してやる。権力の一番下にいるオレにとって、こんなところは「共同体」なんて体裁のいいもんじゃない。動く刑務所みたいなもんだ。
緊急脱出用ポッドに全ての荷物をぶち込み、ハッチを開いた。
スペーススーツで顔を隠しながら全ての作業を手際よく行う。
外は広大な闇。こんなものにロマンを抱く方がどうかしてる。
隣の芝生は青いが、遠い空はただただ黒いだけなのだ。
で、どこに行くかって?どこにも行きゃあしない。
宇宙では座標なんてあってないようなもの。全てワープでまかなっている。
どこでもいい、オレは自分の居住区を抜けだして、できるだけ遠くの居住区に移った。
ただそれだけ。でも何かが変わるかもしれない。そう期待して…
移り住んだブロックは、自然の土をめいっぱい埋め立てた美しい地区だった。
そこでは誰もオレの事を知らなかった。
階級も社員証もない。オレはやっと自由になれたんだ!
一年後
「こんな所、逃げ出してやる…」
すし詰めに置かれた3メートル四方の居住用コンテナの中でオレはオレの運命を呪った。
オレは結局何も変わらなかった。
権力から自由だと思っていたこの場所も、結局は見えない権力が支配していた。
そしてなぜオレはまた権力の一番下にいるのだろう。なぜまた狭い箱の中で自由を夢見ているのだろう。
どこに居ても意識の変化が無い限り、闇からは逃れられない。
オレはどこにいてもオレなんだ。クズは一生クズなんだ。
座標なんて関係ない。それが宇宙。




