シンバル
一体、窓とは覗くものだろうか。それとも覗かれるものだろうか。
「よっ」
幼馴染の燐子が窓から家の中を覗いて入ってくるのを見ながらそう考えていた。
「ニート。何してんの」
「うっせぇ、お前もニートだろ」
俺の言葉に燐子がプンスカと怒った。
「家事手伝いですぅ!女の子の場合は家事手伝いなんですぅ!」
「おんなじようなもんだろ。うんこ製造機である事に変わりはない」
「その言い方だけはやめて!今度から自宅警備員って呼ぶから!」
「うーむ、全ての名称が皮肉にしか聞こえないのも嫌だな。そろそろニートの新しい呼び名を考えないとな」
燐子はさして深く考えもせずに次々と発案する。
「自由人」
「不自由なんだなぁ」
「メイド見習い」
「自分だけ良い風に言うな」
「MOB」
「モブだと割り切れたら楽なんだけどなぁ」
俺の言葉に燐子は少し引っかかる所があるようだった。
「主役になろうとするから駄目なのかな」
「そうだと思うよ。今は誰もが主役を目指しては挫折する時代だからね」
テレビを付けると、教育テレビでオーケストラの演奏が映されていた。
ま、昼間やってるテレビはこんなものだろう。
「オーケストラで言ったら、私らってシンバルみたいなものかな」
ふと燐子が言い出した。
妙な例えだが、あながち間違いでも無さそうだった。
「出番が来るまではジッとしている。でも重要な役割を担ってるってか」
「うん。悪くないんじゃない?」
「そうだな、シンバルは二つ合わさってシンバルだし、俺ら二人で一つの楽器なのかも」
俺がそういうと、燐子は顔を赤らめた。
「…それもしかしてプロポーズ?」
「え、違うよ」
「違うんかい!」
彼女の手が僕の頬を打って、とてつもなく大きな音を鳴らした。




