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僕と彼女と扇風機
扇風機の勢いが弱い、と彼女は言った。
僕は慌てて『強』にした。
次に彼女は、場所が違うと言った。
僕は慌てて扇風機の位置を変えた。
「そうそう、そこそこ。」
彼女は満足気に言った。
……なぜ、こんな事になっているのか。
恋人同士というのはお互いの持っているイメージに大きく支配されるものだが、何もそれが現実にならなくてもいいのに……でもなってしまったものはしょうがない。
彼女は身の丈5メートルの大女になっていたのである。
どうも僕の印象が彼女をこんな、和室を二部屋も占領する大物に変えてしまったようである。
縁側の和室で、僕は彼女が暑いと言った部分に扇風機を当てている。
そして彼女は今、ものすごく不機嫌だ。言わば一触即発、それを僕が爆発しないよう配慮し、身を挺して冷却している。
うーん、我ながら的確で重厚な表現だな。
「もう、全然涼しくならないじゃない!」
彼女は怒って扇風機を僕に向けた。
僕は青空に向かってヒュルリと飛んでいった。彼女から見た僕はこんなに薄っぺらかったのか。




