夢のルームシェア
高知の海沿いにあるロッジの2階、そこはパラダイスだった。
現管理人でもあり住人でもある木村くんのおじさんの小屋だそうだが、おじさんは木村くんに家の権利を預けたまま、失踪してしまったそうだ。
おじさんからの条件は、ルームシェアとして貸し出し、1人につき入居期間は1年以内にする事。
ヤンキーのたまり場にでもされたらどうしようかと思いながら、木村くんは仲間にその事を話したそうだが、実際はちゃんと夢を追いかけている若者達が集まり、近所の評判も良かった。
まだ高校卒業したての友達から家賃を取るのは可哀想だったので、毎月1万円だけ集めて、何かの時の共益費にする事にしたそうだ。
この夢のような生活が破壊されたのは僕が入居して間もなくだった。
天井から何か変な音が聞こえるのだ。夏の夜、ロッジでこのシチュエーションはやめて欲しい。名探偵が遊びに来でもしたら、もう絶対に何か事件が起こる。
僕たちは怯えながら天井を見守っていた。天井がドン!ドン!とすさまじい音を立てている。
そう思ったのも束の間、木村くんのおじさんが木の天井を破って落ちてきた。
「おじさん!」
失踪したはずのおじさんはボロボロの姿だった。
「おじさん、もしかしてずっと天井にいたの!?誰にこんな事を!」
木村くんが問うと、おじさんはヨロヨロになり、身を震わせながら声を上げた。
「お前ら何で女子の部屋を2階に割り当てないんだよ!覗けないじゃないか!」
僕達は呆然とした。
「その為に今まで天井におったんかい!」
「そうだよ、女子の生活をこの目で見たかったんだもん!」
夢に向かって頑張ってるはずの僕らより、ひたむきなこのおっさんが一番夢見てるんじゃないか、そう思わせるほどの熱意だった。
「女子の生活なんて、そこまでして見るようなもんでもねーよ……」
紅一点の夏子(控えめに言ってブス)が呟いた。
完




