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トコトコ  作者: きるきる
6/11

家族の事件 その3


 はなちゃんは感知した。


(熱いスープがミキちゃんに降りかかる!)


 これは動画配信者の持っている紙コップだ。

 その中に入っているチリスープが美樹に降り注ぐビジョン。このままでは美樹が大火傷を負ってしまう。


 はなちゃんは何とかしなくてはいけないと思った。


「ミキちゃん!急いでここから離れてー!」

 

 美樹にだけ聞こえる様に声を絞って声をだす。

 だが美樹はパパとの会話に夢中。はなちゃんの声に気付けない。


(ダメだ。もう、あたしが守るしか!)


 しかし、所詮ぬいぐるみ。落ちてくるスープをキャッチすることなどできない。

 かといって、この動画配信者を力で止める力もない。

 はなちゃんは考えた。

 

(やっはり……これしかない。あたしを盾にする)


 ぬいぐるみのハナちゃんは行動に移す。

 ビジョンと現実の景色が重なる瞬間を待つ。


(ミキちゃんは絶対あたしが守るからね)


 スープが落ちてくる軌道に重なる。


 バシュ


 熱々のスープがハナちゃんに降り注ぐ。

 ぬいぐるみのハナちゃんは防水加工など、されていない。生地がどんどんスープを吸収していく。


(あじぃー!!!)


  はなちゃんは美樹ちゃんと約束している事がある。

 話している事を見られちゃいけない。大騒ぎになるから。


 だからハナちゃんは我慢する。

 ほんとうは絶叫するくらい熱くて痛い。

 でも我慢する。ミキちゃんとの約束だから。

 

 布のボディが真っ赤で熱々スープを吸っていく。


(うわわわわわわわ!熱いのとれない!)


 地面に落ちてアスファルトの上をコロコロ転がる。


 ここで、ようやく美樹ちゃんが気づく。


「はなちゃん!はなちゃん!どうしたの!?」


 慌ててかけよる美樹ちゃん。


 動けない。

 美樹ちゃんとの約束。

 人前で動いたり話したりしてはいけない。

 今はただアスファルトの上でコロコロと転がっている事しかできない。


「はなちゃん、汚れちゃった。洗わないとだめ!」


 美樹に拾われたぬいぐるみから音が出ている。


「しゅごーしゅごー」


 空気の出入りする不気味な音が発せられている。


 苦しいのだ。

 人間でいう重度の火傷。


(痛い……痛いよ……みきちゃん)


 この時の美樹には、自分のぬいぐるみが汚れてしまったという認識しかない。


「お母さん!はなちゃんが汚れちゃった。洗ってきれいにしてあげたいの」


 お母さんに助けを求めるも、お母さんはそんなに気にとめていない。

 



 


 

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