家族の事件 その2
誰も気付いていないが一体の『ぬいぐるみ』が、ある家族の休日を救った。
お昼を過ぎると、お客さんも増えて混み合ってくる。
この美樹ちゃん家族も引き上げる頃合いだと考えていた。
ほとんどがファミリーな感じだが、学生だけのグループもいる。
一人で行動している人もいる。自撮り棒を使って動画を撮っている。動画サイトの配信者みたいだ。手には見覚えのあるロゴが描かれている紙袋を持っている。
美樹ちゃん家族がお昼を食べたお店の袋だ。
「ミキちゃん。そこの黄色いのが通せんぼしているところは近づかないでね。工事してて危ないからね」
「はーい!パパ!近くいかないお」
人混みをかわしながらパパに向かって手を振る。
パパもニコニコ楽しそうだ。
美樹のそばを動画配信者が横切った。
手にある袋から、紙コップに入ったスープを取り出す。
「うわっち!このチリスープ熱々盛りだよ。ヤバいターイムだよ!沸騰してんじゃね。あとでクレーム入れてからの交換してやろうかー!」
ぬいぐるみのハナちゃんは、自我が生まれた時に神様から力を授かった。
一つ、『危険感知』
二つ、『諸刃のバカ力』
三つ、『生命維持スーパー』
力と言っても、大した事はない。
この中で一番役に立つのが『危険感知』。自分の身に降りかかる危険を約十八秒前に感知できる。
『諸刃のバカ力』は三秒だけ、通常の百倍の力を瞬間的に出せる能力。……といっても幼児がビニールのボールを弾き飛ばすくらいの力だ。全くもって無力である。
そして『生命維持スーパー』。
ハナは所詮ぬいぐるみである。
外装はフェルト。他は目はスチロール。
その他細かな部品はプラスチックである。
その為、カッターやハサミで簡単に破損してしまう。
ここで問題なのが『ハナちゃん』という個体。『生きるぬいぐるみ』として誕生した時に内臓が生成されている。それは栄養の摂取や排泄、その他諸々。人間と同等の性能をもつ器官を持ち合わす、『超ぬいぐるみ』なのだ。
が、中身は人間並みでも外はフェルトである。
フェルトやプラで内臓を守れるはずがない。
その釣り合わない外見と中身を調和するのが『生命維持スーパー』なのだ。神様だけが知っている謎のエネルギーで温度や液体、毒物から内臓を守ってくれる。
そして、内臓がパンパンに詰まっているにも関わらず、重さが普通のぬいぐるみくらい軽いのも不思議エネルギーのおかげある。




