3
あれ以降、アレクシスが頻繁に訪ねてくる様になった。
もちろん、屋敷にあげる事なんてしない。
だって、会いたくないもの。
けど、断られても何回もやってくるのよね。
・・・メリンダは一体、何をやっているのかしら。
普通、自分の旦那が他の女に会いに行くのを止めない妻はいないでしょう?
すると、扉をノックする音が聞こえた。
現れたのは、執事であった。
「お嬢様、アレクシス様がお見えですが・・・」
「そう、帰ってもらって」
私がそう伝えると、言いにくそうに口を開いた。
「それが・・・。
会えなければ死ぬと言ってまして・・・」
は?何それ?
「・・・どういう事?」
「私にも分かりかねます。
けれど、尋常ではない様子でして・・・
その、どうすればいいものかと」
執事がしどろもどろに答えるが、私だってどうすればいいかなんて知らない。
それに、もう関係ないわよね?
そう思って、再度帰る様に伝えようとしたら、アレクシスが勝手に入って来た。
「なぁ!なんで、俺と会ってくれないんだ!?
お前は俺が好きなんだろう?」
そう言って執事を押しやり、乗り込んで来たのだ。
私は、恐怖で立ち上がるとテーブルのお茶がこぼれた。
取り敢えず、落ち着かせないと危険だわ。
そう思い、執事には退席する様に合図をして、アレクシスに優しく話しかけた。
「アレクシス?どうしたの?
・・・少し、落ち着きましょうか?」
そう言って、前の席へ座る様に勧める。
すると、アレクシスは先程よりは落ち着いたのか、席に着いてくれた。
「なぁ、さっきの質問の答えは?」
・・・・・・。
「ねぇ、貴方メリンダさんはどうしたの?」
驚き過ぎて、アレクシスが入って来た時の言葉を聞き逃していた私は、質問に質問で返すことにした。
するとアレクシスは、眉間にしわを寄せて『メリンダとは終わった』と一言呟いたのだ。
・・・待って?まだ結婚して五ヶ月よ?
それに、三ヶ月は私だったのだから、正味二ヶ月よね?
「真実の愛はどうしたのよ?
貴方、私に言ったじゃない。
この世で俺が愛するのはたった一人だって。
もう忘れたの?」
その言葉にアレクシスは、顔を歪めて自分の手を握りしめた。
「いや、分かっている。
・・・確かに言ったな。
だが、そうじゃなかったんだ。
本当は、お前をーー「私は忘れないわよ!
酷い仕打ちも、裏切りも。
一生許すことはないわ!」」
余りにも自分勝手な言い分に、アレクシスが話し終える前に言葉を遮った。
本当に、こんな男のどこが良かったのだろう。
・・・人生最大の汚点だわ。
そう思い、黙り込んでいる私に、おずおずと話しかけてきた。
「・・・俺の事をまだ、好きだよな?」
本当にこの男は・・・。
「・・・ねぇ?
私が好きだと言ったらどうなるの?」
その言葉に、目の前の男は喜んでいた。
そして、嘘でも言ってはいけない事を口にしたのよ。
「俺もお前を愛している。
だから、もう一度やり直そう」
・・・頭が真っ白になる。
何故、もっと早くに言ってはくれなかったのかと思う私と、まだこれ以上、私の尊厳を奪うつもりなのかと憎い気持ちがせめぎ合う。
・・・そして、最後に残ったのは無だった。
もう、何も感じない。
本当の意味で、目の前の男の存在を消し去る事が出来た。
そして私は無表情で告げたのだ。
『お引き取りを』と。
アレクシスが何かを喚いているが、そんな事、私にはもう関係ない。
だって貴方はもう、私の中に居ないのだから。
ベルを鳴らし、数人の使用人がやって来て、男を連れて行った。
・・・はぁ、エドガーに会いたいわ。
私の可愛い癒しに早く触れたいと思い、メイドに新しいお茶を頼んだのであった。
エドガー視点
最近のベアトリスは良く僕に触れてくる。
手や髪、そして抱きしめてもくれるんだ。
そりゃ僕だって男だからね、好きな人からのスキンシップは嬉しい。
だから思わず、いけない想像までしてしまう。
でもいつか、それが叶うといいなと密かに思っているんだ。
今は無理でも、後もう少しで僕も大人の身体を手に入れられるからね。
こんなに待ち遠しい事はないよ。
そして今日も、ベアトリスに会いに来ているんだ。
会うたびに好きになる。
彼女からは、まだ異性としての好意は感じられないけれど、愛情の籠もった瞳で見つめられると、心が満たされていくのが分かる。
だから、早く早く、僕を異性として見て欲しい。
そうしたら僕は、絶対に君を離さないよ。




