エドガー視点
みんなが彼女を悪女と言うが、そんな事はない。
だって、僕はずっと見ていたんだ。
彼女が奴を愛情深く見つめていた事を。
こんなにも尽くしてくれる彼女を、なぜ奴は見ようともしないのか。
・・・僕には不思議でならなかった。
だから、婚約破棄した時は嬉しかったな。
僕にもチャンスがあると思った。
けど、愛情深い彼女は奴を諦めきれずにいたんだ。
そんな彼女を見て、僕は噂を流す事にした。
自分の気持ちと向き合える、とっておきの呪いがある事。
そして、その呪いをかける事ができる呪師がいる事。
その依頼方法も・・・。
すると彼女は、すぐにコンタクトを取ってきたのだ。
そして、それからの事は言うまでもないだろう。
当時学生だった彼女は、僕が同じ学院に通っている事を知らない。
まぁ、僕は忙しいし、学年も違うからね。
なかなか学院に行けなかったけど、久しぶりに行った時に見たんだ。
彼女が悪女だと、皆から責められていたところを。
・・・僕は目と耳を疑ったね。
だって、彼女の言い分は何も間違っていないのだから。
こいつら集団で一人を槍玉にするなんて、何考えてんだ?
と思った僕は、止めに行こうとしたんだ。
けれど彼女は、そんな状況をジッと耐えて、ただ一人の男を見つめていた。
それを見たら、助けに行こうと思った気持ちが、間違いである事に気付いたんだ。
彼女は誰かにではなく、その男から手を差し伸べられたいのだと。
だから、僕が助けに行ったとしても、きっと迷惑だろうと思った。
そうして僕は、一人の傍観者となったんだ。
それからは、学院に行ける日は必ず彼女を探した。
あんなに酷い目に遭わされているのに、それでも彼女は奴を愛おしそうに見つめている。
僕には、何がそうさせているのかは分からない。
けれど彼女の中では、いくら裏切られようとも、奴が一番なんだろう。
僕はそんな奴が狡いと思った。
なんでお前は、なんの努力もしていない癖に愛されているのか。
・・・本当に反吐が出る。
けど、まぁ、今となってはどうでもいいかな。
だって、お前は彼女を捨てたんだから。
だから、僕が貰い受けるよ。
・・・ははっ。
さて、お前は後悔しないかな?
捨てた物の大事さに。
今更気付いても遅いと言う事に、絶望するといい。
アレクシス視点
本当のメリンダとの生活は地獄だった。
毎日毎日、キーキーと自分の事を喚いている。
『私は、貴方が楽しく暮らしていた時に閉じ込められていたのよ』とか『貴方は、のほほんと生活していたんでしょ?』など、大体が俺を責める言葉なんだ。
『これは俺が仕組んだ事ではない』と告げると、顔を真っ赤にして猿の様に喚き散らす。
あまりの暴言に、俺の心はシャットアウトした。
そして、最近はメリンダの話を聞き流している。
毎日同じ事を言っているので、聞かなくても平気だと心が言うのだ。
そんなふうに俺の事を非難する癖に『初夜はまだか?』と恥じらいもなく聞いてくる。
もう、はっきり言ってうんざりだ。
こんな状況で挑んだって、できそうもない。
・・・戻れるものなら戻りたい。
アイツとの生活は愛に溢れていた。
本当に、とても幸せだったんだ。
「アレク?何してるの?
早く出て来て、初夜を迎えましょう!」
・・・。
もしかして俺は、選ぶべき人を間違えたのだろうか。
・・・なぁ、ベアトリス?
もし俺が、もう一度やり直したいと言ったら、前と同じ様に愛してくれるか?
だってお前は、俺の事を愛しているからメリンダと入れ替わったんだろ?
もう一人の自分が囁く声を聞きながら、俺はアイツとやり直す為の行動に出る事にしたのだった。




