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呪いをかけた呪師は、孤独な悪女に執着する  作者: こさか りね


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1

ふふっ、愕然としていたわね。

最悪な私と三ヶ月も一緒に過ごしただなんて、認めたくないものね。


・・・本当、いい気味。


私がほくそ笑んでいると、執事が客人を伴って入室して来た。


「お嬢様、お客様をお連れ致しました」


私は立ち上がり、笑顔で迎える。


「その顔は、成功したようだね」


マントのフードを目深に被った男が呟いた。


「ええ、貴方のおかげよ。

本当にありがとう。

報酬は後払いだったわよね?

おいくらかしら?」


「ねぇ、もう彼の事はいいの?」


「ええ、既にもう終わった事だわ」


私は、執事にお金を用意するように伝えた。

すると『ただいまご準備致します』と退出して行ったのだ。


その様子を見ていた男が口を開いた。


「じゃあ、報酬は君にするよ」


・・・・・・。

・・・は?


「私は報酬じゃないわ。

そんなに安く見ないでくれる?」


「・・・へぇ。

僕がかけた呪いが、安いとでも思ってんの?

こんな事できるの、どこを探しても僕しかいないよ。

・・・それ、分かって言ってる?」


「・・・分かっているわ。

けど、私はモノじゃない。

モノ扱いされるなんて、気分が悪いわ」


私は彼の事を何も知らない。

名も顔も年齢も。

だから、私を欲しがる理由も分からない。


ジッと見つめていると、彼が口を開いた。


「じゃあ、僕の事を好きになってよ」


何も知らない男を好きになれ、と?

そんなの無理に決まっている。


「ねぇ、貴方?

私、何も知らないのよ?

どうやって好きになればいいのかしら?

教えてくださる?」


本当になめられたものだわ。


だからフンと鼻を鳴らし、高圧的な態度を取ってやった。


「ふはっ。それでこそ君だね。

じゃあ何が知りたいのかな?」


吹き出す様に笑いながら、上から目線で言ってきた男に腹が立った。


「・・・貴方、何様のつもり?」


苛立つ私を気にするそぶりもなく、男は口を開いた。


「なーんだ、そんな事?

まぁ、いずれ分かる事だし、教えてもいいよ!

僕はウィンセル公爵家の者さ。

君だって、薄々分かっていたんじゃない?」


そう言って、被っていたフードを取った。


そこには年端も行かない、13.4歳くらいの少年がいた。


見覚えのある顔だわ。

・・・何処でだったかしら?


そしてしばらく見つめていると、背筋に冷たいものが走った。


まさか!?

この、子供は・・・。


私は穴が空く程に、まじまじと見つめてしまった。


「そんなに見つめられると、恥ずかしいな」


そう言う彼は、先程とは打って変わって、年相応にはにかんでいる。

だが、そんな事を今考えている場合じゃない。


ウィンセル公爵家


呪いに適性を持つ人を多く輩出する家門だ。

私は、彼をウィンセル家の遠縁だとは思っていたが、それがまさか、本家嫡男が来るなんて誰が思うだろうか。


「貴方、なんでここに!?」


「え?僕の事を知ってるんだ。

嬉しいな!」


顔を晒したからだろうか、妙に幼さを感じる。

そして、彼は事もなげに言った。


「それはね、君に会いたかったからさ」


そう言って両手を広げた。


意味が分からない。

・・・それに一つ。

彼に言わなくてはいけない事がある。


「貴方、年上の人に君はないでしょう?

私と貴方、少なくとも5歳は違うわよ」


すると彼は目を見開き、口を開いた。


「5歳?

僕と君は2歳しか変わらないよ。

僕は今17なんだから」


私の歳を知っている事にも驚いたが、それよりも17歳って・・・。


「・・・だって貴方、どう見ても・・・」


13歳かそこらにしか見えない。


そんな私の表情で察したのだろう。


すると彼は『ああ』とやり切れない表情で告げた。


「呪いの力を持つ者は、人より成長するのが遅いんだ。

けど、18歳を迎えると力が馴染むから、そこから急激に成長するんだよ。

知らなかった?」


「・・・知らないわ。

けど、2歳でも私の方が上よ」


そう言い切ると彼は『そうだね。じゃあ、ベアトリスと呼ぶよ』とニコリと笑って、名を呼んだ。


・・・そうだわ。

私の名は、ベアトリス。


悪女でもアイツでもコイツでも、ましてや、お前でもない。


久々に名前を呼ばれて思い出したわ。


・・・私はきっと、寂しかったのね。と。


元々、私への関心が気薄な父も母も、私が悪女と噂をされる様になってからは、この別邸に追いやり、会いにも来てくれない。


メイドも執事も、お嬢様としか呼んでくれない。


ここにいる私は、一体誰なんだろう?

って、そう思った事が何度もあるわ。


・・・ふふっ、まさか貴方が呼んでくれるなんてね。


だから私は聞いたの『貴方、名前は?』と。

すると彼は、太陽の様に笑い『エドガーだ』と言った。


「そう。

エドガー?これからよろしくね」


こうして私達の奇妙な関係が始まったのよ。


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