アレクシス視点
結婚前は奥ゆかしく控えめで可愛らしい彼女だったが、結婚してからはとても積極的になった。
俺の事を好きだと、言葉でも態度でも伝えてくれる。
付き合っていた頃は、恥ずかしがって好きだなんて言われた事がなかったのにな。
これはとても嬉しい変化だ。
俺は前よりも今の方が、より愛おしいと思っている。
だが一つだけ気がかりなのは、まだ初夜を迎えていない事だ。
早く彼女と一つになりたい。
心も身体も俺のものにしたい。
今の彼女を見ると、日々強くなる想いに脳が焼き切れそうだ。
そして結婚して、はや三ヶ月。
彼女が真剣な目で『以前とは違わないか?』と聞いてきた。
だから俺は、彼女が努力して変わってくれたのだと思い、前よりも今の方が好きだと伝えたんだ。
そうしたら彼女は力無く笑い、理解できない事を言った。
なんだか、別れの様に聞こえて、俺は自室へと篭った彼女の部屋の扉を、ただジッと見つめる事しかできなかった。
そして翌朝・・・
バタンっ!
ものすごい勢いで部屋の扉が開けられ、驚いてベッドから落ちた。
「アレク!
私よ!メリンダよ!」
すごい剣幕でメリンダが入って来た。
俺はただ事ではないと思い、慌てて立ち上がる。
「どうしたんだ!?何かあったのか?」
そう聞き返したら、メリンダの顔が鬼のような形相になった。
「何かって・・・。
・・・まさか、気付いてないの!?
どういう事よ!?」
ヒステリックに叫ぶメリンダに、昔の奥ゆかしさも最近の愛情を宿した瞳の色の面影もない。
キーキーと叫ばれると、寝起きの頭に響く。
俺は取り敢えず『落ち着いてくれ』と話し、メリンダを連れてリビングへ行く事にしたのだ。
そこでメリンダから聞いた話は、想像を絶するものだった。
結婚してから今まで、悪女と入れ替わっていたと言うのだ。
話の当初は、頭がおかしくなってしまったのでは?と思ったのだが、聞く内に信憑性が高い事に気付いた。
・・・まさか、本当に?
じゃあ俺は、アイツと暮らしていたのか?
呆然としている俺に『初夜は済ませたのか?』と明け透けに聞いてくるメリンダ。
だから『まだだ』と答えると『じゃあ今しようと』言うではないか。
その言葉に、今まで抱いていたメリンダへの抱きたいという欲望が萎えるのを感じた。
俺は『今日は疲れているから、落ち着いてからにしよう』と告げたのだった。
そして、俺はアイツへ確かめに行く事にした。
屋敷へ行くと、執事に応接室へと案内された。
見回すと、相変わらず華美で嫌味な部屋である。
少ししてから、アイツがやって来たのだ。
久々に見るが、本当に人形の様な顔をしている。
コイツと今まで一緒に暮らしていたとは思えなかった。
「メリンダから聞いた」
俺が一言告げると、何でもない事のように表情を変えずに返してきた。
「そう、それで?今更なんの用かしら?
これから用事があるの。手短にお願いするわ」
あんなに俺に執着していたくせに、その片鱗すら見当たらない。
昨日だって、愛情を示してくれたではないか。
何故だ?
「・・・まさか、男か?」
「・・・貴方に関係あって?
いいから、早くして頂戴」
俺はその態度にカッとなった。
イライラする。
何故そんな、何の思いもない瞳で見てくるのか。
こんな事を思うのは、お門違いだと分かるが、どうにも止められない。
「なんでこんな事をした?」
これを聞くのが精一杯だった。
「・・・貴方の言う、真実の愛を知りたかったからよ。
・・・けど、期待外れだったわ。
それだけかしら?
では、お引き取りを。
メリンダさんが待っているわよ」
「待て!
いつから入れ替わった?」
俺が聞くと、顔が綺麗なだけに、ニタリと薄気味悪い笑みを浮かべ『さぁ、いつからだったかしら?真実の愛で繋がっている貴方には、分かるんじゃない?』と、そう言ってクスクス笑ったのだ。
そう、俺は全く気が付かなかったのだ。
俺が愛しているはずのメリンダ。
そして、鬱陶しいと切り捨てたコイツ。
その言葉に愕然とした。
だって俺は・・・。
コイツと過ごしたであろう日々を、幸せだと感じていたからだ。
俺は放心状態になり、気がついたら家にいた。
ぐったりとソファに沈む中、メリンダが煩く何かを喚いている。
俺の様子を気にかける事もなく、ただひたすらに自分の事を話していた。
そして、今日から本当のメリンダとの生活が始まったのだ。




