7 裏路地
リズの家は北の職人通りにあるらしい。僕たちは店を出ると彷徨い小路から中央通りへ戻った。市場はかなり混雑していた。街一番の魚屋が値引きを始めたからだ。この街の輸送網は充実していて、川魚も海水魚も入ってくる。とくにウナギが人気だ。魚屋の主人が店先の板にウナギの頭を釘で打ちつけて皮を剥き、その見事な包丁さばきを見物しようと小さな人だかりができていた。
市場は夕暮れ前に店じまいするから、あちこちで値引きが始まっている。肉屋に魚屋に果物屋にパン屋。もちろん屋台も同様だ。酒屋まで便乗して客を呼び込んでいる。香辛料を売る店の前は行列がすごい。岩塩の店は休みらしく本日休業の貼り紙が出ていた。
人波にもみくちゃにされる前に僕とリズは近道に入る。この裏路地を抜けると北地区にすぐ出られるのだ。ひと気のない、猫すらいない薄暗い道をふたりで進んでいく。恐ろしい光景に遭遇したのは、あと三十歩も進めば北地区の通りに出るというところだった。
「えっ?」
僕とリズはぎくりとして立ち止まる。前方に見覚えのある人物が倒れていた。派手な上着に身を包んだ中年の男――それはあくどいやり口で有名な金貸しのバートラムだった。
素行の悪い男だが、さすがにこんな場所で寝ているとは思えない。僕は警戒しながら近づいていき、倒れた彼の口元に顔を近づける。たちまち背筋がすっと冷えた。
「……息をしてない」
かすれた声が漏れる。自分の顔から血の気が引いていくのがはっきりとわかった。
「死んでる……ってことですか?」
「ああ、死んでる。確実にね」
僕の言葉にリズが青ざめて口元を押さえる。
なんてことだろう。とんでもない事態に遭遇してしまった。




