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魔法千年の孤独――マリスキューの店で聞いた話によると…  作者: ウニ
【第8話】 サラサ(学徒)19歳――聖女降誕
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7 旅立ち

 一年が経った。


「サラサ……。本当に行ってしまうんだね」


 私の対面でローラスが名残惜しそうに呟く。彼の横ではアデプタスとフレームヴェインが同じように寂しそうな顔を私に向けていた。


 ここは解放された人間たちが作った小さな町――その出入口の門だった。町並みはやや野暮ったいが、今後大いに発展するのだろう。町作りに励む男たちの顔は一様に活気に溢れ、女たちも溌剌と立ち働いている。間違いなく未来は明るい。


 私たちが魔王を倒したことで、人間が魔人族に虐げられる世界は瓦解した。

 生き残った魔人族はあちこちで抵抗を試みたが、そのたびに私やローラスが遠征して倒した。魔物たちは山奥に逃げ、ドラゴンは海を超えて他の大陸へと飛び去っていった。


 そして今では魔人族はもうこの大陸に残っていない。もしかしたらどこかに隠れ潜んでいる者がいるかもしれないが、表立って抵抗を企てる勢力は皆無である。


 あとは私がいなくても問題ない。人間だけで十分やっていけるだろう――。


 そう判断した私は身辺を整理し、しばらく各地を旅して回ることにしたのである。ここに呼び出されて以来、ずっと戦ってばかりだったから、自分が守った世界をもっとよく見てみたくなったのだ。今生の別れではないということで仲間たちも納得してくれた。


「正直言うと、いつまでもここにいてほしい……。でも世界を救った聖女が望むことだ。ぼくには駄目だなんて言えないよ」


 ローラスが伏し目がちに言った。風になびく自らの金髪を手で軽く整えて顔を上げる。


「必ず戻ってきてくれ。いつでも君を待ってる」


 ローラスが私の目を見てそう告げると、続いて隣のフレームヴェインが口を開く。


「同じく」


 いつもながら無口な男だ。しかしさすがに今は感極まった声だった。今度はアデプタスが無造作に頭を掻く。


「……ま、なんだ。俺はこれでも賢者だ。君の行方を調べる方法はその気になればいくらでも思いつく……たぶんな。困ったときは呼んでくれ。地の果てにでも飛んでいく」


 おちゃらけた口調で、しかし真剣な顔でアデプタスは語った。私はうなずく。


「皆さん、本当にありがとうございます。最初は思うところもありましたけど、あなたたちと繰り広げた冒険は私にとって、かけがえのない素晴らしい日々でした」

「ああ……。ぼくたちの方こそ」


 ローラスが目に涙を溜めて声を絞り出した。


「それでは――行ってきます」


 私は一礼すると彼らに背を向けて、静かにその場を立ち去ったのだった。

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