5 アデプタス
一か月が経った。
既に魔法は十二分に使いこなせるようになっていた。そろそろ頃合いだろう。その日、私はレジスタンスの賢者アデプタスを自室へと呼び出した。
「美人が俺を部屋に呼ぶ理由……。正直、心当たりがないわけじゃない」
アデプタスは癖のある髪をわざとらしく掻き上げ、ふっと意味深に微笑んで続ける。
「心配ない。俺は君が思うより、ずっと後悔させない男だ。必ず……いい夜になる」
アデプタスがそう言って、すぼめた唇を近づけてきた瞬間、私は彼の体内で爆発が起きる光景を脳裏にまざまざと思い描き、神に寿命を支払った。そして魔法を発動させる。
短い爆裂音が響いて彼が吹き飛んだ。
「ぶあっ?」
ものすごい勢いで爆散した彼の体が、びしゃびしゃと壁のあちこちにへばりついた。
「ば……馬鹿な……っ? 賢者である俺が……展開を読み間違えた……だと?」
胸から下を失った状態で壁に張り付いていてもアデプタスの口は達者だった。俺としたことが信じられん、などと味のある姿で呟いている。苦痛を感じていないのは脳の痛覚を司る部分も壊したからだ。その処理を省いていたら今頃は口もきけないだろう。
「で、どういうつもりだ……サラサ? 賢者である俺を殺して何が楽しい? 俺が男としてあまりにも魅力的すぎたか? 愛ゆえに殺さざるを得なかったのか?」
その言葉に、私は無感情で再び魔法を使うとアデプタスを瞬時に元の姿に再生させた。
「お、おお……? 一瞬で治っちまった! はは、すごいな。これがお前の魔法の力か」
「そうです――爆発せよ」
私が再び魔法を使うと、爆裂音とともに彼の体が四散して壁まで吹っ飛ぶ。またもや数多くの残骸と化して壁にびしゃびしゃ張り付いた彼が泣きそうな顔で口を開いた。
「なあ……サラサ、なんでこんなことする……? 勝手に召喚して不老不死にしたこと、じつは根に持ってたのか?」
「逆になぜ根に持たないと思うんですか?」
「……かーっ! だって仕方ないだろ。もとは魔人族の技術なんだ。詳しい使い方なんて知らなかったんだよ。無感情女のくせに逆恨みするな! 俺は悪くない!」
その言葉に不快感を覚えた私は、再び彼を魔法で元に戻すと容赦なく爆発させた。その後また再生させては爆散させ、また治しては爆裂させてと同じことを七回ほど繰り返す。
やがて、さすがの彼の心も折れた。
「わかった……俺が悪かった。だからもうやめてくれ。何もかも俺だ……俺が悪かった。だから……頼む。許してください」
「ごめんなさいは?」
「……ごめんなさい。もう二度としないと誓います」
そんなふうに素直に謝られたら致し方ない。私は魔法で彼の体を元に戻し、不老不死の件も許すことにした。許しても許さなくても、どのみち私は何も変わらないのだから。




