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魔法千年の孤独――マリスキューの店で聞いた話によると…  作者: ウニ
【第6話】 フレームヴェイン家の女(竜殺しの傭兵)19歳――死の無限ループ
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10 目覚め

「う……ん……」


 長い眠りから目を覚ました私は一瞬、自分がどこにいるのかわからなかった。

 しかし安心できる状況なのはすぐに把握できた。なぜなら近くに心配そうな顔のロムが立っていたからだ。


「ユリアナ、気がついたのか!」

「ああ、ロム……。うん、もう平気だよ。大丈夫」

「そうか――よかった」


 ロムはささやくような声で言うと安堵の息を吐いた。

 辺りを見回すと、ここはフレームヴェイン家の自室のベッドである。どうやら自分は寝床で長い悪夢にうなされていたらしい。

 ひとまず半身をゆっくり起こすと、背中に鋭い痛みが走る。


「痛っ?」

「ああ、まだ無理しちゃ駄目だ。命に別状はなかったが、君はライラにダガーで刺されたんだよ。当分、安静にしていないと」


 ロムのその言葉に私は少し拍子抜けした。なんだ、そうだったのか。てっきり致命傷だと思い込んでいたが、どうやら驚きで判断を誤っていたらしい。


 ロムの話によると、あの日、私が尋常ではない勢いで静寂の泉へ駆けていく姿を使用人のひとりが見かけていたという。はて、と首を傾げて怪訝そうにしているその使用人から話を聞き、ロムは好奇心から私のあとを追ったのだそうだ。


 ところが静寂の泉に着くと、背中にダガーを刺されて倒れている私と、両手で頭を抱えて泣いているライラの姿があった。予想外の事態にロムは驚いたが、駆け寄ると私が生きていることに気づく。よく見ると気絶しているだけで、刃も心臓には達していなかった。ワンピースの下の肌着に阻まれて、傷は思ったほど深くなかったのである。


 フレームヴェイン家の肌着は上質なリネンを重ねた特別製だ。暗殺予防のために帯状の革のパネルも仕込んであるから、普通のものより遙かに丈夫なのだった。


 ライラは身も世もなく泣いていたが、ロムが問い詰めると罪をすべて認めた。

 恋敵の私を殺してやろうと思ったこと。ロムの筆跡を真似て私を呼び出す手紙を書いたこと。おびき出した私の背中にまんまとダガーを刺したはいいが、直後に罪悪感に襲われて怖くなったこと。その後はどうしていいのかわからず、ただ泣いていたこと――。


「君にはまだ良心が残っているってことだ。館を出たら、悔い改めて一から出直せ」


 ロムがそう告げると、ライラは泣きながらうなずいたそうだ。その日のうちに老執事に解雇された彼女は、中央街から来た治安官たちに粛々と連行されたという。


 そして私の方はというと、二日経っても意識を取り戻さなかった。寝言ひとつ言わずに眠り続けていたらしい。それだけ精神的に大きな衝撃を受けたということなのだろう。


「……その衝撃が作り出した夢の世界に、私は自分で自分を閉じ込めていたわけか……」


 小声で呟いて、ふっと息を吐く。あの手紙がロムが書いたものじゃなかったのは素直に残念だった。だったら求婚されるという予想も単なる早合点だったわけだ。


 いや、必ずしもそうとは言えない。ロムは眠り続ける私を心配し、ずっと様子を見ていてくれたという。そんな大変なことは愛がなくてはできない――はずだ。だからその日は近いんじゃないだろうか。自分にそう言い聞かせ、私は彼ににっこり微笑みかけたのだった。

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