6 目覚め
冷たいベッドの上で私は目を覚ました。
夕陽で室内は赤みがかった橙色に染まっている。
なぜか心臓が異様に荒々しく脈打っていた。身を起こすと背中に原因不明の痛みが走る。頭もぼうっとしていた。何か悪い夢を見た気がするが、内容をほとんど思い出せない。それどころか自分がどんな人間だったのかさえ、はっきりしなかった。
「私は……フレームヴェイン家の誰?」
一体どうしてしまったのだろう? 思い出せることもあるが、まるで思い出せないことも多々あって、それらがまだら状に混在している。子鹿の背中の白い模様みたいに。
しかし気は急いていた。
「そうだ。ロムのところへ行かないと」
ふいに思い出す。そういえば彼に手紙で呼び出されていたのだった。夕方、青の塔の鐘が六回鳴り響く頃に、静寂の泉で待っているから来てほしいと。
夢の中でその鐘の音を聞いた気がする。
「もう少し待ってて、ロム!」
弾かれたように部屋を飛び出した私は、粗布の敷かれた階段を足早に下っていった。
手すりにまたがって降りてはなりませんよ――と記憶の中の誰かが言った気がしたが、構わずに走り続けて館の裏に回る。静寂の泉があるのは、この小規模な木立を抜けたところだ。眩しい夕陽と濃い影に彩られた木々の間を私は息を切らして駆けていった。
やがて地面に小さな鳥が横たわっていることに気づく。コマドリの雛だ。屈んで触れると既に死んで硬くなっている。可哀想に――。気づけば口が勝手に開いていた。
「なんて素敵な死に様でしょう! 鳥にしてはずいぶん洒落た最期だね!」
なんだこれは。私は一体どういう性格の人間だ? 冷酷な独白に愕然としながらも私は鳥をハンカチでくるんで木の根元へ寝かせた。とにかく今は時間がない。用が済んだら戻ってきて埋葬してあげるからと手を組んで祈り、再び走り始める。
まもなく静寂の泉に着いた。辺りは怖いくらい、しんと静まり返っている。
「ロム、どこ?」
空は橙色からすっかり茜色に変わっているが、まだ日は沈んでいない。
「もう屋敷に戻ったのかな……」
私はしょんぼりと俯いてため息をつく。その瞬間、誰かが後ろからぶつかってきた。
どんと背中に鈍い衝撃。服を破り、肉を裂いて、鋭い刃物が私の体内に差し込まれた。
あれ? こんなことが前にもあったような――。
振り返ろうとしたが、体に力が入らない。いや、このまま死んでたまるか。自分を殺した相手の顔くらい視認しなくては。私は必死の思いで振り返って加害者の顔を見た。
「あなたって……最高だね。こうして不意打ちで殺してくれて本当に感謝するよ!」
そんな言葉が口をついて出る。そして私の意識は暗黒のとばりに包まれた。




